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そだ☆シス  作者: Mie
プロローグ
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1 我思う、故に我なし

挿絵(By みてみん)





 我が輩は赤ん坊である。


 生まれも育ちも二一世紀の日本の、ごくごくフツーの一般家庭。 自慢ではないが、ありふれたワーキングプアーである。 故に。

 俺の部屋がこんなに広いわけがない!

 当然メイドさんなんて雇う余裕なんぞある訳がないし、間違ってもお袋がコスプレイヤーだったなんてオチもない。

 ……本当にそうだったら憤死するぞ俺。

 つーか、俺のお袋は既にy―― 考えようとした瞬間に悪寒が走った! オカンだけに……スマン、忘れてくれ―― ○○歳の大台だ。

 たとえドモ○ルンリンクルを使っても、さすがに十代前半には見えんよ。



 ――それ以前に、この俺が赤ん坊とかあり得んだろう?



 確かに、俺は日本人であった。 そのハズだ。

 何故か詳細は薄ぼんやりとしか――名前すらマトモに思い出せない有様だが、確かに二〇年前後生きてきたらしい記憶があるのだ。

 ジジイが死、遺産は僕……うん、九九もちゃんと暗唱できるし、○ンダムの名ゼリフも覚えてる。

 う~ん、マ○ダム。

 ハタチそこらが知っているネタか? という気もするが、そこは気にするな! 頼むから。

 気にしたら負けでござる。


 とにかく、こんなアホな事を考えているゼロ歳児なんてあり得ない!

 我思う、故に我なし!! ……うむ、サッパリ意味が分からん。



 しかし、ふと気付いたと思ったら途端に、まるでシェイカーの中のカクテルみたく全身を締め付けられながら上下左右にかき回されて。 しかも身体中が痛くなるわ全く動けないわで、その上何も見えない聞こえない。

 そして、このまま何が何だか分からないまま殺されるんじゃないか、という恐怖の中で再び失神して……。

 で、また気が付いたら、どうやら無事だったようだから「あ、何だ、夢かー」と心の底からほっとして目を開けてみると。

 俺の目にぼんやり映ったのは「白い天井みたいな何か」。


 ……あのな? 実際にこんな状況になったら、咄嗟(とっさ)に例の名ゼリフなんて絶対出てこないぞ。 まともな声すら出ない。

 完全に思考がフリーズして、部屋の色と同じように頭の中が真っ白になってまたまた気が遠くなる――。

 そんな感じで、気が付いたり遠くなったりを何度も何度も繰り返して。

 ようやくちゃんと目覚めてきたかなー、なんて思えるような思考力も回復して、開けた目の焦点が合ってくると……そこに居たのは。



 メイドさん。



「――……――。 ……――――」


 しかも青くて透けるように輝く髪と、何かを逆再生したみたいな意味不明な謎言語、というトリプルコンボ。

 そしてその後も謎言語で話しかけられ、ぽかーんとしていた所にトドメを刺したのが、更なるメイドさん。

 なんと、本物の(・・・)『ネコミミ』付きである。

 彼女の髪の色もそれなりにインパクトはあったが、あまりに自然に見えて動くネコミミモードを前にしては、そんなものは億千万(イス○ンダル)の彼方に吹き飛んだ。


 更に、思わずほっぺたをつね……ろうとしたが、手には全く力が入らず。

 唯一それなりに動かせる目を駆使して視界の隅――つまり、自分の隣に見つけたのはよく眠っている赤ん坊だった。 たぶん、生まれてそんなに経ってない。

 なんとまあ、とっても可愛らしいじゃないですかー♪

 おててなんて、こんなに小っちゃくてぷにぷにで……って、ちょっと待て? その手を掴んでるもうひとつの手は何だ?


 ――その瞬間、俺の全身に電気が走った。


 え? ひょっとして? いや、そんなまさか! でも……。

 そんなあり得ない予感に逡巡(しゅんじゅん)を嫌になる程繰り返したが、徐々に感覚が戻りつつある五感から入る情報は変わらず、むしろリアリティを増すばかり。


 そろそろ観念せねばなるまい。



 これは『転生』なのだと。



 ネットで異世界召喚や転生モノの小説が今や世にどれだけ出ているか知らないが、まさか自分が体験する事になるとは……。

 そういや、作中の主人公達もそんな事言ってたな。 俗に言う「テンプレ」か。

 受け入れた途端に気持ちが軽くなるが、そうすると更なる疑問が湧いてくる。


 例えばこれもテンプレだが、自分の死んだ……? 時の記憶がないし、自称神様とかいう存在に会ってチート能力とかもらった記憶もない。

 バーチャルリアリティ(VR)なんて技術はまだなかったから、そっち系の可能性は薄いだろう。

 まあ、死んだ時の記憶なんていらんか。 すっごく痛いだろうし怖いだけじゃねぇか。

 残されただろう俺の家族は……転生だったら、もう戻れないだろうな。 戻れたとしても、俺はもう別人になっちゃったし。 ……ごめん。


 で、でも、神様には会いたかった! もちろん、美女or美少女or美幼女限定でなー♪

 ジジイとか、腕章つけたサラリーマンみたいなのはいらん。 オカマとかだったら殴り倒してやる! ……か、勝てるかな? そーゆーのに限って最強だったりするし。

 はぁ~。 そう言えばここって、どんな世界なんだろうな? どうせなら、魔法がある世界でチートな能力が自分にもあればいいんだが。 是非とも使えるようになりたいっ!

 おおっと、何だかおら、ワクワクしてきましたよー?


 ……それにしても、横にいる赤ん坊可愛らしいなぁ~♪

 ここにいるメイドさん? いや、メイド「ちゃん」かな。 この()らもよく見ると可愛いじゃん! さっすが異世界!


 なんかテンション上がってきたー!!



 そんな事を考えながら、俺の異世界ライフの幕は開けたのであった。





 お知らせがある時は、作者ページ(自己紹介)や活動報告に書いています。

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