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家電転移~永久名誉店員になった俺は家電の能力(チカラ)で異世界を救う~  作者: 宮地拓海


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12話 ぽんちゃん効果 ―2―

「それじゃあ、持ってこようか、女神の遺産?」

「いや、行くよ。『女神の加護』を使ってさっさと設置しちまいたいし」

「じゃあ、足下気を付けて」


 手を取って、俺の体を支えてくれるキティ。

 本人は気にしているようだが、しっかりとしたブレのない体は非常に頼もしく、寄りかかるとなんともいえない安心感を与えてくれる。

 俺は割と好きだけどなぁ、キティみたいな感じの娘は。人として。


「頼りになるな、キティは」

「あぅ……ア、アキタカが軟弱過ぎるだけ……私は普通……もう少し筋肉をつけるといい、と思う」


 褒めたのが恥ずかしかったのか気に障ったのか、照れながら苦言を呈してくるキティ。

 そして、微妙に体の位置をずらして胸が俺に触れないように気遣っている。女子だなぁ、キティは。十四歳ならそんなもんか。異性との触れ合いには敏感なお年頃だろうな。


「アキタカは、もう少し鍛えないと……お婿さんのもらい手に困る、と思う」


 俺、どこにもらわれていく予定なの?

 つか、婿を取るって、村長の娘とかそういうポジションを想定した話じゃね?

 うん、キティさん。お願いだからそーゆー話の後で顔を真っ赤にしてそっぽ向くのやめてくれます? 寄りかかってるこっちも恥ずかしくなるから。


「がぉ~」


 ベッドを蹴って、ぽんちゃんが俺の頭の上に乗っかってくる。

 相当お気に召したようだな、俺の上が。……ネコベッドじゃねぇっつの。


「アキタカさん! こっち! こっち向いてください!」

「撮ってんじゃねぇよ、お前も! メモリーいっぱいなんだろ?」

「それがですね! わたし気が付いたんです!」


 瞳をきらきらさせて、アミューがぐぐっと体を近付けてくる。

 キティに体を支えられ、頭上をぽんちゃんに占拠され、アミューがぐいぐい体を寄せてくる。……狭ぇよ。


「SDカードがいっぱいなら、本体に保存すればいいんです!」

「その勢いで撮りまくってたら、そっちもすぐに満杯になりそうだけどな」


 指摘してやると、アミューがしゅんとうな垂れた。

 そんなに落ち込まなくても……どうせくっだらない動画ばっかりなんだし。


「そうなれば、また……あの悲劇が繰り返されるんですね…………」

「悲劇?」


 お通夜の列席者が対比で半笑いに見えそうなくらいの沈痛な面持ちのアミュー。

 俺が眠っている間に何があったというのか……

 暗い顔のまま、アミューがドアを開ける。

 その先には。


「あ、目を覚まされましたか、女神の使者様」

「おはようございます、女神の使者様」

「お加減いかがですか、女神の使者様」

「なんか、みんな目が真っ赤なんですけど!?」


 ぱんっぱんに泣き腫らした女性たちがいた。

 それも数十人も。

 何があったんだよ、マジで!?


「実は、昨夜……SDカード内容量飽和危機対策委員会を開きまして……」

「物々し過ぎるだろう、そのネーミング」

「新たに動画を保存するための策を話し合っていたんですが……」

「消せよ、古い動画」

「その結論に至った瞬間のみんなの悲哀が、張り裂けそうな胸の痛みが、アキタカさんには分かりますか!?」

「いや、まったく分かんないけど!?」

「号泣ですよ!? いえ、阿鼻叫喚でした!」

「どんだけ泣き叫んでたんだよ、お前ら!?」


 見渡せば、真っ赤に泣き腫らした目と、睡眠不足の影響からかぼろぼろになった肌、ぼさぼさの髪をした女性がそこかしこにいた。

 これ、全員SDカード内容量飽和危機対策委員会のメンバーなんだろうな。


「えっと……『サンバ』に乗るぽんちゃんの映像ばっかだったよな、たしか?」

「それでも、一つとして同じ映像はありません! すべての時間が、きらきら輝く宝物の瞬間なんです!」

「なんか暑苦しい感動の押し売り来たな、コレ!?」


 きらきら輝く宝物の瞬間ってなんだ!?


「一応、『ファミリー撮っちゃお』には、簡易編集機能が付いてるから、ある程度のトリミングで容量を確保出来るんじゃないか?」

「トリミング……?」

「絶対必要ってとこだけ切り出して、他んとこは削除するんだよ。あるだろ、綺麗に映ってないとことか、撮影に失敗したとことか」

「本体で編集出来るんですか? パソコンがなくても?」

「ファミリー向けだからな。パソコンを持ってない人でも楽しめるようにしてあるんだよ」

「SDカード内容量飽和危機対策委員会のみなさん、ご集合願います!」


 アミューの号令により、辺りにいた女性たちが一斉に集まってきた。

 ……命かけ過ぎだろ、お前ら。


「アキタカも、参加する? SDカード内容量飽和危機対策委員会」

「いや、俺は空気清浄機の方を」


 ネコ動画は基本どうでもいい。

 神獣(世間一般的な認識の方の神獣)の動画が撮れなかった以上、あの『ファミリー撮っちゃお』はあぁして本来の楽しみ方をするだけの電化製品になったのだ。

「成り下がった」とは、さすがに言えない。あれこそが、本来の使用用途なのだから。


「アキタカさん、見てください!」


 輝くような満面の笑顔でアミューが駆けてくる。


「6KB(キロバイト)減らせました!」

「もっと削れるだろう!?」

「これ以上は殴り合いになります!」

「ネコ動画教の狂信者か、お前ら全員!?」


 絶対もっと削れるはずだ。

 最低でも10GB(ギガバイト)くらいは余裕で!


「……もう、信者同士、血で血を洗う抗争はしたくないのです……」

「『もう』って……すでに一回あったのかよ」


 はぁ……もう。

 まぁ、たっぷりと寝た後だし、最大MPも68まで上がったし。

 …………しょうがないなぁ、もう。


「分かった……もう一枚SDカードを作ってやるよ」

「ホントですか!?」

「だからもう泣くな……って、向こうのみんなに言っといてくれ」


 怖いんだよ、泣き腫らした目の女性数十人にじっと見つめられるの。

 戦地で戦う仲間よりも大切にされてるじゃねぇか、ネコ動画。


「出来れば、1TB(テラバイト)のSDカードを……」

「お前……イドバシですら取り寄せになる高額商品を」


 ちょっとした電化製品よりも値が張る物を軽くねだりやがって。

 ただ、2015年製の『ファミリー撮っちゃお』に適用してるかどうか……512GBのSDカードには対応していた気がするけど。

 はぁ……もはや諦めの境地だ。さくっと終わらせてMPの回復を図ろう。


「『女神の装具』!」



【MPが足りません。『女神の装具』に失敗しました】



 ……え?

 そんなバカな。

 俺、今起きたばかりだぞ?


「どうしたんですか、アキタカさん?」

「MPが足りないって言われた」

「えぇっ!? あんなに寝たのに!?」


 なんだか、「どんだけ寝れば気が済むんですか」的な視線を向けられているが、そんなもん、俺も知らん。

 まさか、MPが0になった反動とかか?

 すっからかんにすると、寝ても回復しなくなるとか?

 カスピ海ヨーグルトも、全部食べちゃうともう増やせないよ的なことなのか!?



【現在、『女神の増殖』が稼働中です。『女神の増殖』を停止いたしますか?】



 …………は?

 稼働中?

『女神の増殖』って、一度使うと稼働し続ける……のか?



【説明したじゃないですかー】



 急に口調が砕けたな!?

 いや、あの時は意識がもうろうとしてたし、アミューがなんかごちゃごちゃ言ってたし。



【人のせいにしないでください! ……あ、アミュー様は女神様なので人ではないですね。では、アミュー様のせいです】



 えっ、いいの!? その結論に至っちゃって!?



【しょーもない女神様ですよねぇ】



 暴言吐き始めたぞ!?



【…………と、アキタカ様はお思いなのでしょうね】



 最後にちょっとヘタレた!?

 なんか、さも俺がそう言ってたみたいな感じに捏造されたな、今!?


「なんか、『女神の増殖』が稼働中で、MPがどんどん持っていかれてるらしい」

「へ? 稼働……中?」


 お前も詳しく知らないのかよ。

 女神魔法だろ? お前が創った魔法だろ?


「じゃあ、今も増殖…………してるんですかね?」

「――っ!?」


 そうか。

 稼働中ってことは、今現在も魔法が行使され続けているってことだ。

 だとするなら……


「キティ! すまないが空気清浄機と馬車を用意してくれ! すぐにヴァンガード村へ向かいたいんだ!」

「う、うん、分かった。派遣部隊の馬車を休ませてあるから、前の馬車よりも早く着けると思う」

「助かる! 大至急頼んだ!」

「任せて」



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