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家電転移~永久名誉店員になった俺は家電の能力(チカラ)で異世界を救う~  作者: 宮地拓海


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16話 仲間に加わった、仲間に加わった ―2―

「ところでさ、アミューって女神の使者の助手じゃなくて、女神だったのね」

「「な、なぜそれをっ!?」」

「えっと、アミューとアキタカはさ、二人揃ってバカなの? それともあたしをバカだと思ってるの?」


 マーサが事の真相に辿り着いてしまったようだ。


「隠す気があったの、あれで? めっちゃ普通に女神って言ってたし、女神魔法使うし、アキタカは完全にアミューを女神扱いしてるしさ」

「いやぁ……なんかもう、アキタカさんとのやりとりに慣れ過ぎてしまって、つい……」

「まぁ、バレちまったんならしょうがないか。そうなんだ、実はアミューが女神本人なんだ」

「……ふふふ、私は知っていた」


 なんでか得意満面のキティ。

 突然現れた自分の知らない、けれど俺たちのことを知っているらしいマーサに対する親密度アピールなのだろうか。

 負けず嫌いか。


「なんであたしには秘密にしてたわけ?」

「あまり大っぴらに知られるのはマズいといいますか……」

「ふぅん……まぁ、いいけど」


 と、全然納得していない風にマーサは唇を尖らせる。


「でも、今度こそ全部話してくれるんでしょ?」

「そう、ですねぇ……」


 ちらりと、こちらに視線を寄越してくるアミュー。

 俺に答えを求めるなよ……まぁ、こうなったら仕方ないんじゃないか。

 頷いてみせると、アミューはほっとした表情を見せてマーサに向き直った。


「女神といっても、今ここにいるわたしが世界を見守っているわけではないんです。わたしでありわたしとは異なる女神が、現在もこの世界を創造し、育み、見守っているんです」

「ん? どういうこと?」

「アミューはたまに、ちょっと小難しいことを口走って頭がいいアピールしたくなる残念な人……察してあげて」

「わたし、残念な人じゃないですよ、キティさん!? その気遣い風な発言は逆にわたしを傷付けますよ!? 事実ですからね!?」


 キティがなんだか妙に優しい顔をしている。――のが、アミューを傷付けている。

 これは素なのか、高度な弄りなのか……キティ、読めない娘だ。


「あ~、要するにだな。女神は人間とは何もかも異なる次元の存在なんだよ。だから、このアミューも女神だし、今この世界を見守っている女神もまたアミューであると言えるんだ。……分かりにくいかもしれないけどな」


 俺の説明を受け、マーサもキティも、なんだか分かったような分かんないようなといった顔をしている。

 まぁ、俺自身はっきりとは理解出来ていないわけだし、仕方ないだろう。


「つまり、アミューは二人いるの?」

「いえ、わたしは一人なのですが、でも、この瞬間にわたしは複数いるとも言えます」

「え……っと、つまり、どういうこと?」

「アミューはたまに、ちょっと小難しいことを口走って頭が……」

「それさっき聞きましたし、さっき否定しましたよ、キティさん!? 少ないバリエーションで的確にわたしの心を抉るのやめてください!」


 やはり、完全に理解するのは困難なようだ。

 人は神の領域へはたどり着けないものなんだなぁ。……俺もよく分かんないし。


「なんとなく感じてくださればそれでいいです」

「なんとなく、ね」

「はい。わたしとこの世界の女神は、同じ存在と言いますか、分身体と言いますか、同じ魂を共有する者と言いますか……とにかく、そういった存在なんです」


「ん~……」と、息を漏らしながら緑色のボブカットをわしゃわしゃと掻いていたマーサだが、自分の中に落としどころでも見つけたのか、メガネを押し上げてうんうんと頷いた。


「まぁいいわ。女神なんだけど、でもアミューなんでしょ? なら、それでいい」

「マーサさん……。はい。わたしは、わたしです」

「それに……いきなりアミューが女神だって言われても、敬う気持ちとか一切湧いてこないし」

「なんでですか!? わたし女神ですよ!? 自然と敬いたい気持ちが湧いてきませんか!?湧いて………………きてない感じですね、むぅぅぅうう!」


 女神だろうがなんだろうが、アミューはアミュー。

 そういうことで決着がついたようだ。


「アミューはもとより、アキタカのこともちゃんと見ててあげないと、危ないわよね」

「私もそう思う。アキタカは……、自分では出来ているつもりの隠れ天然」

「そう! そうなのよね」

「女神の情報は、主にアキタカから漏れてくる」

「まったく、世話の焼ける男よね」

「そう。……目が離せない」


 なんか、言われ放題言われている気がする……


「アキタカさん……ぷぷっ、ぐぅの音も出ませんね」

「お前ほどじゃないとは思うんだけどな」


 目くそのくせに鼻くそを笑うな。


 けどまぁ、結局マーサはマジで俺たちに同行するつもりのようだし……折角だから見張っていてもらおうかな。この世界でいうところの世間からズレちまってる俺たち二人を、な。


「それじゃあ、『女神の分裂』を使ってから帰りましょう」


 え……?


「使ってから、帰る……のか?」

「え、帰ってから使いたいですか?」

「アキタカ……。アキタカは、あの踊りをみんなに見せたいと、そう思っているということ?」

「そういうことじゃねぇよ!」


 なにちょっとした理解者ポジションぶってんだよ。

 えぇい、優しくも生温かい目で俺を見るな!


 しかし、そうか……ここでやっていかなきゃ、また衆目にさらされることになるのか。あの黒歴史確定の謎ダンスを。

 かといって、ここでって…………


 知り合い数人の前でやるのも、それはそれでキツいぞ?

 大人数なら割りきってやれることも、少人数だと、こう……いたたまれない空気が…………


「なによ、アキタカ。何かするなら早くやりなさいよ。ウチのナースも暇じゃないんだから」


 どうやら、ナースたちはマーサを送り届けたのち診療所へ帰るそうだ。

 なら、あのナースたちにニャーミックスを持たせてやらなければいけない。

 そもそも、最大MPよりも多いMP残量なんてバグみたいな状態、いつまで続くか分からない。

 やるなら……今か!?


「分かった。やるよ……ただし! …………俺の本意じゃないからな?」


『女神の分裂』を知らないマーサにしっかりと断りを入れておく。

 急に変なことをし始める変態などと思われたら堪ったもんじゃないからな。


「すぅ~…………はぁ~…………」


 あぁ、気が重い。


「……『女神の分裂』……!」


 そう唱えると、システムボイスが俺の脳へと語りかけてくる。

 俺の脳だけに。

 外にも聞こえてりゃいいのに……



【女神魔法『女神の分裂』の発動を確認しました。こちらの指示に従って儀式を実行してください】



 きたきた。

 きたよ……



【増やしたい女神の遺産を所持している者の肩に手を置いて、『君の瞳はチャ~ミング(裏声)』と、歌うように】



 方向性変わってない!?

 膝の皿が有田焼とか国宝級とか、そんなんだったよね、この前!?



【『女神の分裂』の呪文は全部で512種類あります】



 増えてるよね!?

 前回128種類とか言ってたよね、たしか!?

 お前が考えてんじゃないだろうな、この呪文!?



【システムボイス faet. AKITAKA】



 音楽プロデューサー気取りか!?

 作詞作曲のつもりか、さっきの(裏声)とか膝の皿が!



【呪文を拒否する場合、魔法はキャンセルされます】



 きったねぇ……こいつ、性根がねじくれまくってやがる。

 ……分かったよ。やるよ。やればいいんだろうが!


 とにかく、ニャーミックスは必要で、ナースたちは早く診療所に帰らなければいけない。

 だから、ここで俺が照れたりまごついたりしているわけにはいかない。そうだ。仕方ないんだ。


 腹を決めて、マーサの肩に手を載せる。


「マーサ……」

「へ? な、なに?」


 肩を震わせ、突然のことに目を白黒させるマーサ。

 ……あぁ、そんな赤い顔をしないでくれ。こっちまで照れるし……罪悪感がハンパない……


「これは、一種の儀式で、本心じゃない。くだらないギャグかなんかだと思ってくれればいい……っていうか、極力気にしないでくれ」

「は? え? なに言ってんのよ……ってか、顔……近いって……」


 く……っ、そんなに盛大に照れないでくれ。

 俺の意思じゃないんだ…………うぅ、やりにくい。



【魔法、キャンセルですか?】 



 うっさいな!

 今やろうとしてんだろうが!

 …………えぇい、くそ!


「あ、あ~…………こほん」

「ねぇ、アキタカ。これって一体なんのマネ……」

「君の瞳はチャ~ミング(裏声)」

「ふぁっ!?」


 マーサの顔が真夏の太陽のように赤く輝く、照りつけてくる。熱い……っ!



【『交わす言葉はデスティニー(いい声)』】



「……交わす言葉はデスティニー(いい声)」

「な、なに言ってんのよ、急に!? ば、……ばかなんじゃないにょ!?」


 ホント、バカなんだと思う……システムボイスが。

 で、噛まないでくれ。恥ずかしさが増す……!



【『オイラの心は迷子の幼いカエルさ(うぉう、いぇ~)』】



 ブレてきたぞ!?

 声の注文じゃないのが混ざってきたんだけど!?

 で、幼いカエルはオタマジャクシだ!



【……え? 魔法キャンセルですか?】



「オイラの心は迷子の幼いカエルさー!(うぉう、いぇ~)!」


 やるっつってんだろ!

 ここでキャンセルなんかされたら、俺がただうわ言呟いただけになっちまうだろうが! 結果が必要なんだよ、こちとら!

 最終的に「コレのためにやったことなんだよ」って名分がな!


 ほら、続きを教えろよ!



【……え~っと】



 完っ全に今考えてるよね!?

 さてはこの呪文、すでに512個あったヤツの後に考えた513個目のヤツだな!?

 最新作だろう、実は!?



【『にゃん♪ にゃん♪ へぃ!』】



 思いつかないならやめちまえ!



【魔法をキャンセ……】



「にゃん♪ にゃん♪ へぇぇえええい! これでいいんだろうが!」



【…………ぷっくく】



 俺はいつか必ずお前をぶっ飛ばす!


「あ、あのっ、アキタカ…………その……」

「あぁ、悪かったなマーサ」

「素敵なポエム……嬉しいんだけど、あたし、まだそーゆーのは……」

「ちょっと待って!? 素敵なポエム!? えっ、どれが!? なにが!?」


 マーサの顔が茹で上がり、きっと脳みそが茹だってまともな思考が出来なくなっているのだ。

 お前の罪は重大だぞ、システムボイス!


「違うんだ。これは『女神の分裂』の呪文で……」

「アキタカさん……たらしです!」

「……こまし」

「たらしとかこましとか、不名誉な三文字の呼び名を付けんじゃねぇよ!」


 お前らは一回見てるだろう、このくだらない呪文を!

 こういう時こそ率先してフォローしてくれよ!


「と、とりあえず……まずはお友達から……で、いいかしら、……迷子のオタマジャクシさん?」

「やめてっ!? そんな恥ずかしくも不名誉なあだ名で呼ばないで! 俺の本心じゃないから!」


 つか、いつ魔法発動するんだよ!?



【あ、忘れてました。魔法を発動します】



 忘れんな、一番大事なとこ!

 つか、お前のさじ加減一つなのか!?

 何から何まで欠陥魔法だな、これ!?


 とにかく、これで増やせるわけだ。

 いきなり増えて落下したら大変だから、とりあえず地面に置いてもらうか


「マーサ、ニャーミックスを一回地面に……」


 と、言いかけたところでアレが来た。

 全身の血液が一気に抜き取られるような虚脱感。

 魔力が消費された時の倦怠感。抗えない脱力感。


「ぅあ……」

「ちょっ!? アキタカ、どうしたの!?」


 激しいめまいに、俺はぶっ倒れそうになって――目の前にいたマーサに覆い被さるような格好で倒れ込んでしまった。


「ちょぉぉおーーーーっとぉお!? アキタカっ!?」


 これもう、端から見たら押し倒してるようにしか見えないよな……

 けど、力が…………もう………………


「やだ! あたしまだっ…………まずは交換日記からぁあ!」


 違うから……そうじゃないから……つか、古風だなマーサ。


「アキタカさん」

「アキタカ」


 俺の両腕を抱えて引き起こしてくれるアミューとキティ。

 おぉ、すまん。助かった。


「「ジゴロ」」


 まだ続くのか三文字シリーズ!?

 っていうかさぁ、お前らには状況理解能力ってもんがないのか? ねぇ、ないの? マジでないの?

 なさそうだなぁー、もう!


「あ、ニャーミックスが増えてる」


 遠退く意識の中で、マーサのそんな言葉を聞いた気がした……が、なんかもうどうでもいい。

 目覚めてから真っ先にするのは、この事態の弁解か、こいつらの説得か、こいつらへの説教か、何にしようかと考えながら俺は意識を手放した。


 ……たぶん、説教になると思いながら。






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