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家電転移~永久名誉店員になった俺は家電の能力(チカラ)で異世界を救う~  作者: 宮地拓海


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10話 ポンチョライオンと女神の遺産 ―3―

 アミューにステータス石版を借り、その上に乗る。

 キティが「急に何を始めたんだ、こいつ?」みたいな目で見てくるのがなんとも恥ずかしい。……あんま見ないでくれ。ただぼーっと立っているだけの姿を凝視されるのは思っている以上に恥ずかしい。晒し者だ。


 数秒後、『ぷにょ~ん』という間の抜けた音と共に、ステータス石版に俺のステータスが表示される。



******


 アキタカ・ホンジョウ

 27歳 男 

 職業:女神の使者

 レベル:4


 HP:55/68

 MP:54/54

 力 :26

 体力:22

 魔力:48

 敏捷:20

 幸運:15


 スキル:【女神魔法】【ツッコミ】

 称号 :【永久名誉店員】【ふにゃ筋】


******


 女神魔法:『女神の加護』消費MP:10(使用制限あり 残数/1回)

       :『女神の加護(バッテリー用)』消費MP:10(使用制限あり 残数/1回)

       :『女神の装具』消費MP:20

       :『女神の分裂』消費MP:50


******



 おっ!?

 なんか新しい魔法を覚えている。

『女神の分裂』…………分裂って……イメージあんまよくないんだが……


 と、その前に。


「なんで体力どんどん減ってくんだよ!?」


 前々から、微妙に気になってたんだよな!

 体力!

 レベル1の時は25で、レベル2はチェックしてなかったけど、レベル3で23になってて、「ん?」って思ったんだよ!

 んで、今回22か!?

 なんで!?

 普通レベルが上がるとどんどん数値が上がっていくもんなんじゃないのか!?


「きっと、アキタカさん……」


 アミューが、謎の体力値減少の推論を立てる。


「イドバシを辞めたから……」

「そんなに酷使されてたの、あの職場!? こっち来てから結構な冒険してきたけど!?」

「家電量販店の店員さんは、そんじょそこらの異世界での冒険なんかとは比べものにならないくらいに酷使されているんです!」

「そんなことねぇわ! 企業イメージ下がるから、そんなブラックなイメージ植えつけないでくれるか!?」


 とはいえ、体力が徐々に落ちているのは確かだ。

 力の数値は上がっているのだが……

 HPも上がっているから、老いが進行しているってわけではないと思うんだが……


「えっと……魔力と体力は相反すると、聞いたことがある」


 イドバシブラック企業疑惑に背筋を凍らせていると、キティが一つの可能性を提示してきた。


「魔力の急成期には体力が微量ながら減ることがあるという。それは、体内のエネルギーが魔力の成長に使用されてしまうから、らしい」


 魔力の成長期?


「魔力が急成長、……していない?」


 えっと、確か……

 レベル1で20、レベル3で36、で、今が48……おぉ、確かに結構成長しているかもしれない。

 そもそも、日本にいた時には『魔力』なんてもんは持ち合わせていなかったわけだし、この世界に順応するために体力を犠牲にしてでも魔力を高めているのかもしれないな。


 言われてみれば、MPがHPに追いつきそうな勢いだ。


「アキタカさんは女神魔法を使う魔法使いですから、体力より魔力が上がりやすいのかもしれませんね」

「えっ!? 俺、魔法使いなの?」

「魔法、使うじゃないですか」

「いや、使うけど……」


 使えるのって、お前の能力のおこぼれみたいなものじゃねぇか。

 なんていうか、魔法使いってもっとカッコいいイメージだったのに……実感湧かねぇなぁ……


「けど、そのおかげで新しい魔法が使えそうだな」

「新しい魔法、ですか? ……あ、本当です。増えてますね」


 新たに覚えた『女神の分裂』は、消費MPが50と多い。

 これは結構キツい魔法だろうな。

 いつもMPを使い過ぎると倒れちゃうからな。


「とりあえず、説明を見てみるか」

「これは……、すごい。これも女神の遺産?」


 女神魔法の詳細を見ようとしたのだが、キティが興味深そうにステータス石版を覗き込んできた。

 好奇心が旺盛な娘さんだこと。

 これもおそらく女神の遺産で間違いないだろう。

 ――と、答えようと思ったのだが。


「いえ。これは女神の私物です」

「遺産じゃないの!?」

「違いますよ。これはわたしのウチから持ってきた私物です」

「遺産と私物の違いは!?」

「え? ………………あの、アキタカさん。遺産と私物の違いって……説明、いりますか?」

「いや、確かに、普通に考えたら『全然違うじゃねぇか! え、バカなの!?』って思うような質問かもだけど! 頭に『女神の』って付くとニュアンス変わるだろう!?」

「えっと、それは……使用済みストローはゴミだけど、『美少女の』使用済みストローはお宝になるとか、そーゆー感じの……?」

「違うわ!」


 そーゆーんじゃないから、そんな「うわぁ……」みたいな目で俺を見るな!


「ざっくり言うと、女神の私物はこっちの物で、女神の遺産はすったも……あっちの世界の物、みたいなことです」


 性懲りもなく『すったもけ』と言いかけたアミューを物凄い顔で睨んでおいた。

 キティの前で何度も言われて、拡散でもされたら堪らんからな。『すったもけ人』なんて名称が。


 アミューの説明を聞くに、遺産の方は日本から持ち込んだ家電で、私物の方はこっちで生み出された魔法のアイテムってことらしい。

 ……私物の方が性能いいんじゃねぇか、それ?


 そんな便利な女神の私物、ステータス石版の画面をタッチして、新たに覚えた女神魔法『女神の分裂』の詳細を確認する。



******


『女神の分裂』:指定された電子機器をコピー・複写する。


******



 ……え?

 これって……


「女神の遺産を、増やせるってことか?」


 だとすれば、これは相当使えるぞ。

 たとえば、『ニャーミックス』にしたって、複数あれば薬の生産量が一気に跳ね上がる。

 何より、『サンバ』が増やせれば、ヴァンガード村を丸ごとキレイにすることだって可能だ。


 ただ……


「消費MP50か……」


 便利だからこそ、惜しまれる。

 現在のMPが54しかないから、一回使えば倒れてしまうだろう。

 MPを回復するには一度眠る必要がある。一晩というわけではなく、精神力を回復するくらいの睡眠が必要という意味での一度だ。

 なので、ちょっと減った程度の場合は仮眠で完全回復するし、逆に根こそぎMPを使い果たすと、最悪二~三日眠り続ける可能性も否定は出来ない。


 果たして、MP50を回復するのに必要な睡眠はいかほどなのか……


「試すのは、村に戻ってからの方がいいだろうな」


 こんなところで眠ってしまうわけにはいかない。

 アミューたちを付き合わせてしまうことになるし。


 そんなわけで、『サンバ』を持ち帰ろうと手を伸ばす。

 と――


「ぶにゃっ!」


 ――ぽんちゃんに手を叩かれた。

 ネコパンチで。


「…………」

「…………」


 睨み合う女神の使者と神獣。


 再び、スッと手を出す。


「ぶにゃっ!」


 ……スッ。


「ぶにゃっ!」


 スッ……


「ぶにゃっ!」

「何がしたいんだ、このネコぉお!」

「にゃにゃにゃにゃっ!」

「アキタカさん、苛めちゃダメですよ!?」


 アミューが俺とぽんちゃんの間に割って入る。

 えぇい、そこをどけ!

 その畜生を成敗してくれる!


「ぽんちゃん、『サンバ』が盗られると思ってるんですよ、きっと」

「そもそもそいつのじゃないだろうが!」

「いえ。ダンジョンのお宝は、見つけた者の物です」

「……マジでか」


 女神の遺産なんだから、女神の使者に譲れよ……

 これまで、俺たちに女神の遺産を譲ってくれていた連中は、使い方が分からないから譲渡してくれていたんだな。

 まぁ、結局それらも必要なヤツに渡して、ほとんど手元には残ってないけども。


「ぽんちゃん的には、正しく有効活用されているようですから」


 アミューが視線を向ける先では、ぽんちゃんが『サンバ』の上で丸くなっていた。

 ……神獣的正しい使い方が、それか?


「ネコと『サンバ』は、ネコ動画の鉄板です!」

「だからどーした以外の言葉が思い浮かばねぇよ!」


 アミューは完全にぽんちゃんの肩を持っている。

 お前、状況を正しく理解しているのか?

『サンバ』がなきゃ、ヴァンガード村は救えないかもしれないんだぞ?


「ですので、『女神の分裂』を使って二つに増やして、余った方をもらっていきましょう」


 ……ここで使えと言うのか?

 三日三晩眠り続けたら、お前らここから帰れなくなるんだぞ?


 …………帰らない、よな?

 え、俺、置いていかれる可能性もあるのか?


「あの……だったら、神獣様も連れて帰ればいいんじゃ?」


 この場所で『女神の分裂』を使用する危険性をアミューに語り聞かせてやろうとしたところ、キティが解決案を提示してくれた。

 おぉ、そうか。

 連れてきゃいいんだ。


 大獅子だったら躊躇うが、こいつはほとんどネコだ。

 村に入れても問題ないだろう。


「というわけなんだが、来るか?」

「がぅ」


 一応本人に意思確認してみところ、なんとなく肯定しているような雰囲気だった。

 途中であの真っ赤な果実でも採って与えてやれば文句も言わないだろう。

 ……その場合は、真っ先にアミューの口を塞ぐけどな。不用意に食いつかないように。


「で、ではっ、私が『サンバ』を持っていく」


 女神の遺産に興味津々なキティが名乗りを上げる。

 物凄いきらきらした目をしている。……分解とかすんなよ?


「ではでは! わたしがぽんちゃんを抱っこして帰ります!」


 キティをマネしてアミューが名乗りを上げる。

 眷属にめろめろだな、お前は。


「というわけで、アキタカさんはこれをお願いします!」


 満面の笑みで、アミューが俺に差し出してくる――ステータス石版を。


「私物押しつけてんじゃねぇよ」


 不承不承、仕方なく微妙に重たいステータス石版をカバンにしまい、俺たちはヴァンガード村・仮の集落へと戻った。







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