【040話】魔界見学2
。マキとミカはなんとか気力を振り絞り、ここは魔界なんだと自分自身に言い聞かせ立ち直った。ユキは失神してしまったままだったので、魔法でユキをスライムに変え、持ち運ぶマキ。
「マキちゃん、なんでスライムなの?他の動物でもよくない?」
ユキがかわいそうな気がしたミカはマキにそう言った。
「スライムなら、目が覚めても攻撃されないし、意外とかわいいんだよ。」
そう言ってスライムをミカに渡す。
「ほんとだー。ムニュムニュしてるー」
ミカはさわり心地がよかったのか、スライムを持ち歩きながらぷにゅぷにゅ感を満喫していた。
「ユキちゃん、せっかく魔界に来たのに見学できないなんてかわいそうね、目をさますまで、どこかで休憩しましょうか。」
(いや、目を覚ました方がかわいそうだと思うのですが。)そう思ったマキであった。
「そうですね。これじゃ見学の意味もなくなりますし。」
「じゃあどこか休憩できる場所に移りましょうか。」
そういって再び歩き出すが、どうも先程の出来事から、街の雰囲気が少し変わってきていた。
ミサキ達が通る度に、魔族は膝をつき、頭を地面にまで着け、姿が見えなくなるまでそれが続いている。土下座?のオンパレードだ。
(さっきまで普通にしていたのに、魔王ってわかった途端みんな土下座してるみたいになってる。)あまりの変化に驚くマキ。
ミサキ自身は全く気にも留めていない。
しばらく歩くと、大きな建物の中へミサキが誘導する。館のような大きく立派な建物だ。
「少し小さいけどここでいいかしら。」
人間界で言えばとんでもないくらい大きな建物なのに、ミサキは小さいと言っている。
(いやめちゃくちゃ大きいんですけど。)
ミサキが建物の中に入ると、中にはなにもなく、ただ広大なひとつの部屋になっていた。
「うわっ、広い。天井があんなに遠くにあるし。でもなんにも置いてない。」
「すごいねここ。」
マキもミカも建物内の広さに驚いている。
2人が驚いている姿がかわいかったのかは不明だが、ミサキは何故か嬉しそうだった。
そして魔力を使い、一瞬にして部屋を作ってしまった。テーブルやソファー、さらに床にはフカフカのカーペットがいつの間にか敷き詰められている。
その瞬間的な出来事で、マキとミカは、もう訳ワカメ状態だ。
「そんなところで、突っ立てないで、早く座りなさいよ」
ミサキから言葉をかけられ我に返るミカとマキ。そしてソファーに座った。
「ミサキ姉さん、もう魔界というより、ファンタジーな世界です。」
「お姉様、わたしはもう何が何やら理解ができません。一体何が起こっているのですか?」
どうやら二人共、パニック状態なようだ。
とりあえず、2人には飲み物を与え落ち着かせる。やがてユキも目を覚ました。少しは3人共落ちついてきたようだ。
「ユキも目を覚ましたし、ミカもマキも落ちついたようだし、少し魔界についてお話ししといた方がよかったわね、ごめんなさいね。」
「お姉様、謝らないでください!私達が余りにも安易に考えていたのがいけなかったのです。こちらこそ申し訳ありませんでした。」
「わたしも、軽い気持ちで行きたいって言ってしまいました。本当にごめんなさい、姉様。」
ミカとユキはミサキに謝罪した。
「いや、あなたたちはなにも悪くないんだから、私がマキに聞かれた時にもっと説明していればよかったんだよね。」
魔王が反省する姿。魔界の魔族には想像もできない姿である。
そしてミサキはこの魔界がどういうところなのか説明をはじめた。
「魔界は実力至上主義なの、強い者が全てで、それに従うのは当たり前の世界なのよ。なので先程のような事も、都市丸ごと消滅してもおかしくないし、それが普通なのよね。それにこの部屋のことだけど、魔族は魔力を使っていろんなことができるの。」
「なるほど、魔力は攻撃以外にも、移動手段や何かを造る手段として用いられるわけですね。」
「そうそうそうなのよ。だから、今後なにが起こってもこの魔界ではこれが普通だと思ってほしいの。無理かもしれないけど。」
ミサキは3人にそうお願いする。
「お姉様、わかりました。多少は驚くこともあるかもしれませんが、ここにはここの世界のルールがございます。それに従うのは当然ですので。それに魔力については私達の勉強不足でした。」
「わたしもミカちゃんと同意見です。」
「姉様達に従います。」
3人はこの先、多少驚くことがあるかもしれないが、ここは魔界である為、自分達の計り知れない事が起こる可能性を頭に入れておくことにした。
「ありがとう。」
本来魔王であるはずのミサキが決して言わないセリフである。
「じゃあ、次はどこを案内しようかしら」
笑顔を取り戻し、嬉しそうなミサキ。
「この大都市以外にも都市はあるのですか?」
マキが尋ねる。
「え?マキちゃん何言ってるの。ここは大都市でもなんでもない僻地よ。ただあの転移してきた場所から近いから寄っただけよ。」
笑いながらそう答えるミサキ。
(はい?僻地って。どう見ても大都会なんですが。)
「お姉様、でも魔界第4都市って…かなり都市っぽい名前でしたよ。」
「うんとね、正式には魔界第4都市のほんの一部なのよ、第4都市だけでも数千ほどあるはずだから。だからここは正式にいうと【魔界第4都市何丁目何番地】ってとこかしらね。」
「じゃ、じゃあ、魔界第4都市以外にも魔界第何都市くらいあるのですか?」
「そうね魔界第20万都市ほどあるんじゃない、詳しくはしらないけどね。」
もう驚かないと約束したばかりの3人だが、表情には思いっきり驚きが出ていた。
「この広い都市が2000集まって、初めて一つの都市になるんですよね?それが20万だと4億…。」
「そうね、それがこの魔界全体の10000万分の1程の広さかもね。」
マキは思考を停止し口が開いたまま呆然としていた。
規模?スケール?そんな騒ぎではない。もう考えるだけ無駄である。
「あの。全て見学するには何億年もかかりそうですね、はは、ははは。」
ミカが壊れた。
ユキに至っては頭から煙が出ている。どうやらショートしてしまったみたいだった。
3人の壊れた姿を見たミサキはもう暫く休ませようと、思ったのであった。
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