628 いまだに一撃必殺です
薄曇りの空に、ひんやりとした風が流れている。
朝からいい天気だとは決して言えないけれど、親父は「なに、この方が気が引き締まって良いさ」と言って笑った。
「では、行ってくる」
丈夫そうな服の上から羽織ったコートをひるがえし、最低限の荷物を持った親父が玄関を出て行く。
とうとう、今日が武術大会の最終予選だ。
「ええ」
リソ君を抱いたお袋が、小さな手を取って一緒に振る。 応援の言葉は、もう昨日のうちにすべて言った。
俺達もお袋がいる後ろの廊下に並び、今日は休みのチャロちゃんも私服姿でマールちゃんの隣にいる。
ニアちゃんはいつもの場所、俺の肩の上だ。
「あなた、行ってらっしゃい」
「いらっひゃーい!」
「……ああ」
リソ君の声に親父は足を止め、振り返って小さく笑う。
そして手を上げながら歩いていく親父の背中を、俺達は静かに見送った。
俺がトイレに行こうと、階段を降りてきたところ。
「いーくー! いーくー!」
「あらあら~」
腰にしがみついて足をバタバタさせているリソ君を見下ろし、お袋が玄関でのほほ~んと笑っている。
今日は精霊の日。 道場を開けるためにお袋だけが先に行こうとしたところ、昨日のアレで興奮したらしいリソ君が「連れてってー!」と言っているのだ。
「じゃあ、リソちゃんも行きましょうね~」
「わあーっ♪」
お袋がOKを出すと、ブラザーは諸手を挙げて喜んだ。 見ていて可愛い。
少し前に出勤してきてお袋を見送りに出ていたらしいアナさんも、すぐそばで微笑んでいる。
「ふふ……それじゃあ、上着を出さないとね」
「あーい!」
リソ君の部屋に入ろうとするアナさんに、リソ君も自分からついて行く。 かしこいなあー。
お袋も一緒に部屋に入ってこうとしていたが、直前に俺の方を向いてにっこりと笑った。 俺も笑って返す。
……お、そうだ。 だったら、上の部屋にいるマイドーターにも声をかけて、三人で行ってもらうことにしようか。
「ん」
俺はひとりでうなずき、階段の途中で折り返した。
専用シューズだけを持ち、ハニーと一緒に道場へ。 ご近所さんに会うたびに「寒いですねー」と挨拶を交わす。
親父が予選に出ることを知っている人もいて「応援してるねっ♪」と言ってくれた人もいた。 ちなみに、たぶん十二、三歳くらいの若い見習いメイドちゃんであった。
親父って、けっこう年代を問わずにモテるよな……。
「えへへ~」
いつものように手を繋ごうとしたら腕を組んできたマイシスターが、にこにこしている。 昨日からずっとこんな感じだ。
上着越しなので温もりが腕から直接伝わってくることはないけど、ハニーのつけ襟から出ている空気が俺の頬をなでていくので、片方だけあったかい。
「ん?」
「なんでもな~い」
目を向けてみても、セーレたんはそう言って上目遣いに微笑むだけ。
俺よりも、全弾捌ききった親父の方がスゴかったと思うのだが……まあ、ご機嫌なんだからよしとしよう。
何度か、そんなやり取りをしながら歩いていると。
「……あら」
道場のある十字路のところで、エミーちゃんがホウキを持って掃き掃除をしていた。
俺達の顔を見ると手を止めて、とても温かな笑みを浮かべてくれる。
「二人とも、おはよう」
「おはようなの~」
「おはよう、いつもありがとうね」
挨拶しながらエミーちゃんの手を取ってみると……温かい。
上着も着ていないし大丈夫かなーと思ったが、まったく平気のようだ。
「も、もう……びっくりさせないでよ」
「あはは、ごめん」
ちょっぴりジト目になったエミーちゃんに、笑いながら謝る。 ホウキを持っている手を上から触っても、少しピクッとしただけで怒ってはいない。
異性であってもこういう気安いやり取りができるのが、幼なじみのいいところだ。
「エミーちゃん、代わるよ~?」
「もう終わるから大丈夫よ」
さり気ない気遣いを見せるセーレたんに、お兄ちゃんは心の中でちょっぴり感動。 セスルームから帰ってきてから、こういったことを言うようになったんだよなあ。
女の子はドンドン成長するなーと感慨に浸りながら、俺もエミーちゃんに声をかける。
「だったら待つよ。 一緒に入ろ」
喋りながらセーレたんをチラリと見たが、右に同じのようだ。
「……たまに強引よね、ジャスって」
俺達の様子に、たとえ断っても待つ気だと分かると、エミーちゃんは困ったような顔をしながらも嬉しそうに口元を緩めていた。
「――いらっしゃーい」
暖かい部屋でお袋に温かいお茶をもらってから、いつものように幼なじみーズを迎える。
「うぃー」
「ういーっ!」
ニコとフランス式……というか運動部っぽい声を掛け合い、腕と腕とを絡め合う。
もちろん、そこにヘンな意味はない。 男と男の友情があるだけである。
「……」
後ろで順番を待っていたくりむちゃんが、人差し指を口に当てながらじーっと俺の顔を見つめていた。
寒いのが苦手な子なので、今日は厚着である。 コートの下から出ているしっぽが、しきりに左右に揺れている。
「うぃー」
「……うぃー」
俺が腕を出すと、クールなお顔に柔らかな笑みを浮かべて腕を絡ませてきた。 ついでに、手の指どうしも。
小柄な俺の方が手は小さいのだが、指の細さは同じくらいだ。 少しひんやりしているけど、とても長くてピアニストのようにキレイである。
「うぃー」
「うぃー」
最後に、赤いコートを着ているピンクのうさぎちゃんとも腕を絡める。 垂れたうさ耳がかすかに揺れた。
逆にこの子の手は、セーレたんと同じくらいである。 とても温かくてふにふにしている。
……性別のことを今更とやかく言う者は、誰もいない。
「はい、私も」
「うぃー」
最後に、わざわざ屈んで腕を出してくれるエルリアさんとも腕を絡め、お迎えの儀式は終了した。
このお姉さんは、とても大人のお姉さんって感じの雰囲気なのだが、意外とノリがいいのである。
大人数が集まるとちょっと手狭になるリビングでお茶を振る舞った後、上着だけ脱いでぞろぞろと道場へと移動する。
住居部と共用のトイレから行けば、外の風に吹かれなくても済むんだけど……さすがにそうはいかない。
結局は、脱いだ靴を持って道場の玄関まで行かないといけなくなるしなー。
「きゅふふーん♪」
「にょおおおおーーーーーっ♪」
中に入ると……なんと我が弟くんがはるか上空、天井付近を飛び回っていた。
もちろん頭にはニアちゃんがくっついており、まるでラジコンヘリのように旋回したり、ホバリングしたりしている。
あのセーレたんでさえ宙に浮くのは怖がるのに……リソ君は少々のアクロバット飛行ですら楽しんでしまう。
将来が楽しみだ。
「降りといでー」
みんながぽかーんと見上げている中、俺が声をかけると二人は素直に降りてきた。
板張りの床に両足をつけるとバンザイをするリソ君に、十点満点をあげよう。 もちろん、ニアちゃんにも十点だ。
二人とも金メダルだねー。
「ジャスちゃん、今日はどうするのかしら~?」
「うーん」
可愛らしく小首を傾げるお袋を見て、俺も同じ方向に首を倒す。 ちなみにリソ君はエルリアさんに抱きつき、ニアちゃんは俺の肩に座っている。
今日は小さなリソ君が来ているので、お袋とエルリアさんもこっちについて来ていた。 いつもより少し時間が遅いのもあって、おやつは家にいるアナさんとマールちゃんが作って持って来てくれることになっているのだ。
ちなみに広い道場の中は、まるで暖房でも効いているのかと思うくらいにぽかぽかしている。 間違いなくニアちゃんの魔法だろう。
「力」が作用していることは、入ってすぐにマナの様子から分かっていた。
「そうだね――」
「失礼! どなたか、いらしゃらないか……」
みんなの顔を見ながら考えていると、玄関の方から聞き覚えのある女の人の声がした。 女性なのにハスキーでカッコいい、張りのある声である。
おかげで、中の戸が閉まっていても俺達の耳に届いた。
「あら~」
全員の視線が戸に集まる中、お袋がおっとりと歩いていってガラガラと開ける。
すると、廊下の向こうにある玄関に、かなり見覚えのある人影があった。
長身ですらりとした体型。 そして、バネのように渦を巻く長ーいポニーテール――。
「……先生?」
「ああ」
離れているので少し大きな声で呼びかけると、彼女は手を上げて応えた。
幼なじみーズの間を通って小走りで玄関に向かうと、後ろからみんなもついてくる。
「やはり稽古中だったか。 すまないな」
「いえいえ、ちょうど今からですから」
ウチの道場に顔を出してくれたのは、学校の担任のアズミーリ先生だった。
「……立派な体育館だな……」
「あはは、どうもー」
専用の靴がなかったため、靴下のまま上がってもらった先生が道場の中を見回して感嘆のため息をついた。
学校のに比べれば広さは全然だが……ま、学校と比べること自体にムリがある。
でも、スポンサー様のおかげで設備は整っている。 天井には大きな照明が並び、長細い窓からも太陽の光が射し込んでツヤツヤのフローリングを照らしている。
四方を囲む壁の内、入口のあるところ以外には空中回廊があり、しかも住居部側の行き止まりからは二階の倉庫に繋がっている。
実は鍵さえあれば、靴を持ってそこから住居部へ出入りすることもできたりするのだ。
「しかし、流石は御使い様――いや、ジャスパーだな」
「はあ」
隣に立つ俺を見下ろすと、先生はなぜか言いかけていた言葉を訂正した。
それに首を傾けているとニアちゃんが俺の肩の上に立ち、ぺたんこの胸を張って「むふーん」っと鼻から息を吐いた。 得意げな顔が可愛い。
周りにいるみんなもどこか嬉しそうで、特にセーレたんとエミーちゃんは二人並んでにこにこしていた。
「今日は遊びに来てくれたんですか?」
「ああ。 邪魔をしては悪いと思っていたのだが、外でカプティーニに声をかけられてな」
「おおっ?」
思わずエミーちゃんを見ると、エルネちゃんみたいなウィンクが返ってくる。
……わざと黙ってたなー?
「良ければ、私も少し利用させてもらいたいのだが……」
「もちろん大歓迎ですよー!」
できれば、教えてくれればもっと嬉しいけど、先生の稽古を見せてもらうだけでも参考になりそうだ。 俺とまったく同じことを思ったのか、特にエミーちゃんが嬉しそうな顔をしている。
だけどやっぱり、アズミーリ女史って休みの日には稽古をする人なんだな。 見るからにそうだと思ってた。
「……なー、リソ君」
「おーっ!」
先生の足元に声をかけると、先生のズボンにしがみついていたマイブラザーが歯を見せて笑った。
ちゃんと毎日時間をかけて磨いているので、とても白くて歯並びもいい。 生え始めた頃から、お袋が丁寧にオーラルケアをしてくれていたおかげである。
「そ、そうか……」
リソ君に満面の笑顔を向けられ、先生は珍しく顔を赤くしながら金色の頭をなでなでしていた。
親父といいリソ君といい、本当に女の人にモテるよなあ……。
雑談はほどほどにして、先生も交えた俺達は稽古を始めることにする。
ちなみに道具庫を見た先生は、あまりの品揃えに目を丸くしていた。 今も細いソフト剣を持って、具合を確かめながらため息をついている。
俺はもちろん、いつもの二刀流だ。
「古いが、よく手入れされている。 よくも、あれほど集められたな……」
「え、ええっと、実は――」
とっさにワインレッドのメイド服を着ているエルリアさんとアイコンタクトを交わし、ラピヨーネ家からご厚意で借りていることにしてもらった。
いきなりだったのに話を合わせてくれたエルリアさんは、さすがである。
みんなにも意見を聞いた結果、同じ二刀流ということで俺はわん子ちゃん、そして剣を練習中のニコはエミーちゃんに見てもらうことにした。 更にアズミーリ先生がアドバイスしてくれることになっている。
「あ、あのっ……私も剣も、何かありましたら……」
「ああ、助言させてもらおう」
強い先生に見てもらえるということで、教える役のハズのエミーちゃんがむしろそわそわしている。 一方で、ニコはちょっと緊張気味。
ところで、俺達を見てくれるせいで先生自身が稽古できなくなってしまったのだが、先生はクールな笑みを浮かべて「気にするな」と言ってくれた。
……カッコよすぎる。
なお、半重力体質で相手の難しいるーちゃんには、いちばん慣れているエルリアさんがついてくれることになった。 今は、俺やるーちゃんと同じ小太刀サイズの短いソフト棒を手にしているが、武器はだいたい一通り扱えるらしい。
「うふふっ、るー様達の警護も兼ねていますからね」
なーんて、朗らかに笑っているけど。
「……」
さっきから、アズミーリ先生がチラチラと鋭い視線を向けている。
相当な実力者なんだと思う……。
「じゃあ、またくるくるしましょうね~♪」
「はいなの~」
そして、セーレたんはお袋が相手してくれることになった。 他に教えられる人がいないのと……二人とも説明に擬音が多すぎて、どうもなあー。
コツを掴むと「ああ、こういう感覚か!」って分かるんだけど、あの謎説明をすぐに理解できるのはわん子ちゃんくらいである。
「……」
「くぅん?」
つぶらな黒い瞳を瞬かせ、しっぽを振りながら首を傾けるわん子ちゃん。
この娘も、なんで解るんだろうな……?
「やあああああっ!」
「にゅわ~ん」
道場のあちらこちらから、気合いの入った声や気の抜けそうな声が聞こえてくる。
……だがむしろ、後者の方が壮絶な組み手を繰り広げていたりする。
ズバババババーンと音が聞こえそうなチョップや掌底の応酬の合間に、長い髪とスカートをひるがえして蹴りが入る。
かと思うと。
「うふふふふふ~♪」
「ひにゃん!?」
この星の重力はどこにいったのかと思うほどに、お袋に触られたセーレたんが、空中で縦や横や斜めに回転したりする。
そんな妹様も隙あらばお袋の関節を取ろうとしているようで、見た目の可憐さに気を取られていると、あっという間もなく一本を取られてしまうだろう。
「……凄まじいな、お前の御母堂は」
「はははー」
短槍に見立てた棒を持つわん子ちゃんに指導している途中で、アズミーリ先生が目を見開いて固まっていた。
なにしろ、ウチのお母様はオルスターマイナのマリエルさんと互角だからな。
「ふわあああああ~」
「わああーーー!」
「すごいねーっ♪」
ころころとフローリングを転がるお姉ちゃんの姿を見て、リソ君とニアちゃんが一緒に隅っこでおててを叩いている。
まあ確かに、金色の髪が身体に巻きついて、スゴイことになっているけれども……。
「……ふぁぁ~」
しかし、お袋はようやく転がり止まった娘を見て「あら~、止まったわね~」と微笑んでいる。
いつものことながら、スゴイ親娘であった。
「はい、はいっ」
「ほっ、ほっ」
片や、エルリアさんとるーちゃんの主従コンビは、意外と地味~な練習をしていた。
一見するとスローモーションコントのようだが……ゆっくりながらも決して止まることはなく、流れるように動いている。
その中で、タイツとスカートを穿いたるーちゃんはエルリアさんの振る棒を受け流していた。
「あ……」
「はい、そうすると手に当たりますよ」
細かい動作を確認しながらやるには、逆にあの方がいいかもしれないな。
それに、アレだったらるーちゃんが飛んでいく心配もない。 さすがである。
ところが――。
「むふーぅ!」
動きが止まったすぐ後。
すぐ近くで見学していたリソ君が立ち上がり、二人に向かってとことこーと突撃していったのだ。
もしかすると、あれくらいの動きなら自分にもできるー! と思ったのかもしれない。
「わあっ。 リソ君、ダメだよーっ」
「ちょおーっ!」
他のみんなも稽古の手を止めて見つめている中、リソ君は我が娘を頭に乗せたまま、エルリアさんのエプロンドレスに真正面からしがみついた。
「ふふっ。 あらら……♪」
「リソ君、かわいいね」
稽古は中断されてしまったが、エルリアさんはむしろ嬉しそうにリソ君を受け止めている。 るーちゃんも後ろから近づき、小さな手で後頭部をなでなでし始めた。
なんとも、ほっこりさせられる光景である。
「むふー! ぼくもやうー!」
「えっ?」
リソ君は顔を上げると、両手を上げてヤル気をアピールし始めた。 ちょっと鼻息の荒いところが、コレまたかわいい……。
しかし、エルリアさんはリソ君のラブリーさに頬を緩めつつも、少し困った顔をしている。
「え、えっと……どうしようかしら」
「……じゃ、ボクとする?」
エルリアさんがお袋に視線を向けた直後、リソ君を挟んでるー君がその相手を買って出た。
お袋は大きなめろんの前で両手を合わせて「うふふ~」と笑っており、声をかけられたリソ君は勢いよく振り返って、優しいお姉ちゃん(?)にキラキラとした目を向けていた。
……ちなみに転がっていたセーレたんは、床に座り直して髪を整えていた。
「やうー! ふぁんちー!」
「ふふ♪」
ニアちゃんが羽を出して空に浮くと、ファイティングポーズを取ってパンチを始めたリソ君を見て、みんなが笑みをこぼす。
だけどよく練習しているだけあって、リソ君のシャドーボクシングはかなり様になっている。
ちゃんと腰も入っているし、手首を捻ってコークスクリューもしている。
「さあ、おいで?」
「ちょあああー!」
突如始まった、プリティー幼児とプリティー女装っ子とのタイトルマッチ。
持っているのがソフト棒のため、るーちゃんは引き続きそれでリソ君のワンツーパンチを受け流している。
「ふぁん、ちいいーーーっ!」
「ほっ、ほっ」
「とあああああーー!」
「ふふふっ♪」
たまーにキックも出すブラザーだけど、足が短くてほとんど届かないのが、コレまた可愛いのだ!
るーちゃんも思わず噴き出している。
だが――。
「ほわああああああああーーーーー!!」
「あっ……」
で、出たあーっ! キックで前に出した足を思いっきり踏み込んでからの、渾身のコークスクリュー。
体重移動から生まれたパワーを腰の捻りに乗せ、そのまま腕から拳の一点へと伝えて放つ。
それは、見事にるーちゃんの油断を突き――。
「――はううっ!?」
るーちゃんの男の子に、クリティカルヒットした。
『……』
言葉が出ない俺達。 お袋の笑い声も止まっていた。
るー君はお腹の辺りを抑えながらうずくまり、こてんと横に転がった。
「あっ、あっ、ああっ……」
うわあ、痛そう……。
あまりのダメージに声も出せず、るーちゃんは身体を丸めてぷるぷると震えながら喘いでいる。
いくら見た目は女の子でも、コレばっかりはどうしようもない……。
俺もお腹の下がきゅんとして、ニコもコカンを押さえて顔を引き攣らせている。 ハニーとくりむちゃんは、ぽかーんとしてるけど。
ちなみに、アズミーリ先生はなんとも複雑そうな表情をしており。
「……!」
エミーちゃんは耳を真っ赤にして、あさっての方を向いていた。
「あっ、あっ、ふあっ……!」
冷たい木の床におデコをこすりつけるようにして、赤い顔に珠のような汗をかいているるーちゃん。
「あぅぅ……ふあぁぁぁ……ん!」
柔らかなピンクの髪が床に散らばり、スカートに包まれた小さなおしりはぴくぴくし、白いタイツを穿いた靴のつま先はきゅ~っと丸くなったり、あるいはたまにぴーんと伸びたりしている。
そして、髪のせいで顔はほとんど見えなくなっているが、桜色の濡れた唇がふるふると震えているのだけは見えていた。
「……はっ!? る、るー様っ! 大丈夫ですかっ!?」
ようやく我に返ったエルリアさんが、るー君の側にしゃがんでおしりの上あたりをトントンと叩き始めた。 最初は嬉しそうに腕を上げていたリソ君も、心配そうな顔になってるー君の腰を揺すっている。
空にいたニアちゃんも、リソ君の頭の上に戻ってきた。
「るっ、るー様っ! お気を確かにっ!」
「だいじょーう?」
「うわあー、痛そうだねー」
「あっ、ああ……んんっ!」
――ところで。
「ふあぁ、あぁあ……♪」
「……」
るー君の声がミョーに色っぽいなーと思っているのは、俺だけなんだろうか……?




