表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
家電転移~永久名誉店員になった俺は家電の能力(チカラ)で異世界を救う~  作者: 宮地拓海


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

40/114

11話 おいコラ、システムボイス ―2―

【女神魔法『女神の分裂』の発動を確認しました。こちらの指示に従って儀式を実行してください】



 突如、システムボイスが脳内に響く。

 ……儀式?



【まず、軽く膝を曲げ中腰になり、両手で両膝を包み込むようにして持ってください】



 え?

 ポーズとかあるのか?

 なんか、面倒くさい匂いがしてきたんだが……


 とりあえず、言われたとおりにする。



【そして、円を描くように膝をさすりながら呪文を唱えます】



 呪文?

 魔法の発動に呪文が必要なのか。なんだか本格的だな……格好はアレだが。



【呪文は正確に発音してください。『オイラの膝は国宝級~。膝のお皿は有田焼~』】



「ちょっと待って!?」



【練習時間の申請を受理します】



 そうじゃねぇよ!

 練習したいから待ったをかけたんじゃねぇよ!


「本当にそんなことしなきゃいけないのか?」



【魔法とは、とてもデリケートなものですので、正確に、『全力で』、恥を捨てて儀式を完遂してください】



「恥を捨てて」って……

 マジか……


「アキタカが独り言を、あんなに元気よく…………まさか、アキタカの方こそが『危ない人』だったのでは……!?」


 キティが不審者を見るような目で俺を見てくる。

 いや、違うからな!?

「そうだったのか!?」みたいな顔してるけども! 違うから!

 システムボイスは他のヤツには聞こえないからなぁ……アミューにすら聞こえないんだもんな。


「なんとなく、そんな気配は感じていたけれど…………やっぱり」


 感じてんじゃねぇよ、そんな気配。醸し出した記憶ねぇから。

 で、「やっぱり」って言うな。

 いらんスキルのせいで軽く小馬鹿にされているらしいな、どうやらマジで。


「あ~……えっと、つまりだな。魔法を発動するのに、儀式が必要らしいんだ」

「儀式?」

「あぁ……。だから、…………変な目で見ないでくれると、助かる」


 顔を背けてしまった。

 システムボイスがあぁ言うのだから、きっとそうなのだろうが……人に見られながらやるとか、軽く死ねる……っ!


 なるべく、キティの目は気にしないように、システムボイスの指示通りの儀式を開始する。

 ……よかったよ、他の女子たちがみんなぽんちゃんに夢中で。


 膝を軽く曲げ、中腰になって両手で膝をさする。円を描くように。

 そして――


「オイラの膝は国宝級~。膝のお皿は有田焼~」


 ――唱えてやったさ、全力で!

 これでいいんだろ!?



【…………】



 なんとか言えよ、システムボイス!

 なんで無言なの!?



【練習、終わりましたか?】



 練習じゃねぇわ!

 今の、全力!



【では、本番を始めましょう】



 もう一回やらせる気!?



【先程のセリフの後、両手を開いて頭の上に載せ、ひらひらさせながら『あ、こりゃこりゃ』と】



 地獄か!?



【それで、二番なんですが――】



 二番あるの!?



【先ほどの膝をヒジに置き換えて『あ、こりゃこりゃ』まで】



 ヒジには皿ないんですけど!?



【ヒジのお皿は備前焼でお願いします】



 お願いしますってなに!?

 お前の好みなの!?



【では、ミュージック、スタート】



 伴奏あるの!?

 とか思っていると、脳内に陽気なメロディが流れ始めた。

 ……もちろん、俺以外の誰にも聞こえてはいない。


 これに合わせて儀式をするのか…………とか思っているうちに、いかにも「歌い出してくださいね~」的な雰囲気のカウントが始まった。


 3、2、1――


「オイラの膝は国宝級~。膝のお皿は有田焼~。あ、こりゃこりゃ。オイラのヒジは国宝級~。ヒジのお皿は備前焼~。あ、こりゃこりゃ」


 あぁ、やったさ!

 やってやったさ!

 全力でな!



【…………ぷっくく】



「笑ってんじゃねぇよ、システムボイスっ!」


 はっは~ん、さてはお前も俺を小馬鹿にしてやがるな?

 上等だ! 顔を見せやがれ!


 ――と、ふと辺りを見渡すと。


「アキタカさん、あの…………何を、しているんですか?」


 ものすご~く引き攣った顔で、アミューがこっちを見ていた。

 なんで見てんの!?


「ひそひそ……」

「ひそひそ……」

「ひそひそ……」

「ひそひそ……」

「そして、あんなにぽんちゃんに夢中だった女性たちまでもが、今だけ俺をガン見!?」


 めっちゃ大勢の人に見られていた……なぜ、このタイミングで……っ!?


「あ、あの……アキタカさん」


 辺り一帯を包み込む不穏な空気をかき分けるように、アミューがゆっくりと俺に近付いてくる。

 そして、そっと肩に手を触れて、慈しむような声で語りかけてくる。


「アキタカさんの膝のお皿は、有田焼じゃないですよ?」

「分かってるわ! 言わされたの!」


 そんな、「大丈夫、怖くないからね」的な優しいニュアンスで俺を励ますな!

 大丈夫! ちゃんと理解してるから!

 俺の膝の皿が有田焼じゃないことは、他の誰より俺がよく分かってるんだよ!

 そして、ヒジに皿がないこともなっ!


「いいか、今のは女神魔法の……」


 と、説明をしようとした時、全身から一気に力が抜け落ちていった。

 体内の血液を一気に吸い取られたような、そんな脱力感に襲われる。


 これは……魔力がなくなる感覚だ。


 我慢出来ずに、俺は膝から地面へと倒れ込んだ。


「アキタカさん!?」


 慌てた様子で、アミューと周りにいた女性たちが駆け寄ってくる。


「た、大変です! どなたか、代わりになりそうな有田焼をお持ちの方はいませんか!?」


 なんの代わりにする気だ!?

 ――と、突っ込む元気もない。

 く……っ。魔力がなくなる感覚は、慣れていないせいか抗えない。


 視界がかすみ始める。

 ぼやける世界を、眉根を寄せて凝視する。

 すると、アミューの向こうに『サンバ』が二つ並んでいた。

 やっぱり、この魔力欠乏は、『女神の分裂』によるものか。

 そして、これで成功したってことは……あの謎ダンス、毎回しなきゃいけないってことなんだな…………キャンセル出来ないかなぁ、アレ………………ん?


 そこで俺はひらめいた。


 そうだ!

 オート!

 オートってのは、この謎ダンスをしなくてもいいってことなんじゃないのか?

 そうに違いない。

 だって、『女神の分裂』を使ったヤツがいるなら、そいつらはもれなく同じ事を考えただろうから。

「こんなアホなこと、毎回やっていられるか!」ってな!


 消費MPが5増えるが、あのダンスを行う精神的ダメージに比べれば屁でもないだろう。

 使ってやるさ、MP5! 余分にな!



【報告:『女神の分裂』発動のための呪文は、全128種存在します】



「いらんわ、その報告!? つか、そんなあんのか!? 考えたヤツ暇だったんだろうねぇ!」

「あ、あの、アキタカさん!? どうしました急に!? 発作ですか!?」


 お前がこしらえたシステムボイスのせいだっつの……くそ、今のツッコミで完全に精神力が尽きた。もう顔を上げるのも嫌だ……


「アキタカさん」


 ぐったりとする俺に、アミューが声をかけてくる。

 心配して呼びかけてくれているのだろう。


「計算上、MP10以上残ってるはずですので、眠る前に『女神の加護』を使うと無駄がなくてお得ですよ!」

「……鬼か、お前は」


 確かにMPは残っているだろうが、もう魔法は使いたくない。心が痛い……

 MP0になったらどうなるのか、考えるだけで怖い。


「…………あっ!」


 アミューの言葉を聞いて、俺はあることを思い出す。そして、焦る……


「アキタカさん? どうされたんですか、顔色が悪いですよ?」

「……サンバ」

「へ?」

「サンバッ!」

「お、踊れということですか!?」

「違う! 『サンバ』の電源!」


 アミューを押しのけて、つい今し方分裂した『サンバ』を手に取る。

 背面を覗き込み、側面を眺め、トップパネルを見つめ……ダメ元で電源をオンにする。


 …………シーン。


「んぬぁあぁ…………だよなぁ」


 凄い脱力感が襲ってきた。

 世の中、そんなに甘くないってことか……



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ