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第一巻 序章その5

 「君、これからはあたしと一緒に東京で暮らすんだよ。」


 ああ。

 やっぱり現実は大胆だ。


 「えっと、君の退院は3週間後だから、三週間後の週末に東京に来るとして、ってことは新幹線の切符が必要だね。あ、でも付き添いがいるかいないかで枚数が変わるから母さんたちに聞いとかないと………。それまでに家の片付けをして………。あ、そうそう、高校の手続きもしておかないとだ。制服は来てから買うとして………………。」


 なんか一人で話してしまっています………。


 「僕が京さんの家にお世話になることは、もう決定事項なんですか?」


 何をいまさら、という顔をして彼女は言う。


 「あとでみんなには話しとくから大丈夫だよ。」


 勝手に話を進めていただけのようです………。


 「あ、そうそう。実はこの後仕事があるんだよね。ってことで東京に帰らなきゃいけないんだ。」

 

 話の切り方まで突然だ。

 存外、自由な人なのかもしれない。


 「それと、大事なこと言うの忘れてた。」


 「え?」


 「急に現実に引き戻しちゃって悪いけど、君の家族はもういないんだよ。分かってると思うけど。

  君の年齢で家族を亡くすのは辛いと思うし、同情もしよう。

  でもさ、自分だけが不幸だなんて思わないでほしい。

  君にとって大切な母、大切な父であった人は、あたしにとっても大切な姉で大切な義兄なんだよ。」

 

 「………。」


 「あたしがもし君の立場だったら、自殺して、両親に会いに行こうとするよ。

  もしかしたら君もそうしようと思っているかもしれない。

  でもさ、よく考えてよ。

  自己中だけど、大切な姉と義兄と、そして大切な甥を同時に亡くすあたしの気持ちを考えてよ。

  そしてね、勿論、家族がいなくなる悲しみは分かる。

  あたしだって家族を今、亡くしたばかりだからね。」


 つまりね、と彼女は続ける。


 「不幸なものは不幸なもの同士、傷を舐めあおうってことだよ。」


 「………?」


 

 

 「あたしと一緒に新しい家族、作ろう。」


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