【035話】中間試験
季節は秋、制服も半袖から長袖に変わり、吹く風も少し肌寒く感じるようになった。
しかし、朝の登校ではいつもの光景は相変わらず見られた。いつもと変わらず平和な日常が続く。はずなのだが、外とは違い学園内はピリピリしていた。
その理由とは。
11月に入ると中間試験が行われるからだった。
中間試験終了後は全5教科上位30名までの成績が貼り出されるのである。
上位はほとんどA組の名前で埋まるのだが、20位以下はB~E組の生徒の名前もたまに見られる。この成績が基準となり、1学期から3学期までの成績でクラス編成が行われるのである。
A組以外のクラス、すなわちB~E組には特に差はない。すなわちB組よりC組のが劣っているわけではないのだ。A組はB組~E組までの成績優秀者で尚且つ、A組の生徒より成績がよくないと入れないのである。
なので、試験となるとA組はもちろん、A組を目指すB~E組までの生徒も必死となる。3年間A組を維持し続ける生徒は半分に満たないのだ。
他校からの編入生でもB~E組にやっと入れるくらいなので、いきなりA組に編入してきたマキの凄さが伺える。
マキはこの学園に来てから、試験は全て1位、マキが来るまではミカが1位だった。前回の試験は全教科オール満点(500点)でマキが1位、20点差(480点)でミカが2位。3位は(389点)と1位と2位がずば抜けていた。
*****放課後 生徒会室*****
いつも通り集まる4人の生徒。
そのうち3人は試験前なのに、いつもと変わらず世間話に花が咲く。
だが一人浮かない顔で必死に勉強している生徒がいる。
黄色い髪を2つに結んだツインテールのユキである。
ユキは現在A組最下位、学年でも最下位なのである。
入学してからほとんど登校せず、もちろん中間、期末試験は受けていない。
「やばいですぅ、2年になったらA組から脱落しちゃいますぅ」
そうぼやきながらユキは勉強している。マキが教えてあげているのでかなり真面目にやっている。
「でもー2学期と3学期でがんばれば大丈夫だよー」
と、励ますミカ。
「代々生徒会はA組で編成されてたのに、それもユキのおかげでなくなるのか。」
ユキにはとことん冷たいマキである。
「マキちゃんそんなこと言わないの!ユキちゃん大丈夫、マキ先生もいるし、ミカもわたしもいるからネ。」
ミサキはやさしくそう言う。
「ミカせんぱいもミサキ会長も、やさしぃですぅ。だれかさんだけはちがいますけどぉ。なのでユキがんばりますぅ。」
マキに嫌味をいいつつ、やる気だけはあるユキ。
マキも酷いことは口にするが、ちゃんと勉強を見てあげていた。
「ユキちゃん、マキだって試験があるんだからー、ずっと頼ってちゃダメよー自分でなんとかしないと。」
先ほどまで応援してくれていたはずの、ミカに何故か怒られるユキ、恐らくマキに対して言った言葉が気に入らなかったのだろう。
中間試験は3日後、2日間かけて行われる。
3年生には試験は行われない。その代わりに進学者のみに進学者共通試験が全国的に開催される。その成績が優秀であれば、真欧大学へ無試験で入学できるのである。
しかし、ミサキは進学しない。ようするに暇なのである。
なので、ユキの試験開始までミサキが勉強を教えることになったのである。
「いいなーユキちゃん、お姉さまに教えていただいてー。」
「会長直々に、うらやましい。。わたしもユキみたいにバカになりたいぃぃ」
ユキがバカでないことは知っているが、おちょくるマキ。
「マキせんぱぃなんて、きらいですぅ!べーだ。」
言い返すユキ。仲がいいのか悪いのか。
こうして、3日間ミサキによる猛勉強が始まったのであった。
中間試験終了まで、生徒会は予備校となった。
*****中間試験終了、結果発表*****
全生徒が自分の順位や、熾烈な1位争いの結果が気になる中。
廊下に貼りだされた順位表。その前にはたくさんの生徒でごったがえす。
2年生の1位は当然マキであった。
ーーーー2年試験結果ーーーー
1位A組 城間マキ 500点
2位A組 天地ミカ 490点
3位A組 ・・・・ 398点
と30位まで記載されている。
「また満点よ、マキさんて凄いわ。」
「マキせんぱい、凄すぎる!」
など、もう毎回この騒ぎである。
そして…
ーーーー1年試験結果ーーーー
1位A組 氷神ユキ 470点
2位A組 ・・・・ 433点
3位A組 ・・・・ 415点
こちらも30位まで記載されている。
いきなり圏外からの1位のユキ。
1年生の生徒達はおお騒ぎ。来期の生徒会書記に任命されていたのは知っていたが、『なんであの子が書記』などと陰では言われていた。
だが今回のこの結果をみて、誰もそんな事は言わなくなった。
1年A組 中間発表の結果を見て、ユキの席には生徒達が群がる。
「氷神さんすごいね、1位おめでとう。」
「1学期は体調悪くてあまり来てなかったんだよね、それなのに2学期でいきなり1位なんてすごーい。」
ユキを褒め称える生徒達。
「そうね、必死で勉強した甲斐があったかもね。それに来期は生徒会書記だから、A組から脱落するわけにもいかないでしょ。」
冷めた表情、冷めた目で答えるユキ。
「そ、そうなんだ。とにかくおめでとう。」
「ええ、ありがとう。」
1年生と話すときは別人のユキであった。
*****放課後 生徒会室*****
パタパタ!ガラガラガラ!
慌しく駆け込んできたユキ。ミサキを見つけるとすぐさま駆け寄る。
「ミサキかいちょぅ、おかげさまでぇ1番になれましたぁ!本当にありがとうございましたぁ。」
と深々と頭を上げ、かなり喜んでいた。3日間勉強漬け、さらには泊りがけでの猛勉強の成果であった。
「ユキちゃんの努力だよ、わたしはなにもしていないもん。」
「いぇいぇ、かいちょーのご指導のおかげですぅ」
そしてミカとマキからも祝福される。
「すごいねー1位だなんて!わたしはまた2位だったよー」
「やったなユキ!期末試験も1位になれよ。」
「ミカせんぱぃが2位?ミカせんぱぃより頭がいい人なんているんですかぁ?」
そう、ユキは知らないのである。
「ユキちゃん、この学園始まって以来の超天才がそこにいるんだけど。」
「え?どこですかぁ?」
ミカ、ミサキ以外にもうマキしかいなのである。
「まさかぁ…マキせんぱぃじゃないですよねぇ?」
ミカ、ミサキは無言。そうそのまさかなのである!
「えぇぇぇぇぇぇ!そ、そんなことがぁ…。」
否定も肯定もしない為、ユキは生徒会室を飛び出し、貼り出された成績発表を確認しにいった。
「ユキめ…わたしをなんだとおもってやがる。」
「でもマキちゃんまた満点だったね、今頃ユキちゃん凍ってるよきっとー」
「ミカちゃんうまいこと言うね。」
「ほんとマキは凄いよ、わたしの1位の時とはレベルが違うわ。」
ミサキも1年生、2年生の時は全て1位だったのだが、満点ではなかった。
「いえ、そんな、ありがとうございます。ミサキ会長。」
そしてユキが帰ってきた。
「ま、ま、ま満点で1位って…。マキせんぱぃって、すごかったんですねぇ」
マキが頭がいいことは知っていた、だがミカよりも成績がいいとは思っていなかったようだ。
「そうよユキちゃん、マキちゃんはこの学園のエースなんだよ、だからもっとマキちゃんを見習わないとだめだよー。」
ミカがそう言った。
「は、はぃ。」
ユキはしぶしぶ返事をした。どうもミカに言われると弱いらしい。
中間試験も終わりいよいよ『真欧祭』が始まろうとしていた。
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