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住んでいるのは神奈川なのだからお土産はやはり神奈川に関連したものがいいのだろうか。
でも、故郷の田舎に住む人にとって神奈川のお土産といってすぐに連想するものはあるだろうか。
(うーん、やはりここは横浜のシュウマイか!?)
(でも、シュウマイって匂うしな。)
まだ年末の帰省ラッシュ前とはいえ、きっと新幹線の自由席は混むだろう。
そんな車内でシュウマイの匂いを充満させる勇気は僕にはない。
別に神奈川じゃなくて東京のお土産でもいいんじゃないかな。
そう結論付けた僕は何一つお土産を買うことなく東京駅までやってきた。
駅構内に作られたショッピングエリアにはお弁当やお惣菜、お菓子まで多くの店舗が設置されていた。
どんなものが喜ばれるのだろうか。
東京に出てきてから3年間、僕は一度も帰省したことはなかった。
なのでお土産を買うのは今回が初めてだ。
(そもそも母親が好きなものってなんだった?)
こしあんが嫌いなのは知っていたが、どんなものが好きかというのは全くと言って知らなかった。
(まぁ、母親は何でもいいとして問題は叔母さんの方だ。)
叔母さんの好物はもちろん嫌いなものだって何一つ僕は知らない。
ましてここ数年は叔母さんと1分以上の会話をしたことがなかった。
でも二つの家に買わないという選択肢は存在しなかった。
僕の家と叔母さんの家は隣同士である。
門構えは一つなので一つの敷地内に二つの家が横並びに建っており、初めて見る人にも二つの家同士には緊密な関係性があるというのは一目瞭然だ。
二つの家は「金子」という同じ姓であり、母親同士は姉妹である。
つながりはそれだけではない。
父親同士も従兄弟同士である。
二つの家同士は血族と姻族という二つの面から二重で親族同士なのだ。
きっかけは僕の母と父が同じ会社で出会ったことだった。
その縁で母の妹である叔母と父の従兄弟の叔父が出会い、二組の夫婦が誕生した。
母親の方の実家が土地持ちだったため、持っていた広い土地に仲良く同じような家を同時期に横並びに建てた。
だが似た事象はそれだけじゃなかった。
母が妊娠すると、叔母もまた同じ時期に妊娠をした。
そして僕が産まれると、ちょうど一か月後に祐美が産まれた。
産まれた時から僕と祐美は普通のいとこ同士とは違っていたのだ。