第一章 朝のニュース
ウイルス感染で死んだ人数が50万人を超えたと朝のニュースで美女のアナウンサーが言った時、貴志は思わずシリアルに注いでいた牛乳をこぼしてしまった。
50万人…。それも、そのうちの4分の3が東京であるという。これは、かなりの驚きだ。
「京香、ちょっと来てくれ。」
た貴志は慌てて、皿を洗っている京香を呼び出した。
「何、どうかした?あら、服に牛乳がついてるじゃない!すぐに着替えて!」
「そ、それどころじゃないんだ!50万人を超えたって、死んだ人が」
そう貴志が言うと、京香は目を丸めて、口も開けて
「え!!」
と驚いた。人間が本当に驚くとこんな顔をするのだと、改めて認識させられた時だった。
貴志が住んでいる、東京都S区は特に感染者が多く、東京感染者の半分がこの区の住人なのだ。しかも、4階建マンション。マンション。もう感染していないことが奇跡的である。
「そうだ!このマンションで、感染していた人って何人いたっけ?」
貴志が、また慌てた口調で京香に尋ねる。貴志は、いつも慌てると一点しか考えられないタイプだった。
「えっと、このマンションでの感染者は…」
京香が必死に思い出そうとする。京香は考え事をする時、いつも左耳のホクロを触る癖がある。これは、貴志と出会った頃からある癖だと言う。
「あ、そうだ。管理人の赤田さん。あの人感染してた。でも、感染した時には辞めてたって。他の人はみんな田舎に行ってていないからわからないけど、当分帰ってこないと思うから大丈夫じゃないかな?このマンションは。」
そう京香は流長に喋った。感染者はいないだけで、とりあえずこの405号室から出なければ安心だと言うことが分かったが、買い物はまた面倒になるだろう…。
「あそこのスーパーも、当分行くのやめよっかなぁ…。」
そのような事で、貴志と京香が慌てていると、
「おはよー。」
と、季子が起きてきた。眠たい目を擦って、クマのぬいぐるみを片手に京子の所へ近づいてきた。
「ママ、ケンジくん家のワニの名前ってなんだっけ?」
と京子に尋ねている。京子は、少し呆れてた表情で
「はいはい、お顔洗って、ご飯食べなさい。」
と言う。季子の寝言もいつも通りだ。ちなみに、季子の友達にケンジくんという子は、いない。言葉を覚えたくらいの頃から、季子は毎朝ほとんどの確率で寝言を言うようになった。まったく、誰に似たのやら…。




