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そだ☆シス  作者: Mie
まだ乳児編
18/744

15 空気嫁る人

挿絵(By みてみん)





 前回のあらすじ。

 ベイビー ミーツ ガール。

 以上。



「……エルネスタ! 何でアンタがここに……」


 本当なら、手を頭の所にやりたいところなんだろうが。

 俺を抱えている為、右腕を一瞬ビクッとさせただけで、深い溜息と共に頭をカクンと落とすだけに止めるアナさん。


「ふふーん♪ だって学校は秋休みだし、最近ずっとここに遊びに来れなかったんだもの。

 ……大丈夫よ、あの子はちゃんとお隣に預けてきてるから!」


 得意満面の笑みのピースサインで答える、エルネスタと呼ばれた女の子。

 恐らく……というか、間違いなくアナさんの娘さんだな。 雰囲気がよく似てるわ。

 その後ろで、後から追いついたマールちゃんがとても申し訳なさそうに深々とお袋に頭を下げている。



「そういう事じゃ! ……それもあるけど……はぁー。


 ――――誠に申し訳ございません、セフィア様。

 娘のご無礼、何卒お許しを……」


 お袋の方へ振り返ると、アナさんはお袋に向かって振り向き姿勢を整えると、その場で(ひざまず)いて謝罪した。

 場の空気が(にわか)に重くなる。


「ふふ……いえ、良いのですよエリアナ。 気にしないで。

 エルネちゃん。 来てくれるのは嬉しいけれど……。


 ――レディなんですから、もっとお淑やかにいらっしゃいね~」


 一見、いつも通りに微笑んでいるように見えるが、すーっと細めた目の奥に宿る光が違うお袋。

 真っ直ぐに背を伸ばして立っている姿とか……気品というか貫禄? みたいなプレッシャーを感じさせる。



「…………ぁ!

 も、申し訳ありませんでした! 気をつけます……」


 仁王立ちしていた足を閉じると、母親に倣うように跪こうとして―― 途中でミニスカートに気付いたのだろう―― 動きを止めると、深く頭を下げる事で謝罪する女の子。


「うふふふふ……♪ ええ、許します。

 ――さあ~、エルネちゃん。 そんな所にいないで、こちらへ入っていらっしゃ~い♪」


 いつものほわんとした笑顔を女の子とマールちゃんに向けた途端、重かった空気がふっと元に戻る。

 すると、彼女も子供らしい笑みを取り戻し、軽く会釈したメイドちゃんと共に部屋へ入ってきた。



 最後までぽかーんとした表情をしていたのは、幼い兄妹だけである。




 ……うわー。

 なんか、ここが日本じゃないんだって事、改めて思い直したわ。


 いつも親しげでアットホームな雰囲気を醸し出していた皆だが、それはあくまで『許されていた』からこそであり、本来であればもっと厳格な身分の差があるんだな。

 それに、いくら許しているとは言っても、メイドが呼び止めようとするのも聞かず、更にノックもしないで人の部屋を開けるというのは……子供であっても、無礼にも程があると。

 そこで、わざと身分差を強調して、母親(アナさん)は主人に謝罪して見せた訳だ。

 で、お袋もそれに応えた、と。

 子供の(しつけ)の為と思って。


 こういった部分って、俺も成長すれば必ず引っかかる……というか、元日本人だからこそ尚更注意すべきだと思う。

 直接言われたのはエルネちゃんだったけど、俺も大事な事を教わったわ。

 すぐ気付いたエルネちゃんも偉いけど……。



 お袋達(ふたりとも)、すげー。





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