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スキーボードの物語  作者: はるパンダ
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第三話 再会

 二月も半ばに差し掛かったとある週末、レイとじゅんは再び鹿島岳スキー場に来ていた。もちろん目当ては先日体験してその爽快感が忘れられなかったスキーボード。今回はこのスキーボードで再び滑るために姉妹二人だけのスキー旅行として、先日家族旅行で訪れた鹿島岳スキー場に来ていた。



「うん、やっぱりこの感触だね!」



 じゅんがスキーボードを履き、改めて感じた素直な感想を嬉しそうにレイに伝える。レイは『そうね』と満足げにそれに答えると改めてじゅんがレイにお礼を言う。



「それにしてもまたスキーボードが出来るなんてね、おねーちゃんさまさまだね!」


「じゅんはどうしようか悩んでいたでしょ?だからそれに便乗させてもらったってワケよ。だからお礼を言うのはむしろこっちの方よ」



 レイとじゅんが再び鹿島岳スキー場を訪れることが出来た理由は、家族旅行から帰宅した日までさかのぼる・・・。



~~~~~~~~~~



 はぐれていた両親と合流したレイとじゅんは家族四人でリフトに乗り、やっと家族旅行らしい団欒の時間を迎えていた。家族の中でもムードメーカーとなっているじゅんは、先ほどまで借りていたスキーボードについて自身が感じた魅力を両親に熱弁していた。ただあまりの興奮っぷりに『グイーンとね!』とか『クイっとさ!』など擬音ばかりの説明になってしまい、どうにも要領を得ない説明に、話を聞く両親は頷きはするものの内容を把握出来ず、しかし嬉しそうに語るじゅんの話の腰を折るのを憚られそのまま語るに任せていたのだが、レイが途中で何かと補足を入れてくれたお陰で何とか概要は伝わっているようであった。



「スキーボードか、父さんたちの頃にはそう言ったものはなかったな」


「すっごく楽しかったんだから、この普通の板だと出来ないようなことも出来ちゃう感じだったし・・・。あーもぅ!上手く伝えられないなぁ」



 興奮冷めやらぬと言った様子で楽しそうに説明するじゅんに思わず父親も楽しげに目を細める。そんな父親を嗜めるように軽く咳払いをする母親。それに気付き急に親としての立場を思い出し、威厳を示すかのように父親は咳払いをして二人に語りかける。



「ウォホン!それじゃまずその方たちにお礼を言わないとな」



 そんな当たり前のことを言われて、じゅんはまともにお礼を言わずにその場を立ち去ってしまったことに気付く。



「あーっ!お礼を言うの忘れてたー!!」


「じゅんは目先のことしか見えてないんだから。私からちゃんと言っておいたわよ」


「ホント?ありがと!でもさぁ、私からも言いたかったなぁって・・・」



 フォローを入れていてくれた姉に感謝をしつつも、先ほどまでの余韻と相俟って後ろ髪引かれる想いが残ってしまうじゅんである。



「それならリフトを降りてから改めてお礼をしに行ったらどう?」


「そうだな、そのスキーボードって言うのもちょっと見てみたいしな」



 父親らしくこの後の行き先を決定するが、実は父親のこの発言はスキーボードと言うものに対しての好奇心に他ならない。そんな父親の考えを察した母親は呆れたように溜息混じりに微笑むが、そんな見えないやり取りに気付かないじゅんは冷めかけていた興奮に再度火がつき嬉しそうに答える。



「うん!そーする!」



 しかしこの計画は結局実現しなかった。晴子たちは姉妹と別れた後、既に帰路についていた。泊りがけの旅行であるじゅんたちは日帰りである晴子たちの帰りの時間など知る由もなく、また車の運転時間や渋滞を考慮するなどと言ったことなど想定すら出来ないのであるから無理もない話しである。


 レイたち四人はリフトの運行が終了する三十分前まで晴子たちを探しながら滑り続けていたのだが、早く風呂に入りビールを飲みたい父親と着替えてくつろぎたい母親に急かされ宿へ戻ることを余儀なくされた。



 倉橋家が宿泊している宿は鹿島岳スキー場の林間コース途中に佇む、知る人ぞ知る隠れ家的な宿であった。父親がインターネットで検索して見つけたこの宿は外見はお洒落な西洋風の建物であった。建物の周囲には子供向けの遊具やバスケットゴールなどがあり、冬だけでなく夏に来てもきっと良い避暑地なのであろうことが容易に想像出来る。


 中に入るとその外見に伴ったお洒落な小物が多く飾られており、玄関やラウンジには置かれた宿泊客向けの観光案内や近隣の飲食店や土産物の店を紹介するパンフレットがその雰囲気を邪魔することなく綺麗に並べられている。また玄関やラウンジにはオーナーの趣味を伺わせるスキー板やスキー関連書籍、ペット関連書籍なども多く置かれているが、それもまた内装とマッチしており、オーナーのセンスの良さを伺わせていた。


 コース途中にあると言う立地条件から、コースから宿の前まで板を履いたまま滑って帰り着けるように整備されているのは、レイやじゅんの遊び心を大いに刺激し、二人はすっかりこの宿を気に入っていた。両親と共に宿の前まで滑りついたじゅんは板を脱ぎながらレイに話しかける。



「結局会えなかったね」


「こんな広いスキー場だもの、待ち合わせもしないで会える方が奇跡よ」



 もう一度晴子たちに会えるつもりでいたじゅんはショックを隠しきれないようであったが、むしろ会えないほうが必然と考えていたレイはそんなじゅんを優しく慰めている。そんなレイのさりげない優しさを感じ取ったじゅんは自ら気持ちを切り替え、話題を変えようと既に板を脱ぎ終わり宿へ向かう父親に話しかける。



「おとーさん、明日はスキーボードにしてもいい?」


「宿にレンタルがあれば構わないけども、確かスキーとスノーボードしかなかったぞ」


「えー、そーなのー!?」



 あからさまな不満を口にするが、実際に確認するまでは諦めきれず、スキーウェアに僅かに残った雪を掃うのもそこそこにレンタルの有無を確認するために宿の中へ飛び込んで行く。


 数分もしないうちについ数分前までの勢いはどこに行ったのかと言うほど落胆するじゅんを見て、レイは聞くまでもない結果を敢えて聞いてみる。



「レンタル・・・、あった?」


「・・・なかった」


「そっか、まぁ仕方ないよ。普通のスキーだって十分滑れるようになったんだからさ」



 冷静を装ってじゅんを慰めるレイだったが、そのレイ自身も口にこそ出さないが内心では落胆していた。それでも無いなら無いで仕方ないかと諦められるのは、レイにとってはじゅんと滑ると言う目的が達成出来ているから。それ故、スキーボードにそこまで拘る必要がなかったのである。



 結局二日目も通常のスキーをすることになったレイとじゅん。幸いにも二日目も天気に恵まれ気持ちのよいスキー日和であった。この日も早々と別行動を取る両親を苦笑いと『ごゆっくりー』と言った冷やかしで見送り、姉妹は再びゲレンデへと繰り出していく。


 じゅんは二日目の昼には予告どおりソフトクリームの全味達成を果たした。本人曰く『牛乳味が一番美味い!』とのことだが、レイの休憩のお供は変わらず和菓子とお茶。そんなレイを見てじゅんは休憩のたびに渋いデザート趣味をからかうのだが、当人はどこ吹く風と和菓子をゆっくりと堪能していた。


 そんな慣れ親しんだいつものやり取りの中で、じゅんは口にこそ出さないがどこか心残りがあるのを自覚していた。しかし無理に明るく振舞いそれを忘れようと努めていた・・・。



 そんな家族旅行も終わり、帰宅後のレイが調べたのはスキーボードをレンタルしているスキー場についてである。じゅんの残念そうな雰囲気に当てられているうちにレイもだんだんスキーボードが気になってきていたのだ。口や態度にこそ出さなかったものの、実のところレイもじゅんと同じくらいスキーボードを気になっており、ぜひまたあの爽快感を味わってみたいと改めて思い始めていた。


 家族が寝付いた後も自室のパソコンで情報を検索していると、意外にも先ほどまで自分たちが滞在していた鹿島岳スキー場でスキーボードのレンタルを行っていたことが分かった。スキーボードと言う名称は国際的に定義された名称でありながら日本ではあまり浸透している呼称ではないらしい。日本国内では『ショートスキー』或いは『ファンスキー』と呼ばれるものがそれにあたり、一般的にはその名称の方が使用されていることが多いようだ。鹿島岳スキー場でもスキーボードと言う呼称を使用していなかったので気付くことが出来なかったようであった。


 その事実に気付いたレイはディスプレイから目を離し天井を仰ぐかのように伸びをしながら目当てのものがすぐ近くにあったことに気付けなかった自分自身の迂闊さをかみ締める。



「そっかー、あったんだぁ・・・。まさしく灯台下暗しだったワケね」



 そんな独り言を呟き、再度ディスプレイに表示されているスキーボードを眺めた後、座っていた椅子をディスプレイに背を向けるようにくるりと回転させ、そのままの体勢で考え込む。


 視線を宙に漂わせると何となく目に飛び込んできたのは備え付けのクローゼットの取っ手部分に引っ掛けられた先ほどまで来ていたスキーウェア。さらに視線を漂わせると天井まで届きそうな本棚に整然と並べられている参考書、ゆらゆらと漂うレイの視線は、そこから壁に掛けられたカレンダーに写るどこか知らない海外の雪山の写真を経て、更にどこを見るわけでもなく中空を漂い続けた。



「・・・うん?」



 ふと何かを思いついたようにもう一度椅子を回転させて再度ディスプレイに写ったスキーボードを眺めると、そのままレイは頭の中で今思いついた計画を組み上げていく。



「うん、、、うん!」



 一人頷きながら頭の中を整理していくレイ。やがて考えがまとまった様子で満足げに呟く。



「よし、後は明日ね」



 一人納得した後、パソコンの電源を落とし、年頃の女の子らしいピンクのシーツがかかったベッドに潜りこむ。ベッドの中で先ほどの自分の計画を頭で反芻するのだが数分後には寝息が部屋の中を満たしていくのであった。



◇◆◇◆◇◆



「じゅん、起きてる?」



 昨日の計画を一刻も早くじゅんに伝えたかったレイは、就寝がじゅんよりも遅かったのにも関わらずじゅんよりも早く目が覚めていた。目が覚めるや否や、じゅんが起きるのを待ちきれずに妹を夢の世界から引きずり出す。因みにじゅんはと言うと、帰りの車で楽しかった思い出を延々と語り続けた挙句、自宅に帰ると風呂にも入らずにそのまま倒れるように寝てしまっていた。



「ん・・・、ふぁー・・・。なぁーにまだ朝だよ」


「朝は起きるのが当たり前でしょ。それよりも聞いて」



 レイは昨晩考えた計画をじゅんに伝える。最初は寝ぼけながら聞いていたじゅんであったが、話が進むにつれてだんだんと目が覚めていき、レイが計画を

伝え終わった時には顔を洗った直後のようなさっぱりした顔で姉に感想を述べる。



「うん!それいい!そうしたい!」



 レイの計画に賛同するじゅん。予想通りの反応とは言え、自身の計画に自分自身の打算的な目論見が含まれているので一抹の心苦しさを感じてしまう。そのことを自覚しているレイはその旨も素直に伝えることにする。



「でもこれって実は私自身の希望でもあるから・・・」



 そんな言葉を遮るようにじゅんは言葉を畳み掛ける。



「でも私だっておねーちゃんが一緒なら嬉しいもん!」



 じゅんのそんな言葉に思わず胸が熱くなるレイであったが、それを知られるのはさすがに気恥ずかしい。姉の威厳にも関わることなので意識的に話をそらすように今後のプランを伝える。



「そ、それじゃお父さんとお母さんにお願いしなくちゃね。じゅんのことなんだからじゅんから話をしなくちゃだめだよ」


「うん、分かった!」


「私も一緒に行ってフォローしてあげるからね」



 つまりレイの計画はこうだった。


 現在中学三年生のじゅんは卒業記念として家族旅行とは別にどこか好きなところへ連れて行ってもらえる約束を取り付けていた。じゅんは当初千葉県にある巨大テーマパークにするか、山梨県の富士山の麓にある遊園地のいずれかにしようかと思い悩んでいた。行き先を悩んでいることはレイも知っていたし、行くのであれば一緒に行こうと誘われていたので二人して行き先を検討していたのである。


 その行き先をいずれでもなく、スキー場にするようにお願いすると言うのがレイの計画である。これはじゅんの希望はもちろん、レイ自身の希望も多分に含まれるもので、そこがレイとしては申し訳ないと思っていたところなのであったが、じゅんはそんなことよりもまたスキーが出来ることに単純に喜んでいた。


 しかも姉が調べたことによると先日行った鹿島岳スキー場であれば、あのスキーボードが出来るらしい。であれば反対なぞする理由は全くない。もはやじゅんの思考は両親を説得する方法のみに絞られていた。



 結果的にはこの申し出は若干渋る母親をレイとじゅん、そして意外なことに父親からの援護射撃もあって認められることとなる。理由としては鹿島岳スキー場であればバスツアーもあるし、先日泊まった宿であれば両親からも娘たちをお願いできるから。


 父親としてはじゅんがスキーボードに未練が残っている様子は手に取るように分かるし、自ら計画を立てたレイの情熱に絆された形でもあった。日程的には三泊四日のスキー旅行を申し出てきたレイに、毎日朝と夜には必ず家に連絡することを条件に渋々折れる母親であった。



 こうして姉妹はスキーボードに再び触れる機会を得たのであった。



~~~~~~~~~~



 二月の長野県ともなればいつ雪が降ってもおかしくはない。この日は前回のスキー旅行と同様に抜けるような青空であったが、センターハウスや駐車している車の雪の積もり具合から、昨日まで雪が降っていたであろうことは雪国育ちでないレイたちでも容易に想像できた。


 しかし今日が晴れてさえいれば前日の雪などは関係なく、前回同様、晴れ渡った空と一面の銀世界を視界いっぱいに納めた二人は満足げに周囲を見渡し自然と笑顔をこぼした。



「おねーちゃん、早く滑ろうよ!パンダくんも呼んでるよ!」



 いつものように腰につけたパンダの小物入れを器用に操り、腹話術のように喋らす真似をしてレイを急かす。はしゃぐ妹を呆れながら眺めつつ、実は自分自身にもはやる気持ちはあるのだが、姉の威厳でそれを辛うじて押さえ込めて妹をたしなめる。



「ほらっ、滑る前に準備体操でしょ。しっかり身体をほぐしておかないと、いざと言うときに危ないわよ。アンタもスポーツやってたんだから分かるでしょ?パンダにも良く言っておきなさい」


「はぁーい」



 レイの小言に不満そうに答えるじゅん。手に持ったパンダもしゅんとさせているのが非常に愛くるしい。しっかり言うことを聞いているあたりが姉妹の仲の良さが伺える。



 しっかりと準備運動を終え、姉妹は今度こそゲレンデへ繰り出す。前回は突然出会った晴子たちに突然スキーボードを借りることになったので、その時滑っていたコースでしかスキーボードを堪能できなかった。


 しかし今回は初めからスキーボードを履いている。どこを滑ろうが自分たちの自由である。鹿島岳の全てのゲレンデを制覇しようと宣言したじゅんに呆れながら賛同するレイであったが、レイ自身もまたスキーボードの爽快感を味わえるのでじゅんの申し出に異論があるはずもなかった。



---



 朝のリフト運行直後からゲレンデのあらゆるコースを滑りまくっていた二人であったが、太陽が真上に差し掛かる頃、じゅんはそろそろ昼食にしようかと自身の腹時計と相談し始めていた。いくら楽しいことに夢中になっていても、リフト乗車中以外はほとんど滑りっぱなしであった二人はどちらからともなく休憩を意識し始めていた。


 そんな時、出会いは突然訪れたのである。



---



 昼食前の最後の一本はセンターレストハウスから見て右方面に位置する北側の比較的斜度がきつめのコースを滑ることになった。この時もレイが先行、後からじゅんがレイを追いかけると言ういつも通りの状態で滑っていた。


 いよいよ腹の虫が盛大に抗議の声を上げだすと、途端に力が入らなくなったような気がして、コースの端で一度立ち止まる。先を滑るレイの背中を視界に捕らえつつ、もう少しで仕事を与えてやると腹の虫を宥め、さて改めて滑り出そうとした時、じゅんのすぐ目の前を雪煙を巻き上げながら凄い勢いでスキーヤーが滑っていった。


 一瞬で目の前が雪煙で真っ白になり、気が付くとそのスキーヤーは目の前からいなくなっていた。突然の出来事に呆気に取られ、思わずレイから視線を外してそのスキーヤーを探す。次にそのスキーヤーを視界に捕らえたのは、じゅんの前を通り過ぎた十メートル程度の地点、丁度バランスを崩して転がるように豪快に転倒したところであった。



「あっ!」



 じゅんが思わず声を上げたのはその転倒の豪快さにではない。スキーヤーが転倒した際に持ち上げた足、そこに見えた板がスキーボードだったからだ。



「もー!飛ばしすぎなのよ」



 転倒したスキーヤーの後にさらに二人のスキーヤーが追いついて声をかける。まさかと思いつつその二人の足元をよく見ると、やはりその二人が履いているのもスキーボードであった。


 良く見ると、三人とも何処かで見たような気がするウェアを纏っている。転倒しているのがスタジアムジャンパー風のウェア、追いかけてきた二人がファー付きパープルに水色のだぶだぶ目のウェアであった。


 先日の偶然の出会いがフラッシュバックしたじゅんは一瞬ためらった後、その三人の下へ滑り降り、思い切って声をかける。



「あの・・・、もしかして晴子ちゃん?」



 声を掛けられたスキーヤーは驚いてじゅんを見つめ、その姿を上から下までゆっくり見つめ、腰にぶら下げられパンダに気付くと、掛けていたゴーグルを外しながらに返答する。



「もしかして一ヶ月くらい前にここであった・・・、じゅん?」


「そう、そうだよ!じゅんだよ!」



 まさかの再会に驚きと喜びが隠し切れないじゅん。驚く晴子をよそにゲレンデの下のほうで待つレイに大声で呼びかける。



「おねーちゃーん!晴子ちゃんたちだよー!この前ここであったスキーボードの晴子ちゃんたちだよー!!」



 突然大声で名前を叫ばれた晴子は気恥ずかしさで苦笑いを浮かべるが、転倒したスキーヤー、春美は身体を起こすよりも早く顔をあげる。



「じゅんだって!?」


「あっ、春美ちゃんも!・・・って何で転んでるの?」


「あ、あぁ、ちょっとな。それよりもレイも一緒なのか?」


「うん!今回はおねーちゃんと二人のスキー旅行なんだよ!」



 そう言いながら起き上がると、身体についた雪を払い、春美はじゅんとの再会を喜び会話を弾ませる。そこに三人目のスキーヤー、葉流が晴子に軽く微笑みながら語りかける。



「ほら、また会えた」


「・・・まさか本当に会えるとはね」


「晴子、本当に驚いてる?」


「なぜ?」


「あまり驚いた顔をしていないから」



 突然の再会ではあったが、その再会を確信していたかのように話す晴子と葉流。晴子としては不思議ではあったが、前回と今回の出会いは偶然ではなく必然。どこかそう感じた方がしっくり来る気がしてしまうのであった。


お読み頂きましてありがとうございました。

誤字脱字等は適宜修正していきますのでご容赦ください。


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