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そだ☆シス  作者: Mie
お受験本番編(つづき)
212/744

187 ドキッ!○○○だらけでポロリも…

挿絵(By みてみん)





「はい、みなさーん! お風呂の時間ですよーっ♪」


 白いしっぽをゆったりと揺らしながら、廊下に続くドアを開けてオレンジ髪のメイドちゃんが顔を出した。


「ほーい! ……ニコ、行くぞー」


「うん、わかった」


「うぅ、おなかいっぱい……」


 テーブルの向こうの、最も遠い位置で腹をさすっている普通君に声をかける。

 おおっと、隣のわん子ちゃん? 耳をぱたぱたさせながら俺のことを見てるのはなんでかな?

 入る順番は、さっきお袋が言ってくれたよねー。


「お兄ちゃぁん……」


「セーレちゃんもダメ。 というか、ニコも一緒に入るんだけど?」


「……」


 みんなが来てから、俺とのスキンシップ不足に見舞われている妹様。

 俺のセリフでニコの方を一瞥すると、セーレたんは俺の服の袖から手を離した。 ……おーいニコよ、俺が見たらなんで目を逸らす?

 両手でマイシスターのほっぺを包み込んでふにふにしてから、俺はイスから降りた。



「着替えとタオルは持ってきてますよー♪」


「ありがと。 そういえばリソ君は?」


 廊下に出てすぐに左が脱衣場だ。 既に開けてあるドアの方へ普通君を誘導するチャロちゃんに尋ねる。 


「はい、リソさまのお部屋で旦那さまと」


「あ、帰ってきてるんだ? ……だったら、パパも一緒に入ろうって言っておいて」


「ああ、それもそうですねー。 分かりました!」


 チャロちゃんは、キッチンで次の食事の準備をしているお袋とマールちゃんにその旨を伝えてから、まるで手を振っているかのように動くしっぽを引き連れて廊下を歩いていった。

 合宿中の風呂は特に混むからなぁ。 入る順番は、俺たち男連中が最初で次に幼女のみなさん、るー君と白銀さんと続いて、その間に食事を済ませたお袋やメイドちゃんズが最後だって言ってた。

 ここで、敢えてるー君を男連中から切り離したお袋の英断を、俺は高く評価したい。 ニコのヤツが本格的に目覚めたら困るからな……。

 親父は帰ってくるタイミング次第で順番は決まってないから、今日は飯の前に入ってもらうことにしよう。



 ――ということで。 今、俺の眼前には象の楽園が広がっている。

ちなみに、サバンナではない。


「うはーーっ! お風呂でかーーーい♪」


 全面石造りの風呂場に、浅いけど数人くらいは楽に半身浴が楽しめそうな黒曜石っぽい湯船。

 ニコの大きな声が石室に響き、早く飛び込みたいと急いで身体を洗っている。 飛び込むなよ?


「やーーっ! いやいやーーっ!!」


「コラ、暴れるなって! 泡が目に入るぞーっと」


 親父は髪用の石けんでアフロと化した弟くんを片手で木のイスに座らせ、危なっかしい手つきで泡の中にもう片手を突っ込んでいる。

 こうして見ると親父って、線は細いクセに筋肉の形がクッキリと浮かんでて、すんごいガタイしてるな……。 しかも身体中のあちこちには、ギザギザや直線といった様々な傷跡がうっすらと残っている。


 子象に赤ちゃん象、そしてマンモ……げふんげふん!

 前世であれば見たくもない――いや今もそうなんだけど、今の俺にとってはある種の安心感というか、一体感みたいなものをもたらしてくれる光景でもあった。 変な意味はないぞ?

 普段、俺は一人で風呂に入っている。 リソ君は基本的にお袋が一緒に入ってるし、親父と入る機会も滅多にないしな。

 となると。


 赤ん坊の頃に、お袋やメイドちゃんズに入れられてた時期を除くと、俺が一緒に入ることが多いのはセーレたんなわけで……。


 まあ最近は、セーレたんの誘惑も振り切って接点tを持たないようにしてるけどね。 「入ろ~♪」って言ってくれるのは兄として嬉しい限りだが、そろそろ乙女の恥じらいというものも持ってほしいわけですよ。

 ……考え方、古いかな?


「パパー、ちゃんと桶にお湯くんどかないとー」


「ん? あ……忘れてた!」


「はいはい、リソ君もおとなしくしようなー」


「んあ? ……あう゛ー」


 俺は湯船から風呂桶にお湯をくみながら、ニコから見えないように気をつけてリソ君の顔にスライムを貼りつけた。 こうすれば泡が目に入ることもないし、口周りに貼りついたスライムをぺろぺろし始めて静かになった。


「ぶはー、終わったー!」


「こら、ニコ待てーっ!」


「うわっ!?」


 背中に泡がいっぱい残ったまま、浴槽に足を乗せようとしていたニコの腕を掴んで引き止める。 マイブラザーにくっつけたスライムが、俺の手から納豆の糸のごとく伸びる伸びる。

 言っておくが、間違っても羽交い締めなんかしませんよ? ……当てるつもりはないのよ。

 俺は近くの風呂桶を掴んでニコにお湯をぶっかけてから浴槽に放り込むと、手早く自分の身体を洗い始めた。



 ――後の女の子達のことを考えて、お湯が冷める前にとっとと風呂から上がる。

 でも、るー君が入る前にもう一度水を入れて沸かさないとダメかもな……。

 親父はリソ君と手を繋いでダイニングへ入り、俺はリソ君の部屋に行って幼女達を呼んでくるように言われた。 マールちゃんは幼女達の着替えを取りに廊下に出て階段を急いで上がり、チャロちゃんは脱衣場に置いた俺達の服を回収しに行った。


「おーい、お風呂空いたぞー?」


『はあ~いっ』


 湯上がりの身体に廊下のひんやりとした空気を感じながら、俺はリソ君の部屋のドアをノックして開ける。 ……お返事したのはセーレたんだな。

 中を覗くと、幼女達がジュースを置いたテーブルを囲んで、何やらガールズトークっぽいことに興じていた。

 ガールとはちと言い難い女盛りのメイドさんとか、そもそも性別が違うだろという娘も混じっているが、そこは気にしても仕方ないだろう。

 きっと、気持ちは乙女なのだ。 ……なのか?


「ツェリさん、あとはお願いします」


「畏まりました。 やはり、女の子が集まると賑やかですね――息子とは大違いです」


「ははは、そうですよね――へ?」


 華やかながらもリラックスできる空気に、白銀さんの表情もわずかに緩む……って、ちょっと待て?


「む、ムスコ?」


「はい」


「子供、いるの?」


「はい。 今年大学院を卒業しまして、本邸の夫に付いて執事の見習いをしております」


「……」


「……」


 白銀さんの息子で、大学出……悪魔なスペックを誇る最強執事が思い浮かんだぞ。

 っていうかさ。 あなた、一体いくつなの?


「そ、そうですか……すごそうですね」


「まだまだです」


 俺に、それを尋ねる勇気はなかった。




 二階の自分の部屋で、俺はテーブルに向かって今日みんなが解いてくれたテキストを改めてチェック中。

 同じ部屋で寝ることになっているパジャマ姿のニコが、俺が紙の束を取り出したのを見て「うげっ」と声を出したが気にしない。


「これはぼくの仕事だよ」


「そ、そうなんだ……ふぅ」


 あからさまにほっとしている普通君に、思わず苦笑い。 歯磨きも終わってあとは寝るだけだし、さすがに今から補習とか言わないって。

 半日構ってあげられなかったニアちゃんを、テーブルの上でころころと転がす。 表面のマーブル模様が目まぐるしく変化して、まるできゃあきゃあと喜んでいるようにも見える。


「あれ? ジャスくん、なにそれー? すっごくキレー!」


 タマゴを見たニコがさっそくやってきて、ひょいと手を伸ばしてくる。


「こら、ウチの子に何を――うおあっ!?」

「ぎゃん!?」


 手を触れた瞬間、タマゴが白い閃光と共にバチッと大きな音が鳴り、ニコは手を弾かれたように後ろへ跳ね上げて尻餅をついた!


「だ、大丈夫かっ!?」


「うぐっ、いったあ~……」


 まるで感電したか熱いものでも触ったかのように、触れた手を振りながら顔をしかめる。

 その手を掴んで指先を確かめてみると……ほっ。 何事もないみたいだ。 赤くさえもなっていない。


「ビックリした……ニコ、大丈夫か?」


「う、うん。 ビリッときたよ……なに、それ」


「え、あー。 ま、魔導具みたいなもんだ。 俺とセーレちゃんの宝物なんだよ。

 危ないから気をつけろよ?」


「……うん、ごめん」


「気にすんな」


 宝物と聞いたせいか、普通君は思った以上に肩を落とした。 気安い行動で俺も一瞬ムッと来たが、単に興味を持っただけで別に悪気があったわけじゃないんだよな……。

 俺は座り込んだままのニコの肩を叩いて励ましながら、同時にテーブルの上で白一色になったニアちゃんをなだめるつもりで優しくなでる。

 すると、タマゴの光に再び緑色が混じり始め、次いで表面に濃淡のマーブル模様が浮かび始めた。 俺は機嫌を直した我が子を手のひらに乗せると、うつむくニコの前に差し出した。

 気づいた彼の身体がビクリと跳ねる。


「うわ……!」


「ほら、もう大丈夫だから。

 優しく……そうだな。 リリちゃんの頭でもなでるつもりで、いい子いい子~って感じでなでてみ?」


「う……うん」


 俺が実際にもう片手でなでると、タマゴの模様が俺の指に絡みつくように渦を巻く。 ……ほら。 ニアちゃんも、怖がらなくても大丈夫だからな?

 それを見て、ニコのわずかに怯えた表情がじょじょに和らいできた。


「ほれ」


 タマゴを乗せた手のひらを軽く上げてみせると、ニコは指を一本立てておもむろに近づけた。

 その指先のニオイでも嗅ぐかのように、ニアちゃんの表面の模様がすーっと寄っていく。

 ――そして、とうとう先端が触れた。


「うわ……わあっ!」


「ははっ、面白いだろ? 優しくなでてみ?」


 子犬が足元にまとわりつくみたいに、マーブル模様が触れた先端で渦を巻く。


「うんっ!」


 更に指を動かすと、「待ってー」と言わんばかりに模様が後を追う。

 指を四本に増やして腹全体でなでると、模様は球の表面を回転しながら広がってゆらゆらと波を描き始めた。 光の明滅が激しくなり、ニアちゃんも喜んでいるみたいだ。


「どうだ、可愛いだろ?」


「うん! なんか、すっごいカワイイ!」



 輝くような笑顔を取り戻したニコは、お風呂から上がった女の子達が遊びに来るまでずっとタマゴをなで続けていた。





 期待が外れた方はぜひ、おまけをご覧ください。w

 なお、途中で出てきましたアルファベットは誤字ではありません。

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