軍部への匿名での知識提供の準備
「俺は知識はあるが技術と金がない。
実際に瓶詰めを作るのは無理だ。だからアイデアだけを売る」
エリーはなるほどと頷く
トウヤは巨額の資金という目標を決めると、具体的な行動に移った。彼は、瓶詰め技術の製造法の詳細を、エリーに口頭で説明し始めた。
トウヤは現代の一般知識とこの世界の資源、技術を照らし合わせながら、慎重に手順を構築した。
「エリー、よく聞いてくれ。この技術の核は二つだ。一つは煮沸殺菌、もう一つは完全な密閉だ。そして、この話す内容を貴族らしい書式で書き起こしてくれ。」
彼は、紙と筆をエリーの前に置き、説明を続けた。
「軍や貴族に売り込むのに俺が書いた書簡では、受け取りもしてくれないだろうから」
エリーはその言葉に納得して一言一句聞き逃さないように、書き込んでいく。
「まず、食料を調理した後、清潔なガラス瓶に詰め込む。そして、沸騰したお湯の中で、一定時間加熱する。これで、腐敗の原因となる目に見えない小さな生き物(細菌)を殺す。」
エリーは集中して聞き、
「沸騰した水の中で長時間加熱……。この熱が、腐敗を防ぐのですね。」
「そうだ。そして、最も重要なのが密閉だ。加熱後、熱いうちに瓶の口に二重の布をかぶせ、その上からコルク栓を固く打ち込む。さらにそのコルクの上から、溶かした蝋を流し込み、空気が絶対に入らないように蓋をするんだ。この二重の防御が、長期保存を可能にする。」
エリーは、トウヤの論理的で詳細な説明に、深い感銘を受けた。彼の知識は、この世界の錬金術師の曖昧な概念とは違い、極めて実用的で合理的だった。
「承知いたしました、トウヤ。知識の価値は、提示する言葉によって段違いに変わります。この革命的な技術が、平民の言葉では真剣に取り合われません。」
「わたくしが、大公爵家の娘としての教養と格式を尽くし、この秘術を王国の『 食料問題を解決する秘術』に関して、威厳と確信に満ちた書簡として作成いたしますわ。」
こうして、エリーは高貴な筆致で、トウヤのチート知識を王国の軍部へ売り込むための公式文書を完成させた。
「あとエリーそのまま俺の名前で出すより、仰々しい名前で出した方が効果的だと思う。そこで真の錬金術師 パラケルススという名義で出してくれ。」
(トウヤは錬金術師のこの名前の響きがカッコいいと思ってるので適当に決めた)
エリーはなんて不思議な響きな名前なんだろうと思うと共に、おそらく計画は杜撰だが、トウヤの謎の技術知識には目をみはる物があるので、この作戦に託すことにした。
その書簡は、商人のギルドを通じ、王国軍の最高幹部へとパラケルスス名義で送付された。




