街に響く号外
翌日。トウヤとエリーは、「兄と病弱な従妹」として、再びカーステンの市場へ出ていた。エリーは慣れない平民の生活を楽しんでいたが、その平穏は一瞬で打ち破られた。
突然、街の広場から、けたたましい鐘の音と共に、号外が流れ始めた。
号外を配る男
「聞け! 王命だ! 大公爵令嬢エルリーゼ、国家転覆罪により極刑に処さる! 逆賊の罪、万死に値する!」
トウヤとエリーは、その衝撃的な内容に、その場に立ち尽くした。
トウヤは、号外の紙面に大々的に書かれた「大公爵令嬢」という文字に目を見開いた。
トウヤはエリーの手を強く握りしめ、混乱しながら
「エ、エリー! 大変だ! 『エルリーゼ』という大公爵令嬢が処刑されたらしい!」
(『大公爵令嬢』!? まさか、エリーの姉妹か!? それも国家転覆罪で極刑!?)
エリーは、周囲を警戒しながら、トウヤの間の抜けた戸惑いに静かに答えた。
「トウヤ……。わたくしです。わたくしの『汚名を口にするのは許されない本名』こそ、エルリーゼですわ。」
トウヤは、自分の目の前の少女が、公的に「極刑に処された国家転覆罪の罪人」となったという、想像を絶する事実に言葉を失った。
「国家転覆罪! 思っていた以上に闇が深い! しかも、公的に死亡したことになったのか!」
エリーが生きて逃げ出したことを黒幕たちに知られることを恐れ、処分を頼まれた仕事人たちが、エリーを途中で確実に殺害したと報告したのだろうと察した。この号外は、黒幕たちが安心して幕引きを図るための、最後の儀式だった。
復讐の旗上げと新たな覚悟
トウヤは、このニュースが二重の意味**で転機になったことを悟った。
1つ目は安全の確保:公的に「死亡」したことになり、追跡は止まる。
2つ目は復讐の大義: 罪状が「国家転覆罪」になったことで、エリーの名誉回復は、王国の腐敗を暴くという大義名分を得た。
トウヤらエリーの耳元で
「エリー。君は、公的に死んだ人間になった。これで、君が動いても、誰も君の生存を疑わない
エリーは冷徹な決意の表情で
「はい、トウヤ。わたくしは、汚名にまみれた亡霊として、いつか王都に戻ります。国家転覆罪による極刑という罪を着せられた以上、わたくしの復讐は、あの王太子とフィオナ嬢を断罪するだけでは済まされません。」
エリーの瞳には、高貴な誇りと、裏切り者への激しい怒りが宿っていた。彼女は、国家転覆罪の汚名を晴らすため、復讐の舞台を王国の政治の中心へと定めることを決意した。




