【021話】夏休み
*****真欧家 ミサキの自室*****
夏休み初日、ミカ、マキ、ユキの3人に『夏季合宿のご案内』をメールで送信した。
送信者:真欧ミサキ
件名:合宿について。
内容:必ず3人一緒にきてネ。合宿で行うのはユキちゃんのお勉強会と体力づくりのお手伝いです。
それに付随して、転生者同士の交流も深めようということだが、どちらがメインの目的なのかはわからない。
とりあえず、明日からの合宿に備え寝ることにした。ベットに寝転び、いろいろ考える。
(仲間も増えたけど、さて…どうしたものか。当分はこの人間界の生活を送るのもいいけど、他の世界にも行ってみたい気もする。まあ、合宿中にみんなの意見も聞いてみるか。)
*****天地邸前*****
マキはユキの家まで迎えに行き、ユキの母親に合宿の詳しい説明をした、するとユキの母親からかなり感謝されてしまった。ユキは体が弱く引きこもりだったからだろう。
そしてユキを連れてミカの家まで向かう途中、暑さでひっくり返りそうなユキに水をかけたり、話し方がどーたらこーたらとか、ミカの家までずっと説教しながら歩いていた。
「やっと到着。ミカちゃん用意できてるかなー」
「うわぁ、ここが天地副会長さんのおうちですかぁ。すごいですぅ。」
「ミカちゃーん!」
マキが大きな声を上げて叫んだ。カメラ付きのインターホンがあるにも関わらず、おかまいなしで叫ぶマキ。
「城間せんぱぃ、インターホンあるのにぃなんでおさないんですかぁ。」
「どっちにしたってインターホン越しに話しかけるんだから叫んだっておなじじゃん。」
そう言われユキは何故か納得してしまった。
すると門が開き、黒い服を着た人相の悪い人達が笑顔で数人でてきた。マキの声がしたら、怖がれないように表情を笑顔にするようにと副社長(若頭)から言われていた。
ユキはいきなり出てきた黒服にビビりまくって、マキの後ろに隠れる。
「これはマキさん、こんにちわ。お嬢さんからマキさんがお見えになられたら中へお通しするように言われてますので、さあどうぞ。」
「うん、わかりました。いくよユキ」
すっかりお姉さん気取りである。
「ふぁい。」
ユキはおどおどしながらマキの後ろをついて行った。
(城間さんてすごい、怖くないのかな。やっぱこの人は会長さんや副会長さんとは少し違うところがある。)
黒服の手動で開く玄関のドアを潜り抜けると、ミカ曰く副社長さんが立っていた。
「マキさんいらっしゃい!こちらでお待ちくだせえ、お嬢さんもすぐに来ますので、そちらの方はお友達ですかい?」
どう見ても一般人ではないその顔面凶器のような顔を見たユキは泣きそうだった。
「ども、お久しぶりです。この子は後輩ですよ、じゃあお邪魔します。」
マキは臆する事なく堂々と案内される応接室みたいな部屋へ向かって行った。後ろを歩くユキは、マキの事を改めて凄い人なんだと思った。
副社長【おそらく若頭的な人】もマキには感心していた。自分の姿を見ても普通に話しかけるからだ、社員【おそらく組員的な人】の中でもそんな奴は一人もいなかったからだ。
そして応接室に入り、ソファーに座った。もうマキはこの家の広さや置いてあるものが、常識外の物だと分かったので驚かない。
ユキはきっと驚いているだろうと思い、ユキの方を見たが、人相の悪い人達の事でそれどころではなく、マキの腕にしがみついていた。マキは妹分ができたような気がして嬉しかった。
そして応接室に誰かが入ってきた。
低いドスの効いた声で話し出す。
「ミカが大変お世話になっております。はじめまして、父親の天地巌です。世間知らずな娘ですが、今後ともよろしくお願いします。」
突然の父親の登場にさすがのマキも慌てて立ち上がり、あいさつを交わす。
「いえ、こちらこそミカさんにはいつも良くしていただいております。申し遅れましたが、私は城間マキと申します。」
「わ、わたしわぁ、氷神ユキといぃますっ。天地副会長のこ、後輩ですっ!」
マキは堂々と相手の目を見て、ユキはおどおどしながらも大きな声であいさつした。
「あなたがマキさんでしたか、いつぞやは娘が危ないところを助けていただいて、とても感謝しております。お礼を言うのが遅くなり申し訳ない。そちらの方はミカの後輩の方ですか、お二人共いつでも遊びにきてください。」
ミカの父親、社長【組長または会長】は身長185センチでかなり肩幅も広く、顔にはあちこちに傷の痕がみえた。恐らくこの人と面と向かって話せるのはマキくらいであろう。副社長でさえ怖がってまともに目を合わせられないらしい。
ミカの父親はそんなマキの事を一目見て気に入ってしまったのだ。
あいさつを交わし終え、マキちゃんはかわいいとか、後輩が懐いて面倒見がいいとか、マキはマキで、お父さん顔が怖いとか、すっかり仲良くなってしまい、応接室は笑いで盛り上がっていた。するとミカが鬼様な形相で入ってきた。
「お父さん!なんで勝手にマキちゃんに話しかけるんですか!驚いて帰っちゃったらどうするんですか!」
ミカは父親に向かってそう言った。
「いや、すまんすまん。お前がいつも話してくれるマキさんと早く話したくてな、本当にいいお友達だったよ。お父さんとも友達になってもらおうかと…。」
頭を掻きながらそう言った父親、見た目と会話の内容のギャップの差がすごかった。どうもミカには逆らえない様子だ。
「せっかく私からお父さんを紹介しようと思ってたのに…まったく、もう!」
ユキはずっとマキの腕にしがみついたままだった。きっとこれが普通の人の反応であろう。
ミカはマキの腕にしがみつくユキの様子を見て
(もうすっかりマキちゃんと仲良くなってー。私も早く仲良くなりたいなー。)と勘違いしていた。
「でも、これでマキちゃんにもユキちゃんにもお父さんを紹介できた事だし、いつでも気軽に遊びにきてね。」
マキは頷き、ユキは(一人では絶対にこれませーん)と思った。
「じゃあお父さん、しばらく合宿に行ってきますね。心配なんてしなくていいからね!余計な事もしないでよ。」
ミカは黒い服達にウロウロされるのも鬱陶しいし、なにより四人以外誰にも秘密を知られるわけにもいかないので、釘を刺した。
だが父親はこう告げた。
「いやいや、なにも心配なんかしていない。マキさんが一緒だからな。はっはっは。」
父親がマキに対して絶大な信頼を寄せている事に驚いた。よほど気に入られているみたいだ。まあ、どっちにしてもこれで一安心できた、マキを父親に会わせたのは正解だった。
巌はマキに娘を合宿でもよろしくと告げ、ユキにもミカに何でも相談しなさいと優しく話しかけ、玄関先まで3人を見送った。マキは行ってきまーすと、手を振っていた。
そして3人は合宿先へと向かった。




