【011話】新事実発覚
*****生徒会室(魔方陣内)*****
魔王、魔女、天使の3人が人間界のしかも同じ学園の生徒会室にいる。おかしな組み合わせだ。
2人は記憶と能力を取り戻してすぐに魔王の仲間となった。しばらく話合い、とりあえず人間の姿に戻ることにした。
だが今のこの姿は非常にまずい。現在この部屋はマキの魔方陣により結界が張られている為、魔王の魔力や天使の天界の能力は人間界に放出されていない。
マキの魔法が解けたら魔王の魔力がこの世界を滅ぼす恐れがある。天使の持つ天界の能力も人間界ではどのように作用するのかは未知である。
魔王や魔女にしてみればこの世界のことなど、どうなろうが知ったことではないのだが、天使は違った。守護する立場としては世界を滅ぼすのは非常にまずいことなのである。下手をすればミカ自身が消滅してしまう恐れがある。
「なんとかいい手段はないのでしょうか。」
ミカは困った表情でマキの方を見る。
するとマキは即座にいい方法を思いつき話し出した。
「ご安心を、この魔女が魔法でなんとか致します。ただしばらく詠唱のお時間をお与えください。」
そう告げると魔女マキは杖を空間から引き出し、長い術式を唱えた。
術式を唱えると円形の魔方陣が3人の真下に浮かび上がり3人を紫色の光が包み込む、やがて光は消えていき、3人は元の女子高生の姿に戻っていた。マキの魔法により一時的に2人のそれぞれの能力を封印することができた。
そして魔法の解けた生徒会室で3人による会議が行われた。
魔王ミサから、姿は人間なので、それぞれを魔王、魔女、天使とは呼ばないようにと言われ、2人は了承した。
会議ではおのおのが転生に至った経緯を打ち明け、今後どうするかを話し合った。
ミサキから話を切り出す。
「私は前魔王様の後を追って転生したの。でも記憶がさきほどまで失われていて、やっと本来の目的を思い出したわ。本当に感謝しているわマキ!あなたのおかげよ」
ミサからミサキに戻り、マキに喜びを伝えた。
お礼を言われたマキは答えた
「と、とんでもございません。お礼なんてもったいないです。それで、私の転生理由ですが、私は魔女としてほぼ全ての術式を覚えました。ですが光り輝く1冊の本がありまして、その本の術式を覚えているうちに過って詠唱してしまい、そして今に至るわけです。」
少し間の抜けた転生であったが、あえて2人は突っ込まなかった。だがマキの言っていた1冊の本のことが気になりミサキがその本のことについて聞いてみた。
「マキ、それってもしかして【転生大全集】って本じゃない?」
「そ、そうです!それですその本です!」
黙って聞いていたミカも慌てて、
「えー!!!私もです!私の場合、父から一度転生して修行してきなさいって渡されたのがその本でした。」
ミサキは前魔王を追いかけて、マキは自分のミスで、ミカは修行のために、それぞれ目的は違っていたが、共に同じ転生方法で転生していた。
「でも、あの本には莫大な魔力が必要って書いてあったわよ。ミカもマキも魔力はないはずよね。」
ミサキは2人が魔力がないのにどうやって転生したのか聞いてみた。
マキとミカは不思議そうな顔をして答えた。
「私の見た限り魔力なんて文字は記載されていませんでした。ややこしい呪文と術式がびっしり書かれてましたけど。。。」
とマキは思い出したくなさそうに答えた、よほどややこしかったのだろう。
「私も魔力の事は記載されていませんでした、それに術式なども見当たりませんでしたよ。ただ『清らかな心で祈りを捧げよ!そして転生先を思い浮かべながら呪文を唱えよ』とだけかかれておりました」
ミカはそう答えた。
「じゃあそれぞれの世界で転生の仕方が異なるってことね。なるほどね、他にはなにか書かれてなかった?」
ミカとマキは記憶を辿る。そしてミカは思い出した。
「そういえば、あの【転生大全集】は一度使うと消滅する、みたいな記載がされていました。それと記憶もなくなるって。」
マキもそうそうと頷く。
「へぇーそうなんだー。記憶がなくなるって書いてたの?ちゃんと読んでなかったわ。私が覚えているのは失敗したら消滅します。みたいな事が書いてあったくらいかな。じゃあ私が転生した後、あの【転生大全集】も消滅したってことね。」
「そうなりますよね。おそらくあの本自体が、あちこちが飛びまわってるのではないかと。」
ミカがそう告げてミサキの方を見ると、ミサキの顔色が悪くなり汗をかいていた。
「ミ、ミサキお姉様、どうなさいました」
「ね、ねえ…さっきの【転生大全集】は転生が成功すると消滅するっていったよね?」
「は、はい。それがなにか?」
マキ、ミカ共に『?』
ミサキは震えだした。前魔王が転生に成功していればあの【転生大全集】は消滅していたはずであり、ミサが手に取ることはなかったと。。。あの時魔王の魔力が突然消滅したのは、転生に失敗して魔王自身が消滅してしまったのではないかと…。
「もしかしたら私の魔王様はすでに。」
ミサキはポツリと呟いた。
その呟きが聞えていた 2人はミサキが転生した理由を聞いていたのですぐさま察知した。
生徒会室が静まり返った。
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