反逆の足音 ―“王の側近”による制裁と警告―
ランク5。
それは、学園における“上位層”への第一歩だった。
だが同時に、それは――
“王”の領域に近づく者として、マークされる立場を意味していた。
---
> 翌朝。
教室の空気が、明らかに変わっていた。
「あいつが黒牙……もう、手は出せないわね」
「……怖。ランク5だって。次は誰を潰すつもりだろう」
尊敬でも、畏怖でもない。
恐怖と警戒が、俺の周囲を囲んでいた。
ただ1人――
桐島 澪だけは、いつもと変わらないまなざしでこちらを見ていた。
恥ずかしそうに、でもどこか安心したように。
(……ありがとな、澪)
---
> だが、平穏は長くは続かなかった。
放課後。寮に戻った俺の部屋に、何者かが忍び込んでいた。
黒いフード、仮面、そして殺気。
「黒牙。ランク5までの昇格、おめでとう」
「……誰だ」
仮面の人物は静かに答える。
「王直属の側近、“第七の影”ミラージュ。
あなたの“勢い”が、我々の目に余った」
「ここで一つ、確認しておきましょう」
「あなたにとって――“王”とは、何ですか?」
---
> 俺は、ゆっくりと立ち上がる。
「顔も知らねぇ。名前すら出せねぇ。
そんなヤツに、俺の未来を決めさせるつもりはねぇ」
ミラージュの指が、一瞬震えた。
「……反逆とみなします」
次の瞬間、空間が歪んだ。
見えない刃が、四方から俺に襲いかかる。
(こいつ……空間操作系か!?)
異能の制御すら狂わされる中で、
俺は研ぎ澄ませた本能で、攻撃を“読み”、反撃する。
一撃――
二撃――
三撃目で、仮面が割れた。
---
> 現れたのは、意外な顔だった。
「……あんた、女だったのか」
「……ミラージュ、という名は代々受け継がれるもの」
「私は、ただの“器”に過ぎない」
その瞳には、悲しみがあった。
「黒牙。これが“王に逆らう”ということ。
今なら、まだ間に合う」
「膝をつけ。服従を誓え。
さもなくば――君の“存在”を、この学園が許さない」
俺は黙って立ったまま、ミラージュを睨んだ。
「俺は……絶対に跪かない」
ミラージュの目が、わずかに見開かれた。
そして、静かに姿を消した。
---
> その翌日。
生徒会からの呼び出しも、警告も、何もなかった。
ただ――
教室の席に、神楽美優の姿がなかった。
聞けば、
「家の都合で転校した」とのこと。
(……違う。そんなはずがない)
あの夜、ミラージュの言っていたこと。
そして、この急な“退場”。
(美優は、連れて行かれた……“王の元”へ)
俺は、拳を握る。
**ふざけるな。
今度こそ、絶対に守る。
美優も、澪も、
俺自身の人生も――この手で奪い返してやる。