第1話
「みなさん、お集まりいただき、ありがとうございます」
よれよれのワイシャツを着た男が話し始める。顎には無精髭も目立つような冴えない風体であり、警察の人間という雰囲気ではなかった。
「あなたは、いったい……?」
疑問を口にしたのは寺川権三。坊主頭が特徴の、四十過ぎの男だった。
「これは失礼。私は明田山智助と申しまして、警部の友人です」
明田山探偵は、チラリと部屋の隅を見やる。そこに立つ奈土力警部が捜査責任者であることは、呼び出された四人も心得ていた。
「素人探偵というやつですか。まるで昔の探偵小説ですな」
「何の権限も持たない、非公式のアドバイザーですか? ならば、あなたの話に付き合う義理はないのですね?」
権三に続いて、すらりとした体型の女性が眉をひそめる。四人の中で一番若い、二十代前半の富山不二子だった。
「まあまあ、不二子さん。そういう言い方は止めましょう。警察の心象が悪くなりますから」
「そうですわね。どうせ私たち、疑われてるんですから」
白い歯を見せた青年、野田武蔵に対して、不二子は一応の微笑みを返す。しかし心はこもっておらず、儀礼的なものに過ぎないのは、誰の目にも明らかだった。
「いかにもな人選ですものね。アリバイはなく、でも動機はバッチリの四人だなんて」
もう一人の女性も口を開く。不二子と背丈は同じくらいだが、年齢も体重も少し上。丸い顔立ちの木南月絵だった。