商業都市への到着と別れ
トウヤとエリーを乗せたロバ車は、数日にわたる旅路の末、目的地の商業都市「カーステン」に到着した。王都から遠く離れたこの都市は、活気にあふれ、王族の追跡の手が及びにくい場所だった。
トウヤは、隊商が都市の門をくぐった後、隊列から離れるタイミングを見計らった。
「隊長さん、本当に助かりました。妹共々、感謝しています。」
トウヤは隊長に深々と頭を下げた。隊長は無言で頷き、「妹さんを大事にしろ」とだけ言って、馬車を先へ進めた。隊長の善意によって旅路の安全を確保されたトウヤは、隊長への真の感謝を感じていた。
「ありがとうございました、隊長さん。」
幌越しに聞こえるエリーの小さな声に、隊長は手を軽く上げ、振り返ることなく隊商の賑わいの中に消えていった。
安全な住居の確保
トウヤは、巨額の資金があるため、すぐに治安の良い区画にある、清潔で目立たない家具付きの一軒家を借りる手続きを済ませた。王都の長屋とは比べ物にならない、安全で快適な隠れ家だ。
ロバ車を運び込み、エリーを家の中へ入れた後、トウヤは深く息をついた。
「ひとまず、これで安全だ。王都からの追跡がここまですぐに来ることはない。これからは、ここを拠点に、君の復讐の準備と俺たちの生存戦略を進める。」
トウヤは、テーブルにこの都市の地図と、王都の貴族関係の資料を広げた。
「さて、エリー。今後の作戦会議だ。俺たちはここで、どうやって力をつけるか。そして、どうやって黒幕を探して復讐するかを、具体的に決めなければならない。」
エリーは、久しぶりに座った貴族的な調度品のある椅子に背筋を伸ばし、大公爵令嬢の顔に戻っていた。
「承知いたしました、トウヤ。わたくしの大公爵家としての知識と、貴方の『神の啓示』の如き知識。その二つを組み合わせれば、王都を揺るがすほどの強い力を、この業都市カーステンから作り上げられるはずです。」
二人は、偽りの兄妹として、王都への反撃の第一歩を踏み出した。




