表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家電転移~永久名誉店員になった俺は家電の能力(チカラ)で異世界を救う~  作者: 宮地拓海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

46/114

12話 ぽんちゃん効果 ―4―

 ステータス石版から下りて、地面へと座る。

 楽な体勢でいるとMP回復量が上がるのかという実験だ。――結果は、変化なし。

 先ほど、立って抱っこしていた時とほぼ同じ、十二秒ほどでMPが1回復した。立っていても座っていても、抱っこでも膝の上に載せていても、回復量は変わらない。


 膝の上でくつろぐぽんちゃんを見ながら、これ以上の速度アップは無理かなぁ~なんてことを考える。

 まぁ、回復してくれるだけありがたいと思うべきだろう。


「ありがとな、ぽんちゃん」

「ごろごろ……」


 感謝の気持ちを込めて喉の辺りを撫でてあげると、ぽんちゃんはネコのように喉を鳴らした。


 その瞬間。

 MPがグングン回復していった。

 二~三秒でMPが1回復するほどの速さで。


「アキタカさんっ、MPがにょりにょり回復しています!」

「あぁ、そうだな。その擬音はちょっとどうかと思うが、回復しているのは本当だな」


 アミューの中では、MPというものがどんな素材で出来ていることになっているのか。どんな肌触りならにょりにょりなんて音になるのやら……


 それよりもMPだ。

 ぽんちゃんが喉を鳴らした途端に回復速度が跳ね上がった。五倍から六倍ほどに。

 そういえば、ネコ科の動物は、骨折したりすると喉を鳴らすのだという。あの「ごろごろ」には、傷の回復を早める効果があるとかなんとか。

 有名な野球選手が骨折した際に、あの「ごろごろ」の周波数の音波だかを使って治療したというニュースを子供の頃に聞いた記憶があった。

 そういう感じなのかもしれない。


「すごいですね、ぽんちゃん。最強の助っ人じゃないですか」

「あぁ。ぽんちゃんさえいれば、女神魔法が使い放題だ」


 女神魔法は人々を困難や苦境から救い出す力を秘めている。

 さすが神獣。女神の意思を汲み取った素晴らしい能力を持っているようだ。


「これなら、完全回復もすぐだな。アミュー、今どれくらい回復してる?」

「はい…………あ、画面が消えてます」

「なにぃ!?」

「一分間何も操作しないと、自動で電源がオフになるんでした」

「くぅ……っ、消し忘れ防止の便利な機能めぇ!」


 家電というものは、便利になると逆に不便を感じる不思議な物である。

 昔の、ちょっとアナログな『なぁなぁ感』が使いやすかったのに……なんてことはままあることだ。

 俺もお客様に「この機能外せ!」と、何回言われたことか……

 どこかのメーカーが何かの最新機種を作るたびに「前の方がよかったのに!」というクレームをもらっていた。

 その気持ちはよく分かる。が、店員に言われても対応のしようがないことも分かってほしい。


 そんな店員の悲哀や憂鬱もすべて理解した上で言わせてもらう。


「余計な機能をつけやがって!」


 ずっとつけっぱなし出来ればいいのに!

 いらなくなったら自分で消すからさぁ!

 ……起動するまでの時間って、使用頻度が高いとどうしても煩わしくなっちゃうんだよなぁ。そういうとこ、メーカーの人は分かってくれないんだよなぁ。


「えっと、最後にチラ見した時は、残りMPが40ちょっとでした」

「40ちょっとか」

「アラフォーです!」

「いや、言い直さなくていいから」


 それじゃあ俺が四十代のオッサンみたいじゃねぇか。まだ二十代だよ。


 まぁとりあえず、40以上は回復しているわけだ。

 なら、20ほどMPを消費しても倒れることはないだろう。……たぶん。


「アキタカ。馬車の準備が完了した」


 こちらの検証が一通り終わったタイミングで、キティが戻ってくる。

 実にナイスなタイミングだ。この娘はとても空気の読める子だ。何かとタイミングが合う人間といるのは非常に心地よい。好感度が無条件で高くなるね。


「よし。アミュー」

「はい」

「もし俺が倒れたら、馬車に放り込んでぽんちゃんを腹の上に乗せておいてくれ」

「へ? 倒れたら?」


 女神の使者は、この世界の人間の悩みを解決するためにここへ呼ばれたのだ。

 あんな、泣き腫らした目をした女性たちを放っておいていいわけがない。

 俺にも、女神の使者としての自覚が芽生えつつあるのだから。


「『女神の装具』っ!」


 ごっそりとMPが持っていかれ、体が極端に重たく感じる。

 が、意識が飛ぶほどではなかった。

 なんとか堪えた。

 ようやく……少しは、慣れてきた……かな。


「これで、また動画が撮れるぞ。……今度は、計画的に撮影しろよ」


 激しい疲労感のなか、その苦労と引き換えに手に入れたSDカードをアミューに手渡す。

『ファミリー撮っちゃお』での動作保証がされている最大容量、512GBのSDカードだ。1TBがきちんと反応してくれるか、自信がなかったからな。


「ア、アキタカさん……そんな、ぼろぼろのくたくたのぷにゃんぷにゃんな体で……」

「なんかお前の擬音、ちょいちょい『半生』っぽさが出てくるよな?」

「すごく嬉しいです……けどっ、やっぱり受け取れません!」

「受け取れよ! 出すだけ出して使われないって、ただのムダ骨だから! お願いします、使ってください!」


 変なところで遠慮すんじゃねぇよ。


「アキタカさん…………ありがとうございます!」


 SDカードを大切そうに両手で握りしめ、勢いよく頭を下げるアミュー。

 そして、SDカードを握った拳を天高く突き上げて声高らかに叫ぶ。


「これでネコ動画が保存出来るぞぉー!」

「「「「ネコ動画ー!」」」」


 SDカード内容量飽和危機対策委員会のメンバーが声を揃えて吠え、天を仰ぎ見る。

 大地に膝をつき、手を組んで、女神に祈りを捧げるように――


 で、神獣のことはやっぱネコ扱いなんだな、そーゆー認識なんだな、お前ら全員。


「アキタカ……」


 歓喜の声を上げる村の女性たちを見やりつつ、キティが困惑したような顔で俺に注意を寄越してくる。


「あの……、この村には神獣様信仰が根付いているから、新興宗教の流布は控えてほしい。争いの火種になりかねない……から」

「あぁ、うん……一応、アレ神獣様信仰なんだよ。……そのはずなんだけどな」


 古来より村に伝わる伝統の信仰が、明らかにおかしな変貌を遂げて新時代へと広まりつつある。

 そんな時代の狭間を目の当たりにしつつ、当たり障りないところで切り上げさせて、俺たちは馬車に乗った。

 うまくいけば、今回の処置で村が蘇る。



 ぽんちゃんを膝に抱き、MPを回復しながら、俺たちはヴァンガード村を目指した。







評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ