第一巻 序章その3
「そして、君の両親は事故の際、即死した。」
ああ。
やっぱり現実は冷酷だ。
想定していた中で最悪の回答だった。
「す、少し、気持ちを整理する時間を、ください………。」
ああ、と牧野医師は言い、看護師と佳子さんを連れて病室を後にした。
正直言うと、涙は出なかった。
悲しくなかったわけではない。
ただ、涙は出なかった。
別に、両親と仲が悪かったわけではない。というより、とても仲が良かった。反抗期の高校生には珍しく。
おそらく、両親のどちらかが生きていたならば、大泣きしていただろうと思う。これからは、片親なしで生きていかなければいけないから。
ただ、今回、両親が死んでしまった。それは15歳の僕には重すぎる現実だった。
両親なしで生きていく。そんなことは無理だ。
すぐに自殺しよう。そうすればまた3人で会える。
そう思っていた。
そんなことを考えながら、ただひたすらに深呼吸していた。
牧野医師の言ったとおりに。
その時、突然、病室のドアが開いた。
牧野医師か。
佳子さんか。
看護師さんか。
予想はすべて外れた。
それは、知らない金髪の若い女性だった。