【041話】魔界見学3
ミカもマキも聞けば聞くほど気が遠くなるような現実を目の当たりにし、壊れかけていたが、いや壊れていたがやっと正気を取り戻す。
ユキは完全に壊れた為、またスライムに変えられマキの首に巻きついていた。
先程の都市(第4都市のほんの一部)を後にし、3人とスライム一体は、ミサキの魔力により移動する乗り物『屋敷』に乗り都市を束ねる魔族の元へ向かっていた。
観光も兼ねているので、瞬間移動はせずに、窓から景色を見ながら移動できる乗り物『屋敷』に乗っている。この乗り物はミサキが魔力を使い作り上げた乗り物だ。
実際かなりの速度で移動しているので窓から景色が見えるわけではなかった。それに中にいると全くその速度は感じられない。
(この乗り物って、外から見れば『屋敷』が動いてるとしか思えないんだけど…それにこの速度、ロケットじゃないんだから…景色どころじゃないよ。)マキはそう思った。
目的地につくまで時間がある為、もう一度ミサキが魔界のことについて3人に説明する。
数時間が経過。
「着いたわよ。いきましょうか。」
どこかに辿り着いたようだ。全く気がつかなかった3人。
(あのスピードで数時間の距離ってどれだけ広いんだ。。)
「さあ降りて、少し歩けば最初の目的地よ。」
ミサキに促され、恐る恐る乗り物から降りる3人。降りた途端、その光景にまたもや驚かされる。
乗り物から降りて数百メートルの場所に、とてつもなくばかでかい立派なお城が建てられている。
さらに城門までの長い通路の両端には、すさまじい数の魔族達が跪いて待機していた。どうやらあらかじめ魔王がこの城にやってくることを知らされていたようだ。
(なにこの城の大きさ、それにこの魔族の方達の数。)
(魔界というのは私の知識では計り知ることができない程の未知の世界ですわ。)
(ひえぇぇぇ、こわぃよぅ。これからどぅなっちゃうんだろぅ。)
3人はそれぞれ口には出さないがいろいろ感想を頭の中に張り巡らせていた。
通路の両側に跪く魔族を横目で見ながら城門へ向かって進んでいく4人。
あまりの驚きで話すことも忘れ、ただひたすらミサキの後ろを着いていっていた。
城門に差し掛かると、通路の真ん中に一人だけ出迎えるように跪く人影が見えた。
「魔王閣下、ようこそお越しくださいました。この城の城主であります将軍リリィでございます。なんなりとお申し付けくださいませ。」
(ん?城主って。ミサキ姉さんのお城じゃないのか?ああ、お留守番してたってことなのかな。それに将軍て、きっとかなり地位の高い魔族なんだろうな。)と勝手に結論まで出してしまったマキ。
「よい、用があれば呼ぶ。」
「はっ!」
ミサキを先頭にマキ、ユキ、が城門を潜り抜け、そしてミカが入ろうとしたが、将軍の側近と思われる2名がミカの前に立ち塞がり口を開く。
「将軍!この者は、天界の者と思われます!」
(え?やっぱり魔界と天界って仲が悪いんだ。)またもや勝手に解釈してしまうマキ。だが事態は最悪だ、どうするんだろうとミサキに視線を向ける。
だがミサキはあえて何も言わない。マキ、ユキはどうしていいかわからず、じっと見守るしかできなかった。
「この愚か者めが。」
将軍がそう言い放つと、側近の魔族2名は消滅させられた。
そして、将軍はミカの前に跪きこう言った。
「部下がとんでもない失礼を致しました。これも全て、私の責任でございます。私の死を持ち、お詫び致しますので、どうか他の残された魔族の命だけはお許しくださいませ。」
ミカは何を言われているのかわからなかったが、少々間をおき考える。勉強会のおかげでなんとなく理解できた。
(きっと先ほどの事でミサキお姉様に迷惑がかかったと思われているのでしょうね。)そう考えミサキに話しかける。
「お姉様、わたしは何とも思っておりません。どうかこの方のお命をお救いください。」
「ミカよ、将軍はそなたに言っておる。そなたが決めればよい。わたしは口を挟まん。」
ミサキはそれだけ伝え先に進もうとしていた。
「は、はいわかりました。」
ミカは将軍に近づき話し出した。
「将軍様、先程お姉様にお話しした通りでございます。お気になさらないでください。それにわたしは天界の天使です。ここは魔界、どんな目に遭わされようと文句はいえません、覚悟の上でございます。」
ミカは自分の正体を明かし、将軍にそう答える。
「あなた様がどなたでございましょうとも、魔王様の友であることに変りはございません。その友と呼ばれるお方にあのような無礼な振る舞いをした我等、その責任はこの魔界都市全てを消滅させられようとも仕方のございませぬ事態なのです。ですがどうか私の命だけでお許しいただけませんでしょうか?」
将軍は、せめて自分の命だけで許してほしいとお願いする。
ミサキはまだやってるのかと、呆れ苦笑いし、進むのを止めミカに告げる。
「ミカちゃん、その将軍にははっきりいわないと通じないわよ。」
「は、はい!あの…将軍様、ですからお命もなにも要りません。何も気にしてませんので、その…いままで通り職務に励んでください」
「わかりました。お許しいただいたこの命、これまでに引き続き魔王様にお預けいたします。それに、今後このようなご無礼な態度が一切起こらないよう徹底して魔界全土へ伝達致します。」
そう言って、将軍は跪いたままミサキ達が城内に入るまで見送った。
この魔界では相手に対してハッキリと言わないと通じないのであった。
「ミカちゃん、ごめんね嫌な思いさせちゃって、それにめんどくさい将軍で。あれでもこの20万ある魔界都市を束ねる将軍なのよ。」
「そ、そのようなお方だったんですか!お姉様、ちゃんとご紹介していただかないと困ります。」
「あんなの紹介したってもしょうがないでしょ。たかがこの程度の規模の将軍なんだから。」
(いや、どの程度ですか!4億ある都市の一番えらい人なんでしょ!)とマキは心の中で突っ込んでみた。
「あ、あの姉様、ここは姉様のお城なんですよねぇ?」
復活したユキが尋ねた。
「いや、違うよ、さっきの将軍のだよ。こんな狭いとこいらないし。それよりユキちゃんもう大丈夫そうネ。よかった。」
「ふぇ。。。このお城せまくないですよぅ。」
(つか、この恐ろしいほどでかい城が将軍の城ってことは。いやもう考えるのはよそう。)そう思ったマキであった。
城内は広く高く、柱も相当分厚い。城じゃなく宮殿と表現したほうがよさそうだ。しばらく歩くと大きな扉の前に辿り着く。
(建物内をこれだけ歩くって…。)
扉の向こうには、すでにテーブルいっぱいに食べ物が並べられていた。
「マキ出番よ!好きなだけ食べるといいわ。みんな遠慮なくいただいてね。」
なんと肉まである。分厚いステーキだ。
(魔界は人間界と同じものを食べるのかな?)
ミカは不思議に思い、聞いてみることに。
「お姉様、このお肉は一体。」
「ああ、それは全部魔物だよ。結構おいしいでしょ、高級食材になる魔物ばかりだからね」
「魔物!?そ、そうなんですか、魔物ってどんな生物なんでしょうか?想像つきません。」
「じゃあ食事が終わったら、狩りにでもでかけるといいよ。わたしはいけないけどね、さっきの将軍にでも案内させるわ。」
何故かミサキはいけないらしい、理由を聞くのも悪いので、聞かなかった。
マキは食事に夢中だった。
移動中も食べてはいたが、これだけの量を目の前で見せ付けられると、もう止まらない。
「マキせんぱいってほんと食いしん坊。」
ユキは呆れていたが、しかしユキも結構食べていたのである。
「うますぎる!こんなおいしいの食べたことない!ミカちゃんもコレとコレと、それにアレも食べてみてよ!」
(食事中のマキちゃんこそ魔物って感じがする。)
こうなるとマキは誰にも止めることはできなかったので、みんな放置した。
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