序章 浮遊大陸-ファンタジア-への旅立ち
本作は作者のなろう初投稿の作品になります。
ゲーム用語、ロボットネタなどが多い場合があります。
また、本作は【なんちゃってVRMMO】なので、本格的な【VRMMO】や、完成された【VRMMO】を読みたい方、苦手な方はこのページを閉じて本作を切り、他の方の楽しい、面白い作品を探してください。
それでもよければ、拙作をお楽しみください。
(序章含め、四話ほど連続で投稿する予定です)
「さて、初期設定始めますか」
六畳一間の床に所狭しと置かれたゲームの数々。それらを脇に追いやって、小さめのテーブルを出してカタカタとキーボードを叩いていく。
今の時代、音の鳴るキーボードは時代遅れと言われているが、私はこの音が好きだ。なんでかって訊かれると答えに困っちゃうけどね。まあ、何となくよ。何となく、この音が好きなだけ。
モニターに映っているのは、剣と盾を手にした冒険者風の男性と、空高くに浮遊する大陸が描かれたイラスト。その中央にはデカデカとしたロゴが貼り付けられている。
――FreedomFantasiaOnline。通称、フリファン。古今東西のあらゆるゲームを過去の遺物にしてしまったスターリバー社の話題作。200倍を超える高倍率なベータテスターの募集。そして、幸運にもそのゲームのベータテスターとなれたプレイヤー達からもたらされた情報は、あらゆるゲーマーを震撼させた。
フリファンは催眠誘導式のフルダイブVRMMORPGだ、と。
時代が進み、ヘッドディスプレイ式のVRゲームが当たり前になった昨今でも、妄想の産物であったフルダイブVRMMORPG。自らの身体を動かし、モンスターと戦い、ゲームの世界を冒険する。数多くのゲーマーが魅せられたその世界は今や、現実のものとなった。
一万人のベータテスターに配られる一万本の他に、初期生産ロットのVRギア、及びパッケージソフトが四万本。
その、戦争と呼ぶにはあまりにも生温い予約大決戦を勝ち抜いた一人が私、琴宮紫音だ。
小さい頃からゲームに触れてきた私は、高校生になった今では重度の廃ゲーマーとなってしまった。女を捨てたとまではいかないけど、高い化粧品を買うより面白いゲームを買った方がいい、なんて思考に行き着いてしまうあたりもう手遅れなのだろうか。
そんな、俗に言う廃人な私だけど、フリファンの予約に踏み切ったのはそれだけが理由じゃない。
それは、兄さん(ベータテスター)に見せられた一枚のスクショだった。
「そう言えば紫音ちゃん、ロボットとか好きだったよね?」
その一言と共に、眼前に映る楽園。先ほどは自分のことを廃ゲーマーだと紹介したけど、私にはもう一つの顔がある。
そう、ロボットオタクの顔だ。
日本のロボットアニメ文化は最高だ。この点だけで、この国に生まれてよかったとさえ思えてしまう。
今の時代でも大人気な機動する戦士のロボットや、神にも悪魔にもなれる魔神でZのスーパーなロボット。物理法則を完全に無視した変形合体ロボットなど、色んなロボットが好きだ。もちろん、数多のロボットアニメが共演する夢のゲームもやり込んだ。
そんな廃ゲーマーでロボスキーな私の目の前に、夢にまで見たフルダイブVRMMORPGであり、人型ロボットが存在していて、それを自由にカスタマイズ出来るゲームとなれば……あとは、分かるな?
ええ。その時にはもう予約を決意しましたよ私は。ベータテスト時に不遇種族だったとか、剣と魔法の世界なのに魔法が使えないとか、ファンタジーなのにロボットはどうなん? とか、そんなことはどうでもいいんです。そもそもファンタジーでロボットな作品なんて沢山あるしね。私は絶対に、このゲームで理想のロボットを創り上げてみせる!
そう決意して、今に至る、と。正式サービス開始は今日の正午。あと二時間ほどでゲームが始まる時間だ。
ほどなくしてゲーム開始前の初期設定を終えた私は別のウィンドウを立ち上げ、フリファンの公式ページを開く。そのページにはゲーム開始時に取得できるスキルや、種族ごとの特徴、ゲームの世界観などが分かりやすく表示されている。
フリファンの舞台は、なんと浮遊大陸。世界には幾つもの浮遊大陸が存在しており、プレイヤーはその浮遊大陸を渡り冒険するといった内容だ。サービス開始時には一つの浮遊大陸しかないものの、これからのアップデートでかなりの数の浮遊大陸が追加されるという。
そんなフリファンの世界には主に七つの種族が住んでおり、私たちプレイヤーはこの七種族から一つの種族を選んでゲームを始めることになる。
その内訳は、人間、獣人、エルフ、ドワーフ、翼人、魔人、魔機人といった感じ。
それぞれの種族に対応する種族スキルが必ず一つ存在し、種族によっては更に初期から所持しているスキルが存在する。人間であれば《人間》という種族スキルがあり、それ以外の初期スキルは存在しない。獣人だと《獣人》という種族スキルがあり、さらに追加で《獣身体能力上昇》という初期スキルを所持している、といった感じ。この初期スキルはその種族でしか獲得出来ないスキルとなっていて、種族を選ぶプレイヤーはこの種族特有のスキルと汎用スキルを考えて選ばなければならない。
私はその中の魔機人……魔機人と呼ばれる種族を選択する予定だ。魔機人とは読んで字のごとく魔力で動く機械の人形。つまり、魔力を動力源とする人型ロボットだ。兄さんから見せられたそのスクショには、その魔機人が映っていた。
魔機人の初期スキルは種族スキルである《魔機人》に、《武装》《パーツクリエイト》《自動修復》《自動供給》の計五つのスキルからなる。詳しい内容はゲームが始まってから確認すればいいかな。
ちなみにゲーム開始時に所持できるスキルは十個までとなっており、この数には種族スキルや種族初期スキルも含まれる。魔機人ならあと五つスキルを選べるわけね。人間だと種族スキルが一つで種族初期スキルがゼロだから、九つ全てを自由に使えるとのこと。ソースは兄さん。
この十個という制限はあくまでも開始時の取得できるスキルの個数で、ゲームが始まったらスキルの取得個数の制限は無くなる。種族によって取得できるスキルが違うらしいけどね。
私の選ぶ魔機人は、魔法系スキルが軒並み取得できず、ベースとなる種族レベルも存在しない。まあ、肉体を持たない機械の体だから肉体的な成長が無いって言うのは当たり前ね。魔法系スキルが取得出来ないのは、動力源となる魔力と自身の放つ魔法の魔力が干渉して動作不良を起こしてしまうから、という設定らしい。あくまで自分の魔法に干渉してしまうってことで、他人の魔法でおかしくなることはないみたい。ここら辺の種族性能は種族スキルである《魔機人》に含まれているから後ほど確認ね。
ある程度取得するスキルに目星をつけた私は、部屋の片隅に置いてあるベッドに座り込む。枕元に置いてあったフリファン専用機であるVRヘッドセットを被り、横になる。
公式によれば、サービス開始二時間前くらいからアバターの作製などのゲームの初期設定が可能になるとのこと。私は頭部のVRヘッドセットの電源を入れ、軽く深呼吸。
「Freedom Fantasia Online、起動」
『登録者による声紋認証完了。これよりアプリケーションソフト、Freedom Fantasia Onlineを起動します』
機械的な音声が聴こえ、私の意識はゲームの世界へと旅立つ。これから待ち受けるであろう大冒険に、胸の鼓動を高鳴らせながら。
よろしければ、続きも読んでいってください。