【013話】友達
*****ある日の放課後の生徒会室*****
捜索は一旦中断した為、普通の人間としての生活を以前と変わらず続けてきたある日の放課後、いつものように生徒会室に集まる3人の美少女がいた。マキが転入してくる前はミカとミサキがいつも一緒にいたのだが、現在は3人でいる。
ミサキとミカは学園と自宅(豪邸)を毎日高級車の送り迎えつきでいったりきたりしている。一人で外出することはまずありえない。
「お姉様、ミカは明日より電車やバス、徒歩といった手段で通学してみようと思いますの」
得意気にそう語るミカ。
(この人何言ってるんだろう…。あっそっか、そういえば毎日ミサキ生徒会長同様に送り迎えの車通学だった。でも大丈夫なんだろうか、かなり世間知らずそうだし…しかし何故急に?)マキはそう思いながら聞いていた。
「へぇー、えらいわねミカ!そうでもしないと修行にならないもんね。応援するから頑張ってね。私もそうしたいのだけれど、両親が猛反対するだろうし、仮にできたとしても護衛が20人くらい付きそうで…それじゃ意味ないし。。。ミカがうらやましいわ。」
(ああそっか、たしかミカちゃんは修業の為に転生したんだっけ。だから学園以外の事も勉強しないといけないってことか。)2人の会話でそう判断したマキ。
ミカは『頑張ってね』とお姉様直々に言われすごく嬉しかった。明日からの登校が楽しみでしょうがなかった。
ミカは職員室に用事があるらしく生徒会室を後にした。もちろんマキには目で『お姉様に手だしたらわかってるわよね』といわんばかりに…。
2人きりにされたマキ、目の前には恐ろしい魔王がいる。見た目は女子高生だが、中身は魔王。。。普通にミサキに話しかけてるミカの事も心底すごいと思っていた。
「ねえマキちゃん、お願いがあるのだけれどもいいかしら」
ミサキはやさしく微笑みながらマキにそう言った。
「は、はい!ミサキ生徒会長なんなりとお申し付けくださいませ!」
(お願いって言わずに命令でいいんですが…ご主人様なんだから、こうしろあーしろって言ってもらったほうがいいんだけどなぁ。。。どっちにしても断れないんだから。)そう思ったマキだったが口には出さない。
今はただの女子高生であるミサキ、威圧する魔力の放出もないし、姿も女子高生であるのにマキはビビりまくっている。
「マキちゃん。そんなに堅くならないでよ。なんか私が怒ってるみたいじゃない。」
ミサキは笑いながら言う。
「いえ、めっそうもございません!お叱りを受ける。すなわち死を意味するものでありますから、そのような事はないのはわかっております次第でございまする!」
言葉使いまでおかしくなってしまっていた。。。よほど怖いのであろう…。
「まあ、いいわ。マキちゃん明日からミカの事、よろしくお願いしますね。」
「はい?」
マキは訳がわからなかった。。。
そしてその日は帰宅した。
*****翌日 天地邸前*****
翌日の早朝、マキは現在天地邸の門が見渡せる少し離れた場所にいる。
天地邸、そうミカの自宅である。
偶然にもマキの自宅のすぐ近所であった。当然この家の存在をマキも知っていた。マキが以前通っていた学校もこの近所にある。
(まさかミカさん自宅がここだったなんて…偶然にもほどがある。この地域の人間なら知らない人はいないし、嫌味なくらい金持ちだし…。そういえば昔、この塀に落書きとかしまくってたなぁ。。。もちろんこの事は墓まで持っていくけど。。。)
○何故マキがここにいるかというと。
マキは自分なりにミサキの言葉を理解していた。『ミカをお願いします』そう、すなわちミカの護衛をしろということだ。でもミカに見つかるわけにはいかなかった。修行の為でもあるし、ミカ自身、マキが護衛すると言ったら絶対に拒否するからである。それを見越し、ミサキはあえてミカのいないときにマキにお願いしたのだ。
それにもし、ミカの身になにかあったとすれば、マキの封印など一瞬で解除され本来の天使ミカ登場!さらに全人類がミカの信者に。。。って事になったりする可能性もある。
信者にしてしまったところでマキの魔法があれば元に戻すこともできる。まあどっちにしろ何もないに越した事はない。だがマキは『はっ』と恐ろしいことが思い浮かんだ。
ミカが嬉しそうに、通学の話をしていたが、もしこれがミサキだったら…さらに護衛がわたしではなくミサキだったら…どっちにしても封印は解かれ人類は滅亡する運命になっていたかもしれない。そしてそれを見たミカは消滅。最悪のシナリオだ。。。それを考えると自分が護衛を頼まれた(実際はお願いだけされた)意味をようやく理解できた。
実はマキの頭脳は人間の頭脳を遥かに凌駕している。それもそのはず魔法の術式を全て暗記し、魔方陣の構築、魔法の発動すべてをこなす能力の持ち主なのだ。ミサキもそれを解っていたからこそマキにはただ、『ミカをお願いね』としか言わなかったのだ。1を知り1000まで知るマキであった。
そして今、マキは天地邸の門が見えるところに待機している。
しばらくすると門が開き、ミカが出てきた!だがその後ろには黒服のガラの悪そうな男達がゾロゾロとついてきている。
(な、なんだあれは…あれじゃ意味ないじゃん。。。)
しかし、それに気がついたミカは振り返り黒服の男達にすごい剣幕で何かを言っている。
(ん?なんだろう…)
しばらくすると黒服の男達はがっくりと肩を落とし、天地邸まで戻っていった。
(ミカさんやるなーさすがです)
そして初の1人で通学となったミカの後をマキが尾行するのであった。
(まあ、もし見つかったとしても『私もこの近所に住んでます』って言えばいいし、事実だし。とにかく何事も起こりませんように。。。)
祈りながら尾行を続けるマキであった。
天地邸を出てからは徒歩10分ほどで駅に着く。途中には商店街を通り、結構人通りもそれなりにある。駅からは電車で30分、そしてバスで20分のところに学園がある。
現在最初の関門徒歩だ。ひやひやしながら後をつけるマキ。どう見ても不審者だ。しかし本人は必死である。
ミカはミサキの前ではかわいらしい女の子だが、他の生徒の前では正義感の強い、気が強い真面目な女の子で通っている。なので余計に心配である。
順調に最初の関門『徒歩10分』をクリアできるのではと思っていた矢先であった。
ミカが商店街の途中に路地裏へと抜ける狭い通路を見て立ち止まった。そこでは女子高生による女子高生へのいわゆる【カツアゲ】が行われていた。
「アンタさぁ、お嬢様学校の生徒だろ?たしかさー真欧学園だっけ?」
「は、はいそうですが…」
「じゃあさー金持ってんだろ!全部よこせよ!」
「ぇ。。こ、困ります。ゆるしてください」
この3人の生徒が あろうことか真欧学園の生徒(おそらく1年生)を路地に連れ込みカツアゲしている現場だった。
それを見たミカは当然のごとく仲裁に入った。
「あのー、うちの生徒がなにかなさいましたか?」
はじめてみるカツアゲ現場、校内のトラブルと同様、すぐに解決できるであろうという自信もあり余裕な態度でいつもように解決したつもりになっていたミカ。
「失礼があったのならば、私が変わりにあやまりますので、許してあげてもらえませんか?」
これで、もう何も起こらないだろうと思っていたミカ。ところが…
「あ?なんだお前!お前もこいつと同じ学校じゃん!代わりに金くれんのか?ああ?」
「つか、なにコイツ、横からしゃしゃり出てきやがって、やっちまおうよ」
ミカは何が起こったのか把握できなかった。派手な化粧をした3人に取り囲まれ、胸倉を掴まれ、背の低いミカは簡単に持ち上げられたのだ。それもそのはず、現在のミカはただの普通の女子高生でしかも145センチしかない。ミカは初めて自分の力のなさを自覚した。そしてこの状況をどうすることもできずに絶望に近い感情がこみ上げてきた。
そのとき一人の美少女が現れた!
「コラ!テメーら!なんてことしやがる!その手をいますぐはなさんかい!コラ!」
マキが鬼の形相で突っ込んできた。そして3人の女子高生をボッコボコにしばき倒してしまった。
マキにすればミカになにかあれば、ミサキが怒り、そしてマキ自身がお叱りを受ける。すなわち死を意味するのである。それは必死になるのも頷けるのであった。
ボコボコにしただけでは怒りは収まらず、さらにしばきまくるマキ、そしてリーダー格と思われる女子高生の顔面を踏みつけながらこう言った。
「おい!テメー誰に手あげてんのかわってんのか!次やったらマジ殺すからな!覚えとけやコラ!文句あんなら元『鬼畜リーダー』マキんとこにいつでもこいや!」
リーダー格の女子高生と残る2名の女子高生は『鬼畜のマキ』の名前だけは知っていた。この地域の伝説であり女子不良界のカリスマ的存在である。
3人は土下座し、泣きながら消えていった。
ミカは未だに何が起こったのか把握できず、さらにカツアゲされていた女子高生はマキを見て『鬼畜なマキお姉様素敵』と呟いていた。
(しまった。。。やっちまった。ずっとあの学園に行ってから隠していたのに。ミカさんはこれで私の事がもっと嫌いになるんだろうな。。。もう終わったかも、短い人生だったなぁ。。。)とマキは自分の人生を振りかえりすでに死をも覚悟していた。
すると、ミカの声が…マキの胸の方から響き渡る。
「マ、マキさん…えーん…こわかったですー。えーん。。ぐすっ。。。えーんえーん。。。」
そこにはいつのまにかマキの胸元で泣きじゃくるミカの姿が…。自分を遥かに凌ぐ力の持ち主が泣いている光景はある意味怖かった。。。
「ミ、ミカさん泣かないでください。クラスメイトとして当然のことをしたまでですよ。それよりお怪我はありませんか?」
それを聞いたミカは自分が今までマキにしてきたことを思い出しさらに泣き出した。
「ぐすっ…わ、わ、わたし。い、いま…までマキさ…んに、ひどいこと…言ったり、思ってたり。。してたのに…ぐすっ…な、なのに…なんで。なんでこんなわたしを…たすけてくれたの?」
「ミカさんにひどいことされた覚えなんてないですよ。転入してきたときも一番最初に話しかけてくれたじゃないですかー。マキはすごい嬉しかったですよー。それにミカさんとはもっと仲良くなりたかったし。」
ミカは涙が止まらなかった。こんな嬉しいことは初めての経験だった。
この事件をきっかけにマキとミカは友達になった。ミカにとってはこの世界で初めて同じ学年の友達ができた。
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