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水底の華(みなそこの はな)

掲載日:2026/07/06

 白いしろい世界の底に、南天の実がぱらぱら落ちる。

 夜ごとに、そういう夢を見る。


 ……ぱたり。ぽたり、ぱらぱらぽとっ、ぱらぱらら……っ。

 夢だから、南天のほかに何もない。現実にはあり得ない、おおきなおおきな樹のしたで、僕はぽつんとひとりきり。


 白くて淡く、はかない世界。嬉しくもなく、さみしくもなく、ぼくはうっとり待っている。


 ……たれかを、ひたすら待っている。


 夢みたいで。現実うつつみたいで。


 ぼくは、ただただ待っている。

 みなそこのような、白い空間……僕らは、うっとり待っている。


 南天の実が落ちる、おちる。ぱらぱらぽたん、ぱらぱらり……赤い赤い実がたまっていく、ひらいてゆく、花咲いてゆく。


 ふわふわふわと落ちては上がり、みなにあがり、さんじゅの枝をはなれて上へ、うえへ。


 赤いあかい紅玉ルビィの粒が、血のような柘榴石ガーネットのつぶつぶが、桃色ピンク珊瑚コーラルのハートの粒が……。


 あがる、あがる、おちる、ちる、堕ちてはあがる、ひらひらと。


 宝石の粒は種になり、ゆっくりゆっくり花ひらき、たんぽぽになり、すみれになり、桜の花びらはらはらと、ふぅわり浮かぶマリーゴールド。


『……時間だ』

『時間だよ』

『たゆたうフレーズはもうおしまい、歌って舞い踊り、お話をこさえる時が来た』

『上がっておいで、あがっておいで』……。


 ――ああ、時が来た。

 うたえ、踊れ、舞い狂え。しゃらしゃらきらきら、舞い踊れ――。


 宝石とお花と、いちごや黒すぐり、きんかんやら何やらを体じゅうにめいっぱいに飾りつけ……、


 ぼくらは、世界へ手をさしのべる。


(了)

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