【047話】蘇る記憶
現在魔界の中心点にある魔王城にいる3人。
最高司令官カオスにより魔王城を案内してもらっていたが、急遽現在の魔界に至るまでの経緯を聞かせてもらうことに変更し場所を魔王城内にあるどこかの部屋に瞬間移動してきた。
4人は最高に座り心地のいいソファーに座り、平和な魔界ができるまでの話を聞かせてもらおうと目を輝かせていた。
「ではカオス様、よろしくお願い致します。」
「どきどきしますぅ。」
「魔界が平和っていうのもイメージとだいぶ違ったし、一体なにがあったのかは興味がありますね。」
「そうですね、どこからお話致しましょう。」
「ではこちらから質問しますが、昔の…このような平和でなかった頃の魔界ってどんな様子だったのでしょうか?」とミカが尋ねる。
「昔の魔界は、いくつもの勢力があり、毎日が戦争でした。殺戮と奪い合いだけの日々でしたね。」
なにかを思い出すような表情で、話を続けるカオス。
「魔力がいくら強大でも、数には敵いません。なので、強大な魔力を持つものは数により排除されていました。しかし、ある巨大な勢力ができあがり、魔王を名乗るようになってからは、その勢力を中心に魔界がひとつにまとまりました。その魔王と名乗る魔族の娘が現在の魔王でございますミサ様なのです。」
「そうなんだ、ミサ姉さんのお父さんは魔王だったんだ。」
「はい、そのように魔王閣下から聞いております。」
「じゃあカオスさんも知らなかったんだ。」
「わし、いや私が魔王閣下にお仕えしたのは、魔王閣下が魔王ではなく、魔王代理を名乗られてからになります。」
(いま、カオスさん自分自身のことを『わし』って言いかけたな。カオスさん相当気を使って話しているみたいだ。)
逆らう勢力があれば消滅させ、その魔力を吸収し、とんでもない勢力となっていたらしい。
(ミサ姉さんのお父さんもやはりすごい方だったんだ。)
「しかし、突然その勢力がある日突然消えてしまったのです。それと同時に新たに魔王と名乗る魔族が現れましたが、勝手に名乗っているものだと誰もが思い、その魔王に次から次へと勝負を挑んでいったといわれています。」
「消えてしまったって。じゃあミサ姉さんは?それに言われていますって、事実かどうかわからないってことですか?」
「そうなのです、誰も新魔王となった魔族を目撃した者はいなかったのものですから、それに魔王ミサ様は、勝手に魔王と名乗っている魔族の配下に自ら進んでなられたとお伺いしております。」
「それからしばらくして魔界全土に通達が届きました。『魔王の座を欲する者は、一同に集まれ』と。そこには現魔王様であるミサ様のご署名がされていたと言われております。」
(なるほど、魔界に最初に到着した場所に集められたのはそのせいか。)
「通達や噂を聞いた魔族は、一同に集まりましたが、瞬時に消息不明になりました。その数は広大な大地を埋め尽くすほどだったらしいと。」
(これが一番最初に辿り着いた場所で起こった出来事ね。。)ミカはそう思った。
(数百万って言ってたけど、この魔界の広大さから考えると、少ないほうだったんだ!)マキはその時のミサの魔力の強さがどれほど凄かったのかわかった。
「じゃあ、その魔族達がいなくなって姉さんが実質2番目に強い存在になったわけだ。」理解力が早いマキである。
「おっしゃる通りにございます。それからミサ様は『魔王代理』を名乗り、各勢力の粛清にあたられました。それはもう数億どころの騒ぎではなかったと思われます。」
(粛清と言う名の大量虐殺だよそれ。。やっぱ姉さんは恐ろしい。)
「私もその魔王代理であったミサ様とある都市で出会い、魔界での新たな試みについて教わりました。それに賛同しわたし自ら配下にしていただき、それからは魔王ミサ様の為に、共に闘い滅ぼし、現在の魔界ができあがったのでございます。」
「それが平和につながる、現在の統制のとれた魔界なわけですね?」
「おっしゃる通りでございます。この魔王城を拠点にし、最初に4つに領土を別け、領主を置き、そして配下を増やし、その配下にさらに配下をつけるといった形で見事に纏め上げられました。」
「それが8人の総司令官の方々だったのですね。でも領土は8つじゃないのでしょうか?」
「さようでございます。魔界の広さと治安を維持するには4人だけでは到底どうにかなるものではなかった為、領土を8るにわけたのです。ですがその内1つの領土で裏切り行為がございまして。」
「なんでバレちゃったのですかぁ?」
「自分の魔力を過信したのでしょう、普段の魔王代理であったミサ様は我々にやさしく、魔力を静めておられましたので、それを自分の魔力より弱いと勘違いし、謀反を起したのです。」
「その謀反を起した領主の配下である魔族達も謀反に加わったのですか?」
「もちろんです。上からの命令は絶対ですから、魔王代理様自ら総司令官を飛び越え命令されることはめったにありませんので。」
「それほど総司令官様方は信頼されているってことですね。」
「そういっていただけると嬉しく思います。」
(なるほど、すごい組織図だが、ひとつ間違えると取り返しがつかないな。人選ミスが命取りになるのか。)
「それで謀反を起こした総司令官はどうなったのですか?」
「はい、謀反を起した総司令官は領土ごと魔王代理ミサ様がお一人で滅ぼされました。その頃くらいからですね魔王代理とは言われるものの本当は魔王様本人ではないかと噂されるようになったのは。」
(1人で滅ぼしたって。。。)
「今その領土はどうなってるのですか?」
「はあ、そのことなんですが、大変言いにくいのですが。現在『総司令官募集中魔王ミサ』と立て看板が…あちこちに。」
少し恥ずかしそうな顔でカオスはそう言った。
「その立て看板のおかげで、話が台無しになっちゃいましたね。。。」
(募集中って。。どれだけ適当なんだろ。)
「おっしゃる通りです。。」
「しかし、お姉さんはすごいなぁ、約2000京の魔族を滅ぼすなんて。」
「はい?マキちゃん、それって計算したんですか?桁がおかしいことになってます。」
「計算したよ、だってほんとだもん。」
「2000京って、想像がつきませんねぇ。」
「まあ、考えるのはやめようよ。こっちにきてから深く考えるのはやめたほうがいいって思ったし。」
「そ、そうですよね、とにかく凄いって事でいいですね。」
「うんうん、そぅだよぉ。すごいってことだよぉ。」
ミカ、ユキは『凄い』だけで済ませることにした。
「カオス様、いろいろとお聞かせくださいましてありがとうございました。」
3人は礼をして、感謝の気持ちを表した。
「と、とんでもございません!わたしみたいな者に頭を下げるなんてあってはなりません。」
(なんで魔界の功労者でもあるカオス様が、こんな小娘同然の私達に頭を下げるんだろう。)
マキには引っかかっていたことがあった。総司令官といえば、魔王に次ぐ存在なのに、何故こうも簡単にわけもわからない異世界の者に下手にでるのか、やはり魔王直々の紹介があったかだろうか。
「カオス様、一度手合わせ願えませんか?一切の手抜きは不要です。」
突然マキはそう言った。消滅させられようとも、納得いかない事は納得いかないのである。
「どうしてマキちゃん、いきなりなんてこと言うの?」
慌てるミカ。
「マキせんぱぃ、いやマキおねえちゃん!やめようよ、無意味だよぉ。」
ユキは泣きそうになりながらマキに言った。
「理由は簡単、ミサキお姉さんに甘えてばかりだし、それにここは実力至上主義でしょ、ミサ姉さんは総司令官の方々よりも私達のが強いと言われた、でもそれはやってみないとわからない事だし。」
マキは真剣だった。こうでもしないとこの平和な魔界を築きあげたカオスさんに悪い気がしたのだ。
「わかりました。マキ様の強いご要望、断る理由がございません。では場所を変えましょう。」
ミカとマキは困ってしまった。ミサキはここにはいない。
「マキちゃんお願いやめて!言いたいことは解るけどいきなりすぎます!」
「マキおねえちゃん、どうしちゃったの?マキおねえちゃん!」
必死で止める2人、だがカオスは笑顔で『大丈夫です』と一言だけ残し、そして2人は瞬間移動した。
「どうしよう…お姉様!どこですか!お姉様ぁぁぁ!」
悲鳴にも似た声で叫ぶミカ、すでに涙で前が見えないほどであった。
同様にその場に座り込んでユキは泣いていた。
*****ある広場*****
瞬間移動してきたのはおそらくここも魔王城内のどこかだろう、とてつもない広さの大広間のような部屋だった。
カオスとマキはお互い合図もなにもなく、到着後すぐに戦闘を始めた。
マキは魔法で攻撃する、無詠唱で放つ強力な魔法。
カオスは魔力でそれを魔力で封じ防ぐ、そして反撃するが、マキの結界に阻まれる。
(これがマキ様の魔法というものか、見た目と違いおそるべき攻撃だ。)
数度の攻防で、カオスは勝ちを確信した。
(なるほど、一度ずつしか発動できないのか。)
マキの魔法は一回につき一個の魔法しか発動できないと、悟ったカオスは、魔力を分散し、同時に攻撃したり、時間差を置いたりと変則的な攻撃にでた。
マキも避けたり魔法で防いだりと避けたりと、なんなく回避していた。
(やはり、一度ずつか、ではこれで終わりにするか)
マキがかなり強力な攻撃魔法を発動してきた。どうやらこれが狙いだったようだ。かわさず魔法以上の攻撃力がある魔力をそのまま魔法にぶつけ、さらに別の場所からも魔力をぶつける。
(これで、魔法は壊されマキ様は怪我をされるかもしれんが、治療すれば命は助かるであろう。)すでに勝ち終わった後の事まで考えていたカオスであった。
いくつもの強大な魔力がマキに襲いかかる。
だが、魔力は全てマキの魔法により防がれてしまった。マキはカオスの魔力を計り知るために、あえて今まで魔法の発動を1つだけにしていたのだ。
(な、なんだと。複数同時に使えるのか。)
しまっという表情のカオスに、今度はマキが攻撃を仕掛ける。
『雷竜』に使用した魔法だと、城まで破壊してしまいそうなので、それ以下の魔法を同時に複数発動した。
その結果カオスは魔法を防ぎきれず、吹き飛ばされ壁を突き破り遥か彼方へ飛んでいってしまった。
「あちゃー、これでも穴開けちゃったよ。どうしよー。」
マキは城に穴が開いてしまった事を気にしていた。カオスの事は、あれくらいなら大丈夫だろうと思う程度であった。
「だめだな、加減が難しいよ。もっと実戦経験積まないとダメなんだろうな。」
カオスの魔力を完全に把握していたマキは、すでにいつでもカオスを倒す事が出来ていた。だが加減したつもりが思った以上に攻撃力があったため、このような事を言っているのである。
しばらくするとカオスが戻ってきた。
「マキ様、参りました。まさかこれほどのお力をお持ちでしたとは、さらに手加減までして頂き、このカオスまだまだ修行が足りませんでした。」
そう言ったカオスの顔は晴れやかだった。
一方、残されたミカとユキはただただ泣いていた。
そこに突然ミサキが現れた。
「うぇーん。姉様ぁ、マキねぇちゃんがぁ、カオスさんとぉ。えーん、えーん。」
ミサキを見つけたユキは、ミサキの胸に飛び込み泣きながらそう告げる。ミカもユキと同じく、ミサキに駆け寄り泣いていた。
「ミカ、ユキ、あなたた達は自分達が思っている以上に強いのよ。マキにしてもそう、わたしの言ったことが事実だとすぐにわかるから、もう泣かないで。」
やさしい笑顔でそう告げた。
ミサキがそういうのであれば間違いないのだろうと思った2人は泣き止み、マキが戻ってくるのを待つことにした。
戦闘を終えたマキとカオス。
「これでもう対等にお話できるね、カオスさん。もう様付けで呼ばなくていいから、これからマキって呼んでね。」
笑顔で話すマキ。
「いやあ、マキさんには参りましたわ、わっはっはっは。」
すっかり仲良くなってしまっていた。
「とりあえず、ミカちゃんとユキが待ってるから、カオスさんお願いね。」
「はい、マキさん。」
カオスが返事をし、再び瞬間移動した2人は、元の場所へ戻る。
「あれ?ミサキ姉さん、いつの間に。」
「どうだったマキちゃん、カオスをボコボコにしてやった?」
「魔王閣下までそのようなことをおっしゃるとは、やはり結果はやる前からご存じでしたか。」
「そりゃね、でないとこの子達をこんな危険な魔界には連れてこないわよ。」
どうやら、ミサキとカオスは普段は普通に会話をしていることが2人の会話で伺えた。
マキは、ミサキやミカ、ユキに嬉しそうに話しかける。
「カオスさんと友達になったよ、ミカちゃんユキ。」
「もう、マキちゃんたら突然いなくなるんだから!」
「そぅだょ。マキねぇちゃん消えちゃうんじゃないかって、しんぱぃしたんだょ!」
「ごめんねミカちゃん、ユキもごめんな。」
「まあ、こうして無事に戻ってきてくれたので良かったです。」
マキとカオスとの予測もしなかった戦闘もあったが、そのおかげで、魔王に次ぐ魔力の持ち主さえも凌ぐ能力を持っていることが証明されたのだった。
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