天人と鬼人の物語
天人。それは崇められ、立場が一番高いものだ。そして、鬼人。皆から忌み嫌われ、いじめられる存在。一番上の存在はそれを助けずに見ているのがこの世の中だ。でも、僕はそれを許せなかった。
僕は天人の下で生まれてきた。親にはこの世界のことを色々教えてもらった。でも、一つだけ疑問に思ったことがあった。それは血族と立場の問題だった。鬼人...。それを助けるなと教えられた。親は話すことさえ、辛いような感じで言ってきた。僕はそれだけが、気になった。それを深堀すると親は成長すれば、分かると濁してきた。
○
僕が大人になって、少しだけわかったことがあった。鬼人は僕達の先祖を殺し、この世界の秩序を荒らした。でも、神によって正され、天人は一番上の立場になり、荒らした鬼人は一番下になり、みんなに忌み嫌われるようになったらしい。でも、昔のことをずっと引き継いで今の鬼人を理由にはならないと思った。でも、僕は約束を破れない。
破ったら、死刑。これが心に残ってる。
○
その日は地上に出ていた。人が住んでいる場所と鬼人が住んでいる場所は違うと聞いたが、人里には相当な数と鬼人が居た。その中でも、鬼人の子供すら、奴隷のように扱われていることに怒りを覚えた。
そのとき、僕の腰くらいの身長の鬼人が小さな声で。
「助けて」
と言ってきた。でも、僕が天人と気づいたのか、頭を床に擦り付けながら。
「ごめんなさい。ごめんなさい。」
と謝っている。
「大丈夫。どうしたの?」
僕の反応に安堵したように泣いていた。
「鬼人が殺ろされちゃう。天人に殺されちゃう。」
こんなにも僕を求めてきた人を初めてだった。嬉しかった。約束を破ってしまうかもしれないけど、僕の中で確信できることがあった。目を見ただけでわかった。鬼人は優しい。
「お兄さんみたいな天人は初めてだよ。名前は?」
「僕の名前はベニグヌス。君の名前は?」
「エルピス!」
「エルピス....。いい名前だね。」
そう話してるうちに鬼人が住んでいる場所に着いた。話を聞いたところ、天人が来るのは二時間後に来るらしい。走ってる最中に聞こえてきた。戦争が始まるらしい。
○
僕は鬼人が住む場所に堂々と立って、天人が来るのを待っていた。けど、僕は遠くから見えてくる人に絶句してしまう。
「なぜ..。母親、父親が...。何でこんなことを!」
「ベニグヌス...。何故ここに..。」
「こっちの質問に答えろ!何故、殺す必要があるのだ!」
「これは神からの答えだ!」
両親の返事に僕の中の何かが切れた。僕は両親だと思えなかった。
「あなた達は心の天人じゃない!」
僕は両親を殺した。正しいことをした。けど、強制的に天界に戻される..。死刑が確定した。
「お兄さん..が..殺したの?でも、助けてくれてありがとう...。」
「じゃぁ、約束してくれる?僕を忘れないって。」
「うん!」
これから、僕は死ぬ。殺される。
「僕は天界に戻らなきゃいけないから。バイバイ」
「ありがとう!ベニグヌスお兄ちゃん。一生忘れない。」
「鬼人の皆!希望を忘れるな!」
吐き捨ててるように帰った。
○
天界だ。僕は裏切り者として手錠をつけられ、ギロチンにかけられていた。
「僕も終わりか。この世界はおかしいよ。片方を助ければ、英雄。片方からは裏切り者。そして、天人が約束を破った際。その者が起こしたことは皆の記憶から消される。おかしいよ!」
そう、叫んでも心無い物同然の天人に言っても、響かなかった。
「静粛に。執行せよ!」
これで僕も終わりか。
「エルピス。僕は君が忘れても、心には残ってる。希望を見せて。」
(ザクッ)