夜の作戦会議
号外による衝撃と、復讐の決意を固めた二人は、その日の夜、カーステンの隠れ家で再びテーブルに向かい合った。公的に「死亡」したことで安全は確保されたが、復讐の舞台を王都の政界に移す以上、情報が不可欠だった。
「エリー。君が『汚名にまみれた亡霊』として王都で動くには、目と耳が必要だ。君の父親(大公爵)が没落した今、君に命を懸けて協力してくれる人間はいるのか? かつての公爵家の側近や、信頼できる侍女は?」
トウヤの問いは、資金と知識では買えない、「忠誠心」という最も重要な資源の所在を問うものだった。
エリーは、一瞬目を閉じた。かつての大公爵家は、多くの人間を従えていたが、断罪された今、そのほとんどが敵か、保身に走っているだろう。
「……側近は無理ですわ。彼らは宰相派の監視下に置かれているか、すでに寝返っているでしょう。ですが、わたくしには、唯一、信じられる人間がいます。」
「誰だ?」
「わたくしの専属侍女だったリリアです。彼女は下級貴族の娘でしたが、わたくしの断罪の際も、最後までわたくしの無実を涙ながらに訴えてくれたと聞きました。彼女は今、実家に戻っているはずですが、わたくしの潔白を信じているはずです。」
忠誠心の確認戦略
トウヤは、リリアが「金銭」ではなく「忠誠心」で動く人間である可能性に、大きな希望を見出した。
「リリア嬢か。分かった。だが、彼女に直接会うのは危険すぎる。君の生存が知られれば、彼女も追われる身になる。まずは、君の生存を悟られずに、彼女の忠誠心を確認する方法が必要だ。」
トウヤは、エリーに「二人だけにしか知り得ない、過去の秘密」を尋ねた。それは、リリアの忠誠心を確かめるための合い言葉であり、「亡霊」からのメッセージとなる。
「わたくしたちにしか知られていない秘密……。ありますわ。それは、わたくしが幼い頃に大切にしていた、白い子猫のことです。公爵家では動物を飼うことが許されず、子猫はすぐに侍女長に知られて、城外の修道院に連れて行かれてしまいました。」
エリーは懐かしく、そして遠い目をしながら語る…
「その時、、悲しむわたくしにリリアは子猫の代わりに、白い毛糸で作った、小さなぬいぐるみをわたくしに贈ってくれたのです。リリアは『このぬいぐるみには、子猫の魂が宿っています』と囁きました。あのぬいぐるみが、あの子猫のことと知っているのは、わたくしと彼女だけです。」
「よし、完璧だ。俺が君の『遺志を継ぐ者』として、リリア嬢に接触する。そして、君の生存を悟られない形で、復讐への協力を取り付ける。」
忠実な協力者の目星をつけたトウヤは、王都の闇に切り込むための最初の刃を手に入れる事にした。




