彼女の交流
◇
奢りでごはんとは何て良い響き。
しかもゆりなちゃんも一緒!
大好きだけど仲が良いわけじゃないから、初めて一緒にごはんである。
軽く死ねる!
会社から歩いて10分、駅まで5分の位置に來海がある。
美味しいから良く来るお店の一つだ。
だけど正直、気心しれてない人と来るのって苦痛。
食べにくいんだよね、量が。
はっぱより肉が食いたいのに、女子ってサラダ絶対頼むよね。
アレが嫌。
頼むのは良いんだけどさ、嫌いじゃないけどさ、あたしに押しつけないで欲しいのだ。
明日も仕事だし、皆アルコールなし。
あ、ゆりなちゃん残念そう。まだ勧めてるし。
貫田さん酔わせて持って帰りたかったのかな。お父さんは許しませんよ!
っていうかしょうがないよね、貫田さんは車通勤である。
メンバーは結局、あたしと若、ゆりなちゃんと山下さん、それから貫田さんと異色の組み合わせ。
課は一緒だけどそこそこ人数いるし、交流がないのだ。
特に貫田さんは営業で、あたしの担当区域ではないから。
若は隅っこ座り、あたしを隣に座らせた。
向いには貫田さんで、さりげなく周り固めたな。
貫田さんの隣はもちろんゆりなちゃん、その隣に山下さん。
向いにゆりなちゃんっていいな。目が癒される。
店員さんに山下さんが注文する。
サラダに刺身に揚げ物に。
え?最初から?って言われたけどタコライスごり押し。
あたしは主食が先だ。
だってサラダとか刺身ばっかだとお腹膨れない。
皆の分なくなるよ?
「かんぱーい!」
ノンアルコールで乾杯して、ゆりなちゃんがサラダをとりわけてくれる。
女らしさアピールですね、わかります。
あたしんちで存分に発揮してくれないかな、それ。
あたしはタコライスを1人で完食。
一応皆にいる?って聞いたんだよ。
たぶん遠慮されただけなんだけどね!
お魚いっぱいのサラダも、レバーの刺身も、ポテトフライも、砂肝の唐揚げも、皆美味しい。
んー、肉も食べたい。
向いではゆりなちゃんの猛烈アタック(古)開催中。
彼女のことを根掘り葉掘り。
ある意味あたしも興味があるから、耳ダンボ。
料理上手で、綺麗好き、優しくて、美人。
まぁ貫田さんもイイ男だもんね、そりゃあ美女が集まるか。
う、うらやましくなんてないんだからね!
「どこで知り合ったんですか?」
「大学の同級生なんだ」
「へぇ~・・・写真みたーい!プリとか写メとか、持ってないんですかぁ?」
「彼女、写真嫌いだから」
「え~、残念!」
あたしも残念だ。
美人なら写真見たかった。
貫田さん苦笑い。
敢えて空気読まないゆりなちゃん。
かわいい。
巻き込まれては堪らないと、あたしと若はもくもくと食べ続ける。
どんどんなくなっていく料理を見て、山下さんがメニューを渡してくれた。
「何にする?」
「いつものー」
「・・・・・ねぇ、2人って付き合ってるの?」
ゆりなちゃんからどうやって逃げられたんだろ、質問は貫田さんから。
「いや付き合ってませんって。さっきも言いましたよ」
貫田さんは一応先輩なので敬語。
「でも仲良いよね、さっき名前で呼んでたし」
何コイツ。
世の中の女皆俺に気がある、とでも思ってんのか?
「同期ですし、入社前からの友人ですから」
仲良くなったのは入社してからだけど、元々知り合いではあった。
「もしかして、志村さんも?」
「ん、まぁ」
山下さん、殿に興味あんのかな。
「それでかぁ。不思議だったのよね、志村さんって軽いけど、社内の女の子とプライベートでは会わないみたいじゃない?それなのに日辻さんとは会ってるみたいだったから」
「なるほど。あ、言っておくけど、付き合ってないよ。誤解しないでね」
殿はご近所さんなのだ。
所謂幼馴染ってやつ。
「わかったわ。彼氏いないの?」
「いない。興味ない」
「あ、それっぽい」
失礼な。どういう意味だ。
「今まで1人も?」
「いやそんなことはないけど・・・」
「どんな人がタイプなの?」
「えー・・・タイプって言われてもピンと来ないっていうか・・・」
「コイツ、まぁいっか、で付き合うタイプだから。そんで自由すぎて振られる」
「うるせぇよ」
若の裏切りものめ。
「刑部君は?」
「今彼女いないんで」
「見た目に反して意外と遊んでるよ」
「余計なこというな」
若は前髪が長くて眼鏡で、猫背。
暗い雰囲気で絶対彼女いないだろ、っていうか彼女いない歴=年齢だろ、って感じなのだ。
が、意外や意外。
学生時代はチャラかった。
今写真見るとネタでしかない。
「そうなんだ・・・意外だわ」
山下さんが吃驚してる。
いい気味だ。
「しかもメンクイ」
「つぅばぁきぃ~・・・」
あ、やばい。
そろそろやめておこう。
「ごめんって。もう言わないし」
「次言ったらガチでキレる」
あぶないあぶない。
若がキレるとあたしのパソコンが死ぬ!