【003話】魔王編3
この世界の統治を丸投げされたミサ。今では魔王に続くナンバー2の強さを誇る。
*****ミサの部屋*****
ミサは悩んだ。
(この世界を統治しろって…いったいどうすれば…。魔王様は戦いが嫌だとおっしゃっておられたはず。だとすればあれしかないわね。)ミサはなにかを思いつき早速行動に移すことにした。
ミサはかなり優秀な魔族であった。先代魔王の血筋であった為、それなりに教養もあり、戦闘における訓練もやっていた。なので、魔王の意思を汲み取り実行に移すのも早かった。
○ミサが配下になった理由と、一斉討伐に及んだ経緯
話は遡る。前魔王が魔王に君臨してから、数千年が過ぎていた。実力至上主義で魔王の座を賭けて挑んできたものには正式に決闘の場において勝負し、見所のありそうな者はあえて消滅させずに配下に加え、その勢力を拡大していった。
その勢力はとてつもなく強大で、他のどの勢力も戦争しようとは思わなかった。
○決闘の場
【初代魔王により、魔王の座を賭けた戦いの為に作られた闘技場。この闘技場までに一本の長い通路があり魔力の重圧がかけられている。その為、戦いを観戦する者たちもそれなりの魔力がなければたどり着くことができない。】
しかし決闘を挑んでくるものは数十年に一度はいた。前魔王はそれをとても歓迎していた。
だが、前回の決闘からしばらくの間、魔王の座を狙うものがこなくなり、平穏な日々が数百年過ぎた頃、一人の挑戦者が現れた。
そう現在の魔王である!
魔王の座を賭けた決闘は誰でも簡単にできるのだが、魔力が弱いと決闘の場にたどり着く前に魔力の重圧により消滅してしまう。この数百年間の間も挑戦者はいたのだが誰一人として決闘の場までたどり着くことができなかったのだ。
しかしその挑戦者は圧倒的な魔力を身に纏い、決闘場まで悠々と辿り着いた。
「魔王よ!その座を奪いにきた。決闘を申し込む!」
新たな挑戦者がここまで辿り着くことが予め解っていた魔王は喜びの表情を浮かべ決闘を了承した。
強大な勢力となっていた魔王の配下達が次々と観戦の為、闘技場へ集まる。
久々の決闘、さらに新たに配下に強力な力を持った者が増える期待を抱き闘技場は配下で埋め尽くされた。そして闘いは始まろうとしていた。
「魔王様かなり喜んでいるな。」
「まあ無理もないさ!数百年ぶりの決闘だからな。今回も俺たち同様強力な仲間として加わるかもしれんな。どんなヤツか楽しみだぜ」
そんな会話があちこちで囁かれていた。決闘の場を取り囲む者たちは皆、魔王に挑み敗れ配下になった者だ。おそらくここにいる配下数百名で魔王に攻撃すれば勝てるだろう。それくらいの実力者ばかりが勢ぞろいしているのだ。
「ミサお嬢様、どうなさいました?」
配下の一人がミサの様子が少しおかしいと感じ話しかける。
「いえ、なんでもありません。大丈夫です、よれよりまもなく始まりますわよ。」
観戦する魔族は新たな仲間が増えると思い闘いが始まるのを見守っていたが、ミサは少し他の者達とは違う考えだった。
(この方、強いとかそんなレベルじゃない。今まで出会った事のないこの感覚?なんだろう…この方にお仕えしなくては…何故かそう思ってしまう。)
本能的にそう思ったのか、なにかのお告げだったのだろうか、闘いが始まる前でがあるが、勝っても負けてもミサは挑戦者に仕える身になることを決心していた。
魔王と挑戦者は向かい合い戦いがいよいよ始まる。
「魔王よ!言い残すことはないか?」
挑戦者は魔王に訊ねた。
「はっはっはっは、それはワシのセリフじゃ!かかってくるがよい小僧!」
「わかった。じゃあ遠慮なく。」
闘いは始まった…瞬間終わった。。。。
魔王は挑戦者の魔力により一瞬にして消滅してしまった。
場内で見守っていた配下達も何が起こったのか理解できず唖然としていたのだが、中には冷静に事態を見ていたものが魔王の座を狙うなら今しかないと判断し、一斉に挑戦者に襲い掛かった。
しかし、それはあっけなく終わった。
魔王同様一瞬で消滅させられ、仲間を目の前で失った配下達は一瞬の出来事にとまどうことなく一斉に怒りのまなざしを挑戦者に浴びせた。
そのまなざしを受けた挑戦者は容赦なくその者たちを一人残らず消滅させてしまったのだ。しかも一瞬で…。
しかしただ一人羨望の眼差しで挑戦者を見つめる一人の少女がいた。そうミサである。
ミサは挑戦者に近づき
「私は前魔王の娘、ミサでございます。どうかあなた様の配下にしてください。」
挑戦者はなんの疑いも持たずに配下になることを了承した。そして魔王となったのだ。
だが…前魔王との闘いで、前魔王の強力な配下達までも全員葬ってしまっため、決闘での挑戦者の魔力の強さを伝える者もいなくなってしまい、肝心な配下はミサ1人しかいない。
この場にいない魔族からすれば、前魔王と配下達は突然いなくなってしまった為、新たな魔王はいわば勝手に魔王を名乗っているのだろうと思われてしまった。
新たに魔王に君臨するも、その座を奪わんとする者が前にも増して後を絶たなくなってしまったのである
そんな事とは知らずに(これも魔王の宿命)だと自分に言い聞かせ、次から次へと現れる挑戦者達を葬ってきたのだが…次第に自分の力が大きすぎ、この闘い自体が無意味だと悟り、(どちらかいうとめんどくさくなったから)先ほどの一斉討伐に至ったのであった。
文字数:2193字