信じられないクズ
信じられない事に、クズがいた。
信じられない場所に、クズがいた。
まさかこんな場所に、あんな信じられないクズがいるなんて思わなかった。
だって、人の事より自分の命を優先するなんて。ありえない。
俺達、そういう事やっちゃだめでしょ。
いつだって、人の事を考えて生活していなくちゃいけないのに。
この組織に入るとき、そう言われたじゃないか。
ここにいるものは、みんなそう言われてる。
それに実際に、そうあるのが普通の事なのに。
なのに「死にたくない!」とかみっともない事を言って、逃げ出した。
あの人は、とんでもないクズだ。
でも、結果的にあの人が見捨てた人が助かって良かった。
他の人が担当して、助けたから。
良かった、ほんとうに。
あのクズ、あんまり大した事がない腕をしていたから、あいつが担当していたら助かる命も助からなかったかもしれない。
しかしどうしよう。
信じられないほどのクズでも、ここの技術はあまり外に出してはいけないものだ。
どうにか連れ戻さないとな。
この医術組織に。
はぁ、余計な手間をかけさせないでよ。
俺は逃げた。
逃げ続けた。
なんで、みんなあんな目を向けてくるんだ。
たった一度、自分の命を優先したくらいで。
そりゃ、人を助けたいと思って、あの組織に入ったさ。
医者になりたい、誰かの病気や傷を治したいって。
でも、まさかあんな事が行われているだなんて思わないだろ。
自分の命の力を使って魔術を使うなんて。
そんなの嫌だ。
そんな事したらすぐに死んでしまう。
家族や友人ならともかく。
何も知らない人間に、赤の他人なんかに、俺の命をさしだせるわけない。
だから、俺は逃げる続けるんだ。
俺をクズだといってくる、あんなおかしい場所にはいられないから。