【032話】氷の世界3
*****アイスキャッスル*****
残った火の種族の始末をどうするのかを相談する為、マキ達はユウキの城へ移動することとなった。
女王ユウキの城『アイスキャッスル』は火の種族からの攻撃を受けずに無事であった。
そこに、女王ユウキ直属の配下達が集まり、親衛隊隊長やら、軍隊の将軍やらで会議が行われた。
(どの世界も似たようなもんなんだな。しっかし、ユウキって凄い女王だったんだ。この世界でわ。)なにか譲れないものでもあるかのように、付け足したマキであった。
会議には当然マキも参加している。
もはやマキの存在は『救世主マキ様』であった。
この世界の時間は止まったままだ。戦況は圧倒的に有利。なのに中々話はまとまらない。
大きな円形のテーブルを取り囲むように13の椅子が配置され、一際目立つ立派な椅子には女王が座り、他の椅子にはマキを含め、重鎮と思われる者達が座っている。
「マキ様、何か良いご意見がございましたらどうぞ我々に知恵をお授けください。」
出席している中でも一番地位の高そうな議長のような人にそう言われたので発言する。
「残るは火の種族をどこかに捨てればいいんだよね?穴掘って埋めちゃえば?」
つまりそれは生き埋めである。やはりマキは恐ろしい。
「穴ですか、火の種族は相当な人数が現在この地にいます。それを全部埋めるとなりますと…。さらに、火の種族ですが、埋めた場所を燃やしてしまいそこが熱源となり、我々の世界が溶ける恐れもありますので…。」
(そっか、そもそも火の種族だから燃やせないし、凍らせても溶かしてしまうから、意味ないんだな。)
やっと事態の深刻さを把握したマキだった。
だが、そこはスーパー頭脳の持ち主マキ。
「じゃあさ、そいつら全部火の世界に返しちゃえば問題ないんだよね?」
マキはまとめて転移させれば問題ないのでわと考えたが、よく考えてみると、一度に一人づつしか転移できなかった。
「ごめん。いまのなし。」
まとまらない会議はこのまま続いた。
「ごめん、少し考えてくるね。」
マキは会議の場を離れ、城のテラスに出て氷の世界を眺めていた。綺麗な空。光り輝くオーロラ。
景色を眺めながら頭脳をフル回転する。
(そもそもどうやって火の種族は氷の世界へやって来たんだ?しかも内通者がいたってことは、かなり前から行ったり来たりできたんじゃないのか?もしかしたらそこに答えが!)
マキは慌てて会議の場にもどり、叫んだ。
「裏切り者をいますぐここに連れてきて!」
それを聞いた女王は、すぐさま兵を動員するように命じ、裏切り者の捜索が始まった。
この世界にやってきて、数日が経過。マキは探してとは言ったものの、誰も知らない裏切り者をどうやって探すのだろうと、言った事を後悔していた。
だが、そんな思いとは裏腹に
裏切り者が見つかったらしい。
報告を受け、裏切り者が連行された部屋へと案内されるマキ。すでにユウキや会議に出席していた重鎮達は勢揃いしていた。
「まさか、この方が裏切り者だったと?」
「間違いありません!火の種族と仲良く談合したまま凍っておりました。念のためその相手も連れてきてございます。」
(なんて有能な兵なんだろう。裏切り者が誰かも分からないのに、探し出してきたし。)
その裏切り者は、女王の姉の夫であった。それなりの地位もある。姉がいるにもかかわらず女王になったのは、姉が無能でユウキが有能だったかららしい。
それに納得できなかった姉が夫と共謀し、女王暗殺を企てたのだろう。マキはそう推理する。
「まあ、とりあえず解凍してみよう。」
そしてマキが魔法ですぐさま解凍した。
その裏切り者かもしれない男は、取り調べを受ける為、別室に連行された。
*****取り調べ室*****
別室に連行された姉の夫に、今に至る経緯を説明すると、もう逃げられないと思ったのか、あきらめた様子の姉の夫。地位は公爵らしい。
「俺は、妻に頼まれてやっただけだ!大体姉が女王になるべきだろ!違うか!それを見据えて結婚までしてやったのに!」
(やはり、どこの世界でもいるんだな、こういう奴。)
(んで、女王がそれを聞いて『まさか、お姉様がそんな事を…』ってお決まりパターンか。ユウキが来たし、見学しとくか。)
しかし、ユウキはマキの予想を裏切った。
「この愚か者よ、そなたは今から拷問し、全てを吐かせた上で、その生涯を裏切り者として、死ぬまで晒してやる。さっさと連れて行け、顔も見とうないわ。」
マキはユウキをいじめるのは、もうやめようと思った。。
拷問により全て白状した姉の夫と、一緒にいた火の種族の者、言い分が同じであった事から、裏切り者と断定された。
姉の夫は女王が先程言った通り、晒して死ぬまで放置が決定した。火の種族に関しては、凍らせて砕かれたらしい。
○白状した内容
広大な氷の世界に、太古から誰も立ち入ってはならない聖なる場所というものがあり、そこに侵入し、そこから火の世界に行けることが分かった。火の世界にも同様に聖なる場所があったことから、元々は繋がっていたと思われる。
発見してから間もなくして、ユウキが女王の座に即位する事が決まり、納得できないユウキの姉になんとならないかと言われたらしい。
そこで思いついたのが、聖なる場所から2つの世界への行ききが可能な事がわかった為、火の種族の王に氷の世界の存在を教え攻めさせたのだが、上手くいかず、今度は和平を偽装し、その間に攻め入り、さらに女王を暗殺しようと計略を立てたわけだ。
「やはり、マキ様の予想通り、裏切り者が鍵を握っておりました。本当に感謝いたします。」
女王自ら礼を言い、配下も皆頭を下げ感謝の意を表していた。
「じゃあ、あとはその場所に行って、火の種族を火の世界に放り込むだけだね」
「そうですマキ様。でわ、皆の者、親衛隊隊長の指示の元、作戦に移れ!」
こうして、火の種族追い出し作戦は決行された。
この作戦にはかなりの日数がかかった。最後の一人を放り込んだのは、決行から約半年後の事だった。その間当然マキも手伝っていた。
時間が止まっている為、食欲も湧かず、体力も消耗していない。さらに睡眠もしなくても平気だった。
魔法を行使した時のみ少し疲れる程度だったが、ミカの癒し効果でそれもやがて回復していた。
そして、その聖なる場所は、マキの封印魔法により、永遠に封印されたのである。火の世界はユウキに凍らされたまま封印されたのである。
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