旅の物資と隠れ蓑の調達
王都からの脱出を決めたトウヤは、即座に行動を開始した。エリーは、追跡の目を避けるため、長屋で待機していた。
「隊商についていく……。その間、わたくしは一体どう身を隠せばいいのでしょう? あの、髪型を変えたといえ王都でわたくしの顔を見せるのは……」
数時間後、トウヤが息を切らせて戻ってきた。彼の背後には、丈夫そうなロバが一頭と、それに牽かれた幌付きの小さなロバ車があった。
「エリー、これに乗るぞ。幌付きのロバ車だ。」
彼は、ロバ車の幌を広げながら説明した。
「これなら、君は常に幌の中に隠れていることができる。そして、身分は『病弱な従妹』という設定で行く。病弱なら、旅の間ずっと車の中にいても、誰も不自然に思わない。」
ロバ車の中には、最低限の寝具と、水筒、そして瓶詰め技術で得た資金で購入した日持ちする食料の包みが既に積み込まれていた。さらに、護身用と思われる地味な短剣も一つ。トウヤは、資金があるからといって派手な物を買うことはなく、すべてが実用性と目立たなさを重視して選ばれていた。
エリーは、その周到な準備に目を輝かせた。
「……感服いたしました、トウヤ。隊商に紛れ込むという発想も驚きですが、幌付きのロバ車を隠れ蓑にし、病弱という設定で身の安全を図るなんて……。貴方の計*は、わたくしのような貴族の常識を持つ者には思いつけませんわ。」
「当然だ。計画なんて大それた物はないが、ノープランだからこそ、最悪の事態を想定して準備だけはできるだけ完璧にするんだ。」
トウヤは自嘲気味に笑ったが、その表情には自信が漲っていた。こうして、二人はロバ車という小さな隠れ家と共に、夜が明けるのを待って王都を旅立つ準備を完了させた。




