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ヒッキー


この世界はクソだ。

毎日毎日うんざりする繰り返しの日々、何も起こらない。僕達が何もしないからってわけじゃない。ただ主人公じゃないだけ。


本がたくさん並んでる。

何回も読んだお気に入りの本だけを詰めた、僕にとって夢の書棚。それを眺める。

することが無いから。


僕には友達がいない。

だからこういう時、一緒にタバコを吸って、お酒を飲んでくれる人はいない。一人だ。どれも一人でできること。寂しいだけ。


いつ何かが起こるんだろう。

いつ魔法学校から手紙が届いて、転生して、トリップして、タイムリープに巻き込まれて、超能力に目覚めて、ダンジョンを探索して、たくさんの友達と冒険する?

いつになったら何かが起きる。いつまで待てば良い。


何も起こらない。

僕は特別じゃないから。

ただ、ここで寝っ転がって、水を飲んでたまにトイレ行って、気が向いたら食事を摂って自殺願望を抑える薬を飲む。これだけ。


特別な力はない。友情も成功も愛も無い。

これ以上何も起こらない事を僕が一番よく知ってる。薬は効かない。死のうと思った。


自殺しようとドアノブにタオルをかけ首括っていると、ふと考えが浮かぶ。勇気を出して、やっと踏み出す一歩がこれで良いのかと。別に自殺である必要はないんじゃ無いかと。正論だ。やっと薬が効いてきたのか。


違うびびってるだけだ玉無し野郎。

でも少しだけ、たった少しだけ希望を持つのも悪くないと思った。死以外の望みはいつもと同じ。


目を瞑って、特別を強く願った。何も変わらなかった。僕はタオルから手を離した。




















おかしいな目が覚めたぞ。

僕は人生に絶望して死んだはずだ。


見下ろすと僕の死体がドアノブからぶら下がっていた。

なるほど。


ゴーストパターンか、悪くない。

僕の死体はグロい。部屋のドアを通り抜ける、強い抵抗感を感じ失敗。


困ったな、部屋から出られないんじゃ話にならない。ドアノブにもどこにもさわれはしないが、通り抜けることが出来ないのは分かった。ピンときた。


なんとなくリビングを想像してみると飛べた。正確には飛んでないんだけど感覚的にはそんな感じ。とにかく瞬間移動に成功した。


ヤバい、ずぅーっと欲しかった特別をこんなに手にしてる幸せすぎる、人生で一番テンションが上がってる。死んでるけど。へへ。


…つまんないこと言うとテンション乱高下。ふと我に返ってしまう。でも薬は必要ない。死にたくなるわけじゃないし僕を悩ませていた問題は死んで解決した。最高。


リビングは悲惨だ、何があったんだ。

食事と三日に一回の風呂以外でリビングに近づくことはなかったが、常に整頓されていたはず。見渡すと、棚という棚から物が落っこちて床板にも若干亀裂が見受けられる。どした?


窓から外を覗く。えぐい。


瞬間移動で出ようかなとも思ったけど、カーテン開けたら日差しがきつかった。クソ。

てか僕マジで死んだのかな。誰にも見られないなら外に出たいような気もする。


外はぐっちゃぐちゃのめっちゃめちゃだった。


まず人間の足が転がってる。見間違いだったら良いなと思います。あと電柱が一本倒れてて電線の下に人が死んでる。なんとなく死んでるって分かる。幽霊だから分かるのかな。また超能力手に入れちゃった。てへ。


コンクリが液状化して家が倒壊しまくってるんだけど、その下敷きになった死にかけの人と死んだ人が結構いるっぽい。これもユウレーダーで察した。草。


極め付けは豚が棍棒持って歩いてる。面白すぎんだろ。僕が死んでる間に何があってこうなったんだ。ラノベなら大事なシーンなのにそれ見逃すのもマジで草。さすが僕。持ってないねぇぇ〜〜!


これでやっと僕のターンって感じ??

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