蠢く影 ―副会長・霧島蓮の動きと、“契約”の予兆―
“力”だけでは、頂点は掴めない。
“牙”だけでは、王の座は遠すぎる。
だからこそ、人は“契約”を結ぶ。
この世界の支配者は――
戦う者ではなく、結びつく者だ。
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> ランク3昇格から、数日。
校内に、静かな騒ぎが広がっていた。
「黒牙、マジでランク3……」
「星乃様が話しかけたあいつが、こんなに……」
「神楽すら味方につけて、次は誰を狙うんだ……?」
――だが、その裏側で。
生徒会は、ついに動き始めていた。
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> 「彼、面白いね」
生徒会室。
静かに目を細める副会長、霧島 蓮。
「力の使い方を知ってる。
名を得て、意味を与えられても、腐らずに研ぎ澄ませてる」
向かいには、生徒会長の姿はない。
代わりに霧島が指示を下す。
「“契約の指輪”を使う時が来たかもしれないな」
それは、学園の“上位者”だけが知る、裏の制度。
「“契約”を結んだ者は、階段を駆け上がる。
けれど同時に、“首輪”も嵌められる」
彼は立ち上がる。
コートを翻しながら、窓の外に目をやった。
「さあ、“黒牙”。
どちらを選ぶ……?」
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> その頃、俺はある噂を聞いた。
「――“契約”って知ってるか?」
教室の片隅、低ランクの生徒たちが噂していた。
「上位者に“気に入られた者”が、契約を結ぶんだって。
ランクを飛び越える代わりに、絶対服従を誓う……」
「星乃も、誰かと契約してるんじゃないかって噂だよ」
背中に、ひやりとした感触が這い上がる。
もしそれが事実なら――
あの微笑みの裏には、“所有者”がいるのかもしれない。
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> 放課後、俺は星乃を問い詰めた。
「お前、契約を結んでるのか」
星乃は、ほんの少しだけ驚いたような顔を見せた。
だがすぐに、ふっと笑う。
「契約って、そんなに重いものじゃないわよ。
ただ、“誰かの物になる”っていうだけ」
「……それでいいのか」
「ねぇ、“黒牙”。
あなたも、契約を持たないままこの学園で生き残れると思ってるの?」
瞳が、突き刺すように鋭くなる。
「私は、“王”になるつもりはない。
でも、王に届く存在は――見ていたいの」
「だから、あなたには“選んで”ほしい。
私のものになるか、ならないか――」
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> その夜。
生徒会から、正式な“招待状”が届いた。
内容は――
「ランク4昇格の推薦、及び“契約”の提案」
ついに、“頂点の手”が伸びてきたのだ。
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> だが。
俺の心は、まだ揺れていた。
“契約”という檻に入ることで、力を得るか。
それとも、自分の牙で這い上がり続けるか。
その答えが、“次の戦い”を決めることになる。