彼女の視察
◇
彼女の作ったカーテン、テーブルクロス、ランチョンマット・・・。
テーブルクロスとランチョンマット。
見覚えがありすぎる。
やっぱり、そうだったんだ。
こんな偶然、普通ありえる?
◇
あの日、一緒にお弁当を食べた日。
その日の夜のブログで、貫田さんのお弁当と全く同じ中身がアップされてた。
夕食の画像で使われているテーブルクロスもランチョンマットも、同じものがある。
やっぱり、思った通り。
貫田さんの彼女、由宇衣さん、なんだ。
やっばい、これやっばい。
そんな偶然あっていいの!?
むしろ幸運!奇跡!運命!
あああああどうしようどうしよう。
貫田さんの彼女の話聞く度にによによしそう!
「日辻さん?」
「え?」
何の話してたか全然聞いてなかった。
「これで良い?」
「あ、はい。ありがとうございます」
コンビニの袋からアルコールを取り出しているところだった。
ちょっと狭いけど炬燵に入り、乾杯する。
店にいるときよりも砕けた感じで色々話して盛り上がる。
あーゆりなちゃんかわいい。マジ天使。
そして何故かあたしの元彼の話に。
なんでだ。
「あたしの部屋、壁一面漫画なんですよ。あたしのじゃなくて、親のなんですけど」
親の部屋も壁一面漫画。
そこで入りきらなかった分が、あたしの部屋に押し込められている。
兄姉の部屋もほぼ同じような状態だ。
「本当に床から天井まで一面びっしりで、彼氏が来た時にドン引き」
あたしがあまりにも漫画というイメージがなく、そのギャップに悪い意味でやられたんだろう。
「オタクだったんだ、って言われて、おしまい」
漫画くらいで(まぁ量はすごいが)オタクになるのかは疑問だったが、ぶち切れた。
口には出さないが、本当はこのあと手が出てしまい、振られたのである。
「大学時代は、とりあえず部屋にはいれない、自分のイメージを崩しそうな面は見せないってやってたら、自由すぎてついていけない、って」
極端なんだろうな、あたし。
「その2人だけなんですよね」
「意外ー!振られるより振るタイプだと思ってたわ」
「山下さんは?」
「私は普通よー振ったり振られたりだけど、前カレは浮気されて別れたのよね」
「貫田さんは、今の彼女とどれくらいー?」
「えーと・・・4年、かな?」
4年。長いなー。
あたしは2人とも半年くらいなので短いのだ。
「すごいですね、結婚しないんですか?」
「うーん、どうかな。今のところ考えてないけど」
「でも半同棲中なんでしょぉ?」
「結婚ってキッカケがないと難しいんだよね」
そういうものかな。
あたしにはわからないなー。
結婚考える年齢で付き合ったことないし。
「刑部は?」
「俺今は彼女要らないんで」
「えー?出来ないの間違いじゃなくてぇ?」
ゆりなちゃん・・・それは思っても言ってはいけないことだと思うんだ。
特に親しくない相手には冗談にならないっていうか。
「ゆ、ゆりな!これ美味しいわよ。はい、あーん!」
ごまかし方が強引だな、山下さん。
いつもならゆりなちゃんいるだけで眼福至福なんだけど、今はちょっと困る。
あたしは貫田さんと大事な話があるんだよね。
しょうがない・・・2人を潰そう。