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そだ☆シス  作者: Mie
プロローグ
1/744

0 天使達の微睡み

 開いていただき、ありがとうございます。

 書籍版は完全リメイク、こちらは連載当初のオリジナル版そのままです。

(書籍版・1巻の試し読みはこちら→ http://seiga.nicovideo.jp/book/series/171497?track=watch_page_341280_upper)

 作者の成長の跡がうかがえるかと……。(^_^;)


挿絵(By みてみん)





 ――春の暖かな日差しが降り注ぐ。


 静かな部屋の中に、赤ん坊の高く小さな笑い声が響いていた。



 長身の成人男性二人分はあるだろうか、高く白い天井には染みひとつなく。

 南の壁には大きな透明のガラス窓。 掃除は細かい所まで行き届いており、埃や指紋は一切見当たらない。


 内側に少しだけ開けられた窓から、暖かな微風(そよかぜ)が室内に吹き込むと、窓を覆う白いレースのカーテンがゆらゆらと揺れる。

 窓のすぐ外には、瑞々しい青葉を茂らせる木が一本。

 風が吹くたびに動く葉っぱやカーテンが、窓ガラスを通る午後の陽光を通したり、さえぎったり。

 すると、白い壁やベージュ色の毛深い絨毯(じゅうたん)の上に、複雑な陰影を描く。 それに赤ん坊の声が重なり、まるで光と影の妖精達が楽しげに歌い踊っているかのようだ。

 室内には本棚や大小様々なぬいぐるみ、ソファー等があるが、それでも全く窮屈さを感じない程に広い。


 そして部屋の中央には、通常の倍はあろうかという大きさの、特注ベビーベッド。


 柔らかく白いシーツの上には、その声の主である二人の赤ん坊が仲良く並んで寝かされていた。

 ほぼ同じ大きさの身体に、よく似た顔立ち。 浮かべる笑顔は無邪気で、とても可愛らしい。

 生まれてさほど日数は経っていない様子だが、それでも整った容貌(ようぼう)は将来の美しい成長を期待できるだろう。

 非常によく似た所の多い二人。 しかし、髪と瞳の色は対照的である。


 金髪に蒼い瞳と、銀髪に(みどり)の瞳。


 金髪の赤ん坊が銀髪の子の手を取って、きゃっきゃと笑っている。

 一方で、銀髪の子は大人しく手を取られたまま、静かに笑みを浮かべている。



 もしも、この姿を名のある画家が描いたならば、きっとこのようなタイトルを付けたことだろう。


 ――『天使達の微睡(まどろ)み』と。



「お坊ちゃま、お嬢様、失礼致します……あら」


 部屋のドアがほとんど音もなく開かれると、落ち着いた雰囲気の少女が顔を覗かせた。

 頭には白いホワイトブリム、そして身を包んでいるのは紺色と白のエプロンドレス。

 使用人服に身を包む少女は中に入ることなく脚を止め、その光景を見ると同時にふっと頬を緩ませた。


「ふふふっ。 お坊ちゃまたら、もう立派なお兄様になられて。

 お嬢様も、とても嬉しそうにされて。

 せっかくの兄妹水入らず、お起こししてはいけませんね……また後ほど伺いましょう」



 再び静かにドアを閉じる。

 かちゃりと完全に閉まるまで、赤ちゃんの笑い声が彼女の耳をくすぐっていた。




*********



 うっはーーーーーっ!?


 い、今のは誰だ……って、あ、アレ? 声が出ないぞー? なんでだ? なんで?

 つーか、身体も動かないって、どういうコト? ねぇ、ちょっと。 ねえ? 誰かー。


 何なんだよ、この状況ぉぉぉおおおーーーーっ!?

 

 ……いや、ね。 なんかもう、ワケ分かんねぇって! 何なのよ、もうっ!!

 笑うか? なあ、笑う? もうこれ、笑うしかないよな?

 うはははははははーーーーーっ♪ って。



 ワケ分かんねぇぇぇぇえええええーーーーーっ!!




*********



 ――銀髪の天使は、目を限界まで見開いて声なき(・・・)叫び声を上げた。





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