6話 前線で戦う戦士たち ―1―
激しく揺れる馬車の中、俺は再びステータス石版の上に乗っていた。
……激しくバランスが取りづらい。
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アキタカ・ホンジョウ
27歳 男
職業:女神の使者
レベル:3
HP:38/52
MP:22/32
力 :22
体力:23
魔力:36
敏捷:16
幸運:14
スキル:【女神魔法】【ツッコミ】
称号 :【永久名誉店員】【ふにゃ筋】
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女神魔法:『女神の加護』消費MP:10(使用制限あり 残数/0回)
:『女神の加護(バッテリー用)』消費MP:10(使用制限あり 残数/0回)
:『女神の装具』消費MP:20
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誰が『ふにゃ筋』だ!?
そこそこあるわ、筋肉!
「なんかいろいろ増えてるな」
「それより、なぜこんなにHPが減っているんでしょうか?」
「無自覚か!? それとも、都合の悪いことは記憶出来ないタイプか!?」
これだ、これ!
このツッコミのせいでHPがどんどん削られてんだよ!
「それはそうと、新しい女神魔法が増えてるな」
『女神の加護(バッテリー用)』は、前回使ったから知っている。
この使用制限ってのは、『女神の加護』と共通なんだろうな。『女神の加護』と『女神の加護(バッテリー用)』で二回使えるってことは、まぁたぶんないだろう。
現在、どちらも残数が『0』になっているしな。
そして気になるのが、『女神の装具』。
装具って言うと、登山の時や怪我をした際に体に取り付ける器具のことだったと思うのだが……
ステータス石版をタップして詳しい内容を確認する。
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『女神の装具』:電子機器の付属品、補強部品を創造する。
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なんかルビ振られてる!?
しかも、そこはかとなく漂うこの雰囲気は……
「アミュー。お前さぁ、ライトノベルとか、好きだったりする?」
「えへへ……。家電好きとしましては、聖地秋葉原巡礼とか欠かせないもので」
「違うお店入ってんじゃねぇかよ!?」
電化製品置いてないだろ、その専門店!?
目的がブレてんじゃねぇかよ。
「ラバーストラップとか、缶バッチとかが女神の遺産に含まれてないだろうな?」
「……………………。ないですよぉ~」
「間っ! 物凄い間があったぞ、今!?」
危機に直面して、起死回生の女神の遺産――が、キャラクター缶バッチだったら、人生詰んじゃうな。
そんなことはないと信じよう。
信じる者は救われる。
信じるから救ってくれよ、えぇ、女神様よ。
「けど、便利そうですね。アクセサリーが作れちゃうんですよ」
「電子機器のアクセサリーっていうと……収納カバーとか、ストラップとか、ハンディカメラなら三脚とかか」
確かに、あると便利かもしれない。
このハンディカメラのように、本体のみが女神の遺跡から持ち出され付属品が置き去りにされた場合に、不足しているパーツを保管することが可能になる。
このハンディカメラは、『女神の加護(バッテリー用)』のおかげで、もう付属品は必要なくなったけれど。
「大画面の4Kテレビとか、付属品にカウントされませんかね? ほら、あると大きな画面で見られますし」
「ハンディカメラの付属品に4Kテレビが付いてきたら、もはやカメラの方が付属品じゃねぇか」
ねぇよ。
おそらく、ケーブルとか、その辺が限界だろう。
【試してみますか?】
突然システムボイスが語りかけてくる。
……意思を持ち過ぎではないだろうか、このシステムボイス。AIとかじゃない感じだ。確実に『中の人』がいる。いるに違いない。
「じゃあ、やってみるかな」
【は? 『じゃあ』って何?】
「なんでそんなところにキレられなきゃいけないんだよ!?」
別れ際ともなると、言葉尻取ってキレる女子っているけども!
いかん……なんだか、システムボイスが完全に彼女面してやがるんだが……
お前は指定されたメッセージを適宜伝達してくれればいいんだよ。
「アキタカさぁん! システムボイスと二人で楽しむのズルいですよぉ! 混ぜてほしいですぅ!」
「お前の設定がおかしいから、俺がこんな目に遭ってんだろうが! 余計な遊びを設けるなよ、オペレーションシステムには!」
アプリとかの『Now Loding』にやたらこだわったりとか、そういう努力要らないんだ。
エラーメッセージに小ネタを仕込むような柔軟さはない方がいい。消費者目線で言わせてもらえばな!
「とにかく、『女神の装具』を使ってみるぞ」
どこまでがアクセサリーとして認められるのか、一回で一個なのか、全部揃うのか、はたまた指定出来るのか、ランダムなのか。
試してみたいことはたくさんある。
うまくいけば、広義のアクセサリーという解釈で大型4Kテレビが作り出せるかもしれない。
もしそれが可能なら、いろいろこじつけて思い通りの家電製品を生み出すことが出来るかもしれない。
女神の遺産の発見を待たなくても、家電が手に入る。それは一種のチートとも言える。
「よしっ! 『女神の装具』!」
ハンディカメラに手のひらを向け、魔力を込めるイメージで唱える。
【創造する装具を指定してください】
指定――か。
周辺機器一式全部まとめてってわけにはいかないらしい。
それに、選択肢が出ないってことは、俺自身が知らないものは生み出せないってことだな。
知らなきゃ指定も出来ないもんな。
なら、とりあえず……
『録画した映像を映し出す、大型4Kテレビ!』
多少アクセサリーにこじつける感じで、そう念じる。
途端に、体からごっそりと魔力が抜けていく感覚に襲われた。
酷い倦怠感に目眩を起こす。まるで濁流に呑まれたかのように世界がぐるぐると回る、体が動かない。
MPを20消費するというのは、こんなにも精神力を消耗するのか……
【指定されたアクセサリーは創造出来ませんでした】
しかも不発っ!?
えっ!?
こんなに疲れたのに失敗!?
なら最初に【それは指定出来ません】とか言えよ! いつもの無機質な声でよぉ!
【考えれば分かると思いますけれど。大型4Kテレビがハンディビデオカメラのアクセサリーになるかどうか、考えたら分かるかと思いますけれどっ】
うわっ、めっちゃキレられてる!
お前が【試してみますか】とか言ったくせに。その結果の今なのに!
【……無機質じゃ、ないもん】
拗ねてた!?
ちょっと可愛いっ!
いや、そうじゃなくて。
「……疲れた」
「出来ませんでしたね、4Kテレビ」
「当たり前だろ……アクセサリーなわけないんだから」
「まぁ、そりゃそうですよね」
なぜ試してみたのか……ついさっきの自分を殴りに行きたい。
しかし、これである程度分かった。
『女神の装具』は、結構な精神力をすり減らして家電のアクセサリーを一つ生み出すことが出来る魔法らしい。
そして、そのアクセサリーの範疇は、常識の範囲内に収まる物に限定される。当然と言えば当然だ。
イドバシでアクセサリー売り場に置いてある物、くらいの感覚で見定めた方がよさそうだ。
「アミュー。目的地まで後どれくらいかかりそうだ?」
「御者さんの話ですと、後二時間くらいですかね」
「なら、すまんがちょっと寝かせてもらうぞ」
「あ、あの……でしたら、その……ヒザをお貸ししま――」
「いや、それはいい」
お前の膝枕、本格的にヒザ過ぎて痛いんだよ。
っていうか、物の二秒で降ろされるなら最初からない方がマシだ。
照れ顔から一転、ほっぺたをぷっくぅ~っと膨らませて不満顔のアミューを眺めつつそっとまぶたを閉じる。
ゆっくりと息を吐くと、疲労から眠気が襲ってきた。
少し眠れば、HPもMPも回復するだろう…………あぁ、まぶたの裏にアミューのふくれっ面が焼きついている。こりゃあ、夢に見そうだな。
そんなことを思いながら、俺は全身の力を抜いた。




