荒野に降る雨
大気の薄い一面の荒野の中に一軒の家が建っていた。
その家は不思議なことに屋根がなく、寄せ集めのガラクタでできている。
穴の開いたソファと足の一本欠けたテーブル。壁には額縁の壊れた絵が掛けられ、壊れかけのテープレコーダーが棚の上に載っていた。
電灯の代わりに星明りに照らされた部屋で、視界に表示された天気予報を確認しながら一人が呟く。
「今日は雨が降るらしいぞ」
「あら、珍しい」
水の出ない蛇口を捻りながら、手仕事を終えたもう一人が応える。
「雨なんて何年ぶりかしら」
「まだ傘はあったかな」
部屋の隅のガラクタの山を漁り、しばらくして大きめの傘を取り出した。
「どうやらこれが最後の一本みたいだ」
「そう。じゃあそれで我慢するしかないわね」
二人で家を出て傘を開いた。身を寄り添わせえて夜空を見上げる。
キラキラと瞬く星空に一筋の流れ星が流れた。それを皮切りにまた一筋、また一筋と星が流れ、やがて雨のように止めどなく降り注ぐ。数え切れないほど小さなかけらが傘を指した二人の足元に転がっていく。
「綺麗ね……」
「ああ……」
背後の家が壊れていく雨音を聞きながら呟く。
荒野の星に取り残された二体のロボットはいつまでも肩を抱き合っていた。