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家電転移~永久名誉店員になった俺は家電の能力(チカラ)で異世界を救う~  作者: 宮地拓海


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9話 神獣の森探検隊 ―2―

 休憩場所に選んだのは森の中の少し拓けた場所で、倒木がいくつか横たわり、足下は枯れ葉でふかふかしている、座り込めと言わんばかりの休憩スペースだ。

 正直、歩き詰めで足が悲鳴を上げていたところだった。


「とんでもない植物が多いな、この森は」

「ここは、植物に守られた神聖なる場所だから。固有種が多数存在する」


 幾分か時間が経ち、俺たちは再び普通に会話出来るようになっていた。

 キティも機嫌を直して……いる、よな? いまいち感情が読み取れないんだよな。


「あの赤い果実もそうなのか?」

「そう。あれは、神獣様のオヤツ」


 そんなもんをつまみ食いしていいのか、お前らは?

 神罰的なものでも当たらなきゃいいけどな。……って、神罰を下すのは女神であるアミューか。なら、大丈夫だと思うが。


「あの果実には、人を惹きつける匂いを発生させる器官が存在する」

「その匂いのせいで、近付くとついつい食いたくなっちまうのか?」

「そう。一種の催眠」


 催眠って……おっかねぇ森だな。

 これだけ変わった植物が大量に生息しているんだ、触れると毒素を吐き出す胞子があってもおかしくはない。


「案内を買って出たのに、私が足を引っ張ることになって…………ごめんなさい」

「まぁいいよ。危険を知らせてくれたわけだし。少し休んで、また頼むな」

「うん……。ありがとう、アキタカ」


 この一週間で懐かれて、普通に呼び捨てにされるようになっていた。……俺、結構年上なんだけどなぁ。


「アキタカは……とても優しい」


 ぽつりと漏らされた言葉は、日向ぼっこしている猫のあくびのような、警戒心のまるでない声音で……馴染んでくれているならまぁいいかな……なんてことを思ってしまった。


「あと、小さくて可愛い」


 ……ちょっと、馴染み過ぎかな。

 出会った当初のようにおどおどすることがなくなったのはいいけどさ。


「だから、割と、す…………こ、好感が持てる」


『好き』と言いかけて、恥ずかしくなって『好感が持てる』と言い直したキティ。バレバレで、なんだか微笑ましい。

 年頃の女の子は羞恥心の塊みたいなものだからな。初々しいじゃないか。


「婿にもらってあげてもいい」

「さっきの羞恥心どこ行った? あと、上から目線やめろ」


 なんだろう。俺が見直しかけると、それを全力でぶち壊してくる。

『見直しキャンセラー』でも搭載してるのか、この娘は。


「少し、休む……」


 キティがそっとまぶたを閉じる。

 そして、静かな吐息を漏らす。……寝たのか?

 見知らぬ危険な森の中でガイドに眠られると、すげぇ不安なんですけど…………


 まぁ、気持ちよさそうな顔をしているし、起こすのも悪いか。


「アキタカさん……キティさんは?」

「眠ったようだ。そのうち目を覚ますだろう」


 キティの様子も気にしつつ、アミューが転がっている場所へと近付く。

 枯れ葉をクッションの代わりに、太い倒木に寄りかかっているアミュー。

 心持ち膨らんだお腹をさすっている。


「油断しました。恐ろしい森ですね」

「毒がなくて幸いだったな」

「ですね……えへへ」


 まんまと罠にはまった気恥ずかしさからか、アミューは照れ笑いを浮かべる。


「あの果実、神獣のオヤツらしいぞ」

「なら、わたしの物も同然ですね。神獣は、わたしの眷属ですから」

「だったら、その果実の危険性を熟知して回避しろよ」

「えへへ。以後気を付けます」


 ホントかねぇ。


「神獣、見つかりますかね?」


 食休みの間、少し話をしようというのだろう。アミューが話題を振ってくる。


「まぁ、必須のミッションってわけじゃないとはいえ……見つけたい、よな」

「神獣に認められれば、レベルが上がるはずですよ」

「そうなのか?」

「はい。神獣は信仰の象徴ですから。女神の眷属の信頼を得るというのは、女神の使者として格が上がったということと同義です」


 神獣に認められれば、か。

 神獣なら、それくらいの力を持っていてもいいかもしれないな。

 神に認められてレベルアップなんてのは、ゲームではよくある展開だ。


 というか……


「お前はこの世界を作った女神なんだよな?」

「そうですよ?」

「その割には、神獣の居場所が分からなかったり、毒にやられたり、食べ過ぎたり……おっちょこちょいが過ぎるんじゃないか?」

「そ、そんなことないですよ!?」


 そんなこと、なくはないと思うけどな。


「そ、それにですね。確かにこの世界を作ったのはわたしですけれど、この世界の中で生きているのは、彼ら、彼女ら、個々の生命体たちなんです。それらはわたしの加護の元、わたしの手を離れ独自の進化をして生命を繋いでいるんです。ですから、そのすべてをわたしが把握しているというわけではないんですよ」


 この世界に生きる者たちは、女神によって運命を定められている――わけでは、ないらしい。

 それは植物も動物も、人間も然り。


「なので、この世界で起こることを、わたしは純粋に楽しめるんです」


 自分が作り出した物が、自分の思いもよらない事象を引き起こす。

 それを、見て、体験するのはきっと楽しいことなのだろう。

 我が子の成長を見守る……ってのとは、またちょっと違うんだろうけど。う~ん……よく分かんないが、独特な感覚なんだろうな。


「喩えるならですね、行き当たりばったりで書き始めたネット小説が思いの外面白くなっちゃってテンション上がるぅ~! みたいな感じです」

「あ、割としょーもない感覚なんだな」

「しょーもなくないですよ!? 奇跡です、これは!」


 バラエティでも、ただの1コーナーに過ぎなかったものが、思いの外ウケたりすると番組のメインに据えられたりするもので。それが思いもよらない長寿番組になったり、特番を任されるようになったり、そんな思いがけない成果は確かに狙って出来るものではないし、その結果ってのには作った本人もびっくりするんだろうな。

 世界を作るって、あんな感じらしい。

 ……あんな感じ、なのか?


 というか、だ。


「前々から気になっていたんだが……」


 アミューの話を聞く限り、どうにも納得出来ない部分がある。

 それが、時系列――歴史だ。


「この世界って、いつ作られたんだ?」



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