わたくし、悪役令嬢ではございませんので(短編版)
※とびらの先生主催『あらすじだけ企画』参加作品です。
ですので、内容は冒頭からエンディングまでのあらすじ「だけ」ですので本文はありません。ご注意ください。
ある王国には、男爵以下の下位貴族の子弟として、上位貴族のもとに二年の間行儀見習いとして住み込む決まりがある。血縁や領地、派閥などによって派遣先は様々だが、女子は家事使用人、男子は護衛として、それぞれ派遣先の子弟に仕えるのが一般的だ。
十五歳の誕生日を迎えたアルミオも慣習に従い護衛として侯爵家へと派遣されるが、大きな不安を抱えていた。侯爵家は当主の評判が悪いのもあるが、一人娘でありアルミオの護衛対象であるクレーリアには、死体を弄ぶ趣味があるとの恐ろしい噂があったからだ。
恐る恐る侯爵家を訪ねたアルミオは、早速死体解剖の現場を目の当たりにしてしまい卒倒してしまう。さらには侯爵家が有する広い敷地の一部を使って死因や環境による死体の腐敗状況を調査する実験なども行っており、毒物の研究なども進めているという。
しかしながら想像以上に恐ろしい令嬢だと感じたのも最初だけで、クレーリアが単なる嗜虐趣味というわけではなく学術的な理由があってのことだとアルミオは次第に理解していく。クレーリアはどこで習ったわけでもなく医学的な知識を有しており、領内で変死体が発見されると率先して検死を行い、自殺に見せかけた殺人を見抜くなど見事な腕前を見せ、領内の治安維持活動を行う兵士たちに教育を施すなど領内の治安に大きく貢献していた。
アルミオはある日クレーリアが「まるで悪役令嬢のような扱いをされているけれど、そんなつもりはないの」と語るのを聞くが、言葉の意味がよくわからなかった。だが、彼女が世間の評価とはまるで違う中身の人物なのだと興味が出てきた。
さらには友人である貴族令嬢たちからも尊敬を集めており、アルミオは彼女について噂は信用できないと知り、故郷の婚約者にも誤解だと説明する手紙を送った。
しかし、そんな彼女を煙たく思っている勢力がいるようで、あからさまに侯爵領の乗っ取りをたくらむような縁談が舞い込んできたり、死体牧場が荒らされたりなどの被害も発生していた。
そんな折、体調不良となった侯爵の代理として領内視察を行った帰り、クレーリア一行は賊に襲われ、アルミオや友人たちと共に森の中で護衛団からはぐれてしまう。
刺客に追われ、夜には獣の危機に怯えながら森を抜ける間、アルミオは気丈なクレーリアが弱音を吐くのを聞き、彼女も一人の少女なのだと改めて考える。
アルミオの勇気とクレーリアの機転で刺客を倒すことに成功し、尚且つ刺客の解剖を行うことで「ある事実」が判明。
森で見つけた証拠を屋敷へ持ち帰ったクレーリアは、侯爵家当主である父親の体調不良の原因が森で密かに育てられていた植物によるもので、全ては屋敷に努める執事が原因であると突き止め、執事を拷問して当主の政治上のライバルにあたる同国の侯爵が黒幕であるとわかった。
父親の解毒を行い、回復の兆しが見えたことでクレーリアは一安心し、王城へと向かった。
高位貴族同士の諍いは王の眼前で行われる。刺客の解剖で得た食事内容などグロテスクな話題ながらも理路整然と状況を伝え、非を鳴らしたクレーリアに対し、ライバルの侯爵はまともに反論することが出来ず、事態の調査が完了するまで登城を禁止され王都の自邸にて謹慎処分となった。
王はクレーリアの聡明さを認めつつ、有力貴族を完全に敵に回したことを憂慮し、護衛の派遣を提案するが彼女はこれを拒否。ただ王からの監視役だけを求めた。
翌日の夜、王都の自邸で休んでいたクレーリアたちを、謎の集団が襲撃する。アルミオは敷地内に先行してきた刺客たちから彼女を守護するが、なぜか常にいるはずの側仕えの姿も無く危機に陥る。しかしクレーリアは落ち着いていた。
とうとう屋敷の門が破られて敷地内に敵の主力が入りこむと、クレーリアは合図を出して門の守備兵を下がらせた。
わざわざ敵を誘いこんだ彼女の狙いはすぐに判明する。側仕えを伝令に出して呼び寄せた友人たちの私兵が敵集団のさらに外から包囲突撃を行い、屋敷の地下からも同様に味方の主力兵団が出撃。敵をあっという間に殲滅してしまう。
クレーリアの知識で自身や家族を助けられたという貴族たちの協力により、捕縛された敵集団がライバル侯爵の手によるものと判明。謹慎は撤回され身分をはく奪し、処刑されることとなった。
王と共に侯爵の処刑に立ち会い興味深げに見学していたクレーリアに王が疑問を口にした。
「噂に違わぬ特殊な趣味と技能だが、人望は厚いようだ」
クレーリアは答える。
「わたくし、悪役令嬢ではございませんので」
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