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ある絵描きの歌

作者: 雨弓橋

偉大なる英雄王が戦って死んだのさ

そして攻め寄せられて草むした廃城に籠城をする王の家族と数名の兵士

生き残ったのは王の妃と息子と娘

中でも王の血を引くのは息子のみ

彼は「血のお守り」として、残った兵士を狂わせた

敵が階下に迫ったその時だ

兵士は彼の背中を切りつけた

英雄の血を自ら浴びて

いざ進まんと声を立てて、

英雄象った像のソリに乗り

階下の敵めがけて駆けて行った

階下の敵は潰れて死んだが、新たな敵に攻め込まれ、

逃げる場も無く最後の時に

奇跡も起きない英雄の血に残った兵士が逆上をして

王子を殺そうと剣振り上げ、妃が身代わりに亡くなった

扉が開いて敵がなだれ込む

裏切りの兵士は首を飛ばされ、残った幼い兄弟は

離ればなれになりかける

階下から見た妹王女

自ら冠離して髪を靡かせ、階下の王子に微笑んで

仕込んだ刃で死にました

王子の行方は露知らず

スラムで死んだとも幽閉されて死んだとも言われている

英雄王の墓には花はない

彼の妻子には墓さえなく、どこにいるのかもわからない

だから「私」は絵を描くと

絵描きの男は言いました

「シルラ カリスラ アリラ ラツィア」

彼は不思議な呪文を唱えています

唱えながら絵筆を動かし、英雄王の妻子の墓を

花より美しく描いていく

奇跡をおこせぬ王子の絵は無い

貴方、王子は描かないの?

彼は歌をやめて答えてくれた

王子なんか最初からいなかった

彼は冠さえ被らせてもらえなかった妾の子

貴方知ってますか、英雄王は王ではない

あの国は女王のものだったのだと

絵描きの男は歌い続ける

「シルラ カリスラ アリラ ラツィア」

この少女の絵のタイトルは、と客が男に訪ねると

「ラツィア王女」

と男は歌う

男は今日も町中で

不思議な歌を歌いながら、絵の少女と同じ髪を靡かせて

キャンパスにのびのび描いていく

たくさんの絵に囲まれて

幸せそうに歌っている


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