彼女の昼食
◇
しっかし意外だな、貫田さん。
恋敵だけどちょっと好感度あがったかも。
ジムを休んでご飯に行ったから、結果的にはいつもより早い。
お風呂入ってからネットしよう。
つい読み耽ってしまうから基本的に平日は読まないんだけど、まぁたまにはね。
いつものブログを開く。
あ、更新されたばっかり!
今日はお弁当の画像だけ。
鶏の唐揚とエビチリがものすごく美味しそう。
旦那さんのお弁当なのか、いつもボリュームがあるお弁当だ。
食べたばっかなのにお腹減るなぁ。
一番乗りでコメントを書く。
それだけでちょっとテンション上がる。
サイトを開き、お気に入りユーザから由宇衣さんを選んで、クリック。
小説は更新されてないけど、コメントに返信がある。
それをまた返信して、自分のユーザページに戻る。
後はお気に入り小説の新着を順番に読んでいく。
「いいなぁ・・・」
ファンタジーな話を考える(妄想?)するのは好きだ。
だけど文才はない。
誰かあたしが考えた(妄想)した話を文章してくれないかな。
まぁそんなこと頼める人なんていないんだけど。
「あたしも獣拾いたい・・・」
時間はまだあるし、少しだけランキングみようかな。
未読を順に読んでいき、面白いと思ったものをお気に入りに追加という作業を繰り返す。
◇
「あ~・・・読み過ぎた~・・・」
失敗したなー、結局3時過ぎまで起きてたし。
ジムの日なのに最悪だ。
睡眠不足だと仕事をミスりやすい。
気合いれていこう。
あたしの仕事は営業事務だ。
営業の補佐のような役割。
電話の受付や営業が使う書類を用意したり、伝票を起こしたり、領収書や経費などの書類を纏めたり。
基本的に女ばかりの職場で、ごく稀に営業に移動する人もいる。
うちの会社の営業事務は、営業に馬鹿にされやすい。
残業も少なくて営業より大変な仕事では確かに、ない。
だけどあたしたちがいなければ困るのは自分たちなのに。
それなら好かれていた方が仕事がしやすい。
何でそれがわからないのかな。
「ふ、あぁ」
欠伸出た。
今日は珍しく弁当持参なので、自分の机で食べている。
共同のポットがあるので、お茶と味噌汁が用意出来るのだ。
「珍しいね、弁当?」
見上げると、貫田さんがいた。
営業の人はあまり昼食に戻って来ない。
外で食べた方が効率が良いからだ。
「はい。母親の気紛れで」
「あ、お湯沸かしたの?俺も此処で食べて良い?」
「はぁ、どうぞ」
あたしの隣の席は若の机なので、勝手に使っても良いだろう。
貫田さんは促されるままに若の席に座り、弁当を広げた。
うわー、美味しそう!
アサリご飯にしめじのおかか和え、ブロッコリーの胡麻和えに出汁巻き卵、2色パプリカのマリネ。
茶、赤、黄、緑と色合いも綺麗。
「彼女さんの手作りですか?」
「うん」
「すごいですね、美味しそう!いいなぁ、料理上手の彼女・・・」
うっとりと呟く。
だって出汁巻き凄い綺麗に巻いてる!
「食べる?」
冗談かもしれないけど、出汁巻き卵を差し出して来たのでそのままぱくり。
うっま!
「マジウマイ!ありがとうございます」
食い意地張ってるから、冗談でもそんなこと言われると食べますよ。
「食べるの好きだね」
「好きですよ」
しかし、このお弁当箱どこかで見たことあるような気がする。
誰かと一緒だっけ?殿?
「そういえば、月末新年会だよね。出席?」
「出席しますよ。新年会欠席するほど協調性なくないです」
歓送迎会・忘年会・新年会は暗黙の了解で全員参加だ。
営業の関係で上旬は日付が合わず、最終金曜日に新年会があるのだ。
正直かったるい。
やたらと酒すすめて来る上司に、セクハラする上司。
ケンカ売って来る先輩に、2次会に連行しようとする後輩。
毎回お店も微妙なチョイスだし。
「今回魚柾らしいよ?」
「はぁ?」
魚柾とは。
あたし的に値段も料理も酒も一級品、の料亭風の高級居酒屋である。
間違っても新年会でいくようなところではない。
「今年移動して来た営業の実家なんだって。安くしてくれるらしいよ」
「うわぁ!マジ神!」
これはアガる。
魚柾のコースだなんて、滅多に食べられない。
「楽しみだね」
「はい!」
もうサブタイトル無理です・・・