表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
そだ☆シス  作者: Mie
プロローグ
3/744

2 聖母たちのパイパイ

 初出の専門用語には〈 〉がつきますが、あまりお気になさらずにお読みいただいて大丈夫です。

挿絵(By みてみん)





 今日も良い天気。

 さすがにお日様が笑うなんてこともなく、まだ犬も見た事がないので子犬が笑うかどうかも定かではないが。

 ……笑ったら怖いなー、おい。


 メイドちゃんは、何やらハミングしながら窓ガラスを拭いている。

 後ろを向いているので表情はよく分からないが、頭と髪を左右に揺らしながら歌っている様子は楽しげであり、きっと笑顔なのだろう。

 角の隅やサッシなども丁寧に拭いている。 しかも毎日。


 今日は、青い髪のメイドちゃん。


 仕事の邪魔になるからだろうか? 空色に近い青い髪を短いポニーテールにし、同系色のリボンで括っている。

 白いうなじと僅かに見える後れ毛が、瑞々しい少女に艶っぽいアクセントを加えている。

 背は一五〇センチくらいか。

 窓の上の方は届かないので、彼女が自分で持って来た脚立に乗って拭いている。

 スカートの長さは膝下まであり、細いふくらはぎから下は白いソックスに覆われている。

 清楚であり、とても慎ましい。

 ミニスカメイドなんて幻想です。 見事にぶち壊されました!


 ……話を戻すが、正面から見ても美少女である。

 栗色の瞳は大きく、ややつり目で真面目そうではあるが、十代半ばであろう整った顔にキツさはあまり見られず、優しい微笑みも相まってむしろ可愛い系と言える。

 赤ん坊の前である程度声を抑えているのかも知れないが、キンキンの高い声ではなく少し低め。

 小さい声でもよく通る。

 言葉の意味が理解できないのが残念だ……。


 しかし、こんな中学生や高校生が前世にいたら間違いなく芸能界入りしているだろうな。 しかも、ユニットじゃなくてピンで。

 リアルではお目にかかったことのないレベルだ。

 ちなみに胸の大きさは……メイド服でよく分からない。 標準的か? この世界の標準は知らんが。

 紺と白のシンプルなメイド服が、彼女の雰囲気にとてもよくマッチしている。 決してギンギラギンではないぞ?



 っと、彼女ばかりを見ていても仕方がないな。

 何も知らない、分からない俺にとって、自分の周囲を観察してこの世界の事を知っていく事は、今の俺にできる唯一の事であり最重要事項である。

 「ですてにー」なのである。

 目を皿のようにして美少女を隅から隅まで観察していたのもそのせいだ!


 ……。



 …………。




 さて、数日観察して分かった事だが。

 文明レベルは中世ヨーロッパ……? っぽい。 以上!

 メイドちゃんに比べてやたら表現がおざなりだと? 気のせいだ!


 つーか、部屋の中と窓の外に見えるものが全てなのだから、推測がほとんどなのだ。

 テレビやラジオなんて当然ない―― あったとしても言葉が分からんが―― 木々と石の塀に遮られてるせいか車の音や馬の声も聞こえないし、部屋にある物を見ても家電はもちろん、カラクリみたいな機械もない。

 いや……装置が大き過ぎるとか、音がうるさいから赤ん坊の部屋には置いていない、といった可能性も考えられるが。


 ベビーベッドの柵などは、シンプルなデザインだがそれなりにオシャレで、作りはしっかりしているから職人の腕は良いようだ。

 窓ガラスもあるし。 高級品じゃなかったか? 確か。

 しかも、ガラスを通してもガラスの向こうの景色がほとんど歪んでいないぞ。

 けっこう高度な技術だったと思うんだけど……。


 ベッドシーツの作りや手触りは良く、カーテンやメイドちゃんの服も布地は良さそう。

 ブルジョワらしいから良い物を揃えているのだろうが、見た限り縫い方も丁寧だ。

 ミシン……ではないと思う。 たぶん手縫い。



 ……そうそう! どうやら魔法はあるらしいぞ!

 火球(ファイヤーボール)とかを見たワケじゃないが、光る石は見た!

 暗くなると自然に光るとかいう天然石ではなく、明らかに人の手でON・OFFしているのだ。

 まるでというか、まんま照明である。

 天井に乳白色の丸い石がハメ込まれており、壁にあるスイッチ?で操作するようだ。

 とても電灯のようには見えないし、なんとなくスイッチを操作している時にぞわりとした何かが壁から天井に伝わっているように感じるし、明かりがついている間もその感じが天井からずっとしている。


 これ、〈魔力〉じゃね?


 時間が経つと勝手に明かりが消えるのも、オートOFFというよりは魔力切なんじゃないかな?

 全部推測ではあるが……。


 それにしても、ちょっと前に夜中に目を覚まして、この照明を見た時は本当にほっとした。

 真夜中の洋館に灯りがロウソクだけとか、どこのホラーだって感じだからな。 殺人事件でも起きたらどうする!?

 赤ん坊でなくても泣くぞ?


 まあ、魔法については今後も要調査である!




 そして、次にこの屋敷……正確にはこの部屋に出入りしている人だが。


 まずはメイドさん。

 青髪ちゃんとネコミミちゃんがいる。


 ちなみにネコミミちゃんは、オレンジかかったピンク系の色の髪で、ふんわりとしたショートカットの娘である。

 背は青髪ちゃんより少し低いくらい。 年齢も同じくらい……いや、ちょっと下か?

 少しオレンジがかった黄色い瞳は大きく、見るからに活発そうだ。 とても愛らしい。

 声は……中の人がいるのか? と思うくらいにハッキリとしたアニメ声である。 耳元で叫ばれたら耳がキンキンしそうだ。

 体毛やヒゲは、服の上からは見当たらない。

 ついでに胸のふくらみも見当たらない……。


 是非とも服の下の神秘について、調べさせて頂きたい!


 いやいや! あくまで、異種族に対する学術的な興味という意味で、だ。

 俺にはロリコンの気はないハズだ!!

 ハズだ……よ?


 そ、それはともかく……。

 特に目立った特徴といえば何より、頭とお尻の付け根からぴょこんと飛び出している、白い「耳」と「しっぽ」である。

 なお、耳は頭の上ではなく、人間と同様に横から上に伸びるように立っている。

 人型と猫型で耳が二つずつあるわけではない。

 ……想像してみると少しシュールだ。


 顔つき自体は人間と全く変わらない。

 しっぽは、メイド服のスカートの後ろから専用のスリットがあり、そこにしっぽを通して腰部分のボタンを留めると隙間ができないようにできる、という構造のようだ。

 ちと分かりにくかったと思うが、例えるなら「男のズボンの正面部分、もしくはスカートのファスナー部分のようなものが、スカートの後ろにもある」といった感じ。

 まあ……確かにスカートの下から出していると、ビックリした時にスカートが捲り上がるだろうから非常に合理的な作りである。

 で、しっぽの付け根には白く大きなリボンをつけていて、とても可愛らしい。

 そんな耳としっぽを、ぴくぴく、ふりふりさせながら楽しそうに仕事している様子は見ていて飽きない。

 いつか絶対触らせてもらうのだ!



 そんな決意を新たにした所で……主なメイドちゃんはこの二人のようだ。

 それと、あともう一人の合計三人しか見た事がない。

 もともと三人しか居ないのか、担当がこの三人なのかはまだ不明。




 次は俺たちの両親、俗に言うマイピアレンツである。


 まずは母親。

 コレがすんっっっ…………ごく、若いっ!!

 メイドちゃんズと同年代ではなかろうか? 下手をすると年下かも知れん……。

 パッと見た感じでは、それはもう中学生。

 声からして若々しく、しかし甲高い声ではなく心癒されるソプラノボイス。 ゆっくりした喋り方が更に癒し効果を増進する。

 ――「天使癒声(エンジェルウィスパー)」とでも名付けようか。 最早、特殊能力の類ではないかと思う。


 髪は金色で長く、一旦頭の上で留め、それを腰の近くまで流している。

 少しウェーブがかっていて、黄金の滝のようである。 マイナスイオン多そう。

 瞳は透き通るように蒼く、くりっとしている。

 可愛らしさと綺麗さが混在していて、人形のように美しい。

 意外にも、背はメイドちゃんズよりも少し高い。 一六〇あるかどうかか?

 そして、胸は……。


 む、胸は…………。



 ――――すまん。 詳細な描写は謹んで辞退する。


 いや、描写できない事はないんだ!

 むしろメイドちゃんズよりも詳細に、具体的に描写できるさ!!


 だって、五感全てをフルに使わせて頂きましたもの。

 赤ん坊だもの。


 まあ、敢えて一言で表現するならば……「聖母であった」と。

 それを日に何度も拝めるわけだ。 ありがたや、ありがたや。

 大切なモノですから、左右で二度拝みました。

 もちろん、育ててくれる事に対しての感謝、ですよ? 妙な勘違いをしてはいけない。

 興奮なんて、もっての外であります。


 ……もうすっかり慣れましたとも、ええ!




 あと、先ほどは触れなかったもう一人のメイドさんだが、この人は乳母(うば)さんっぽい。

 俺たちは双子であり、さすがに一人では大変らしく。

 いつもお袋―― 「ママ」と言った方が俺の見た目には合うのだろうが、それはちと恥ずかしい―― と、一緒に来る。


 この人は二〇代半ばくらいか?

 お袋より僅かに高い背丈の、短い茶髪の女性だ。 瞳の色は髪とほぼ同じ。

 綺麗な人なんだが、とても闊達(かったつ)そうな印象を受ける。 まさしくお母さん、という感じ。

 お袋とも親しげに話している様子だし……メイド服は着ているものの、どうも仕えているというよりは近所から子育ての手伝いに来ている友人、という風に見える。

 とすると、自分の子供を育てながら働きにも来ているのか……?

 備蓄の量も十分で、お袋とほぼ同等かそれ以上。

 さすがである。




 次に父親。

 非常に多忙らしくて見たのはまだ二回だけなんだが、こちらも爽やかな好青年だった。

 背は一八〇ちょっとか?

 銀の短髪に翠の瞳、顔のパーツは……特に目の付け所がシャープだが、表情は明るく怖い感じはしない。

 ガタイはしっかりしてそうだが線は細い。 いわゆる細マッチョ。

 二十歳(ハタチ)そこそこかという若さもあるだろうが、男臭さはない。

 つーか、生前の俺と同じ年くらい……だと?

 声も低すぎず、やっぱり爽やか系。 レモンかライムが似合いそうだ。

 洗濯用洗剤のCMとかに出演してみてはどうだろう?


 そんな柑橘系フェロモンで、あんな美少女をGETしたのか……。

 ド派手に爆発してしまえ! キラー○イーンで。


 で、全体的な雰囲気は、貴族というよりも宮廷騎士といった感じだ。 文官ではなく、明らかに武官タイプだな。

 思い出してみると、生まれて最初に会った時は軍服っぽい服装だったような気がするし、実際にそうかも知れん。



 ……こうして見てみると、今の時点では美形率一〇〇%ですよ! しかも若いし。

 何、このチート家族。


 これがこの世界の普通なのか、単に俺の異世界人としての感覚がそう思わせるだけ、という可能性もゼロではないが……。

 さすが異世界。 ファンタジーである。





評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ