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彼の憂鬱、初めての・・・



「彼女さんと同棲はしてないんですよね?事前に断っておいて、ごはん、行きましょうよ」


にっこりと笑う江藤さんの爪は長い。

料理出来なさそう(偏見です)。


「機会があったらね」


ここまで断られたら、普通諦めないかな。

よっぽど自信があんのかな。


「同僚とのコミュニケーション、大事ですよぅ」


確かにね。

下心のない同僚なら、大事だと思うよ。

メンドクセェ。



正直に言おう。

俺はもてる。

自慢でも過信でも何でもない。

確固たる事実だ。

とりあえず、女受けする顔と性格らしいのだ。ただそれだけ。

もてて嬉しくないわけでもないが、しつこくされるとなると話は別。

ウザイ。もうそれしか言えない。

過去ストーカー紛いが何件か発生してから、予防線を張るようになった。

それが半同棲の彼女の存在。

まぁこれにはほかの事情もあるのだが、そこは割愛。


大抵の女はここで引くんだけど、この女は・・・。


「ごめんね、彼女がヤキモチやくから」


「えぇ~!そんなことでぇ?私なら絶対そんなウザイこといわなぁい!」


いや今のお前こそウゼェよ。


「そうなんだ?俺は彼女に妬いてもらえるの嬉しいから良いんだ」


にっこり。

ふん、寛容な女アピールとかいらねえよ。

俺は日辻さんに「別に行っても良いけど・・・浮気、しないでね・・・ううん、何でもない!」とか言われたいんだよ!(*言うわけがない)


「複数なら良いでしょ?付き合い悪いわよ、たまには良いじゃない」


げ。


「あ、山ちゃん!」


何そのわざとらしい台詞!協力要請しやがったな!


江藤さんと仲の良い、山下さん。

同期らしくて、お昼とかいつも一緒。

何で女って徒党組むんだろう。


「他の人も誘ってみて、たまにはご飯でも行こうよ」


俺がたまにメシ食うのも飲みに行くのも、同じ営業の人間ばっかりだ。

内勤と一緒にってあんまりない。

他のヤツらは結構行ってるみたいだけど。


「内勤って刑部君だけ男じゃない?居心地悪そうだしさ」


それを言われるとちょっと困る。

俺の目から見ても事実だからだ。


「え?!」


いきなり名前を出されたことで、刑部が驚いて声を上げた。

江藤さんの目が断るなよお前、口実なんだよっていう目で睨んでる。


「あ~・・・」


刑部は内向的で、人見知りだ。

行きたくない、関わりたくないって顔に書いてある。


「いいでしょ、刑部君。他に残ってるひとも誘ってさ。あ、日辻さんもどう?」


「あ、すみません、あたし今日ジムの日なんで」


ちっ。

日辻さんが来るなら喜んで参加したのに。

日辻さんは平日すべてジムとサークルに行っているらしく、小規模の集まりに参加することはない。

流石に忘年会には来てたけど。


「ちょ、椿!今日はジム休んで!!」


は?


「イヤだよ。何でだよ」


「俺を見捨てる気!?」


「骨は拾ってやる」


「~~~~ッ!!」


ちょっと待て。

今、”椿”って呼ばなかったか?

いつもは”日辻さん”って呼んでんだろーが、どういうことだ。


「何?日辻さんと刑部君って付き合ってるの?」


「「まさか!!」」


それにしては気が合うようで。

ムカツク。

刑部は今この瞬間俺の敵になったな。


「奢るから!」


「しょうがないなぁ」


しかし今この瞬間だけ味方ヒーローだ。

グッジョブ。


「あああ破産する」


「そこまで食わんわ」


「嘘つけ、大食いが」


そう、日辻さんが男並みによく食べる。

俺社食で大盛定食食う女子、初めて見たし。

勢い良くがつがつ食うけど、綺麗に食うし、美味しそうに食うから俺的には好感度大。

男の前でだけ小食ぶったり食後の煙草とかも嫌いだ。

その点日辻さんは煙草吸わないし。

理由が”味覚が狂う”っていうのがおかしい気もするけど。


「山下さん、美味しいお店にしてね」


日辻さんがにこっと笑った。

珍しい、レアだ。



「そうね、じゃあ來海でどう?」


アルコールを飲まなければ割と安価な、薄暗くて雰囲気の良い、女受けしそうな感じの店だ。


「良いね。砂肝の唐揚げとタコライスが食べたいな」


「おま、この前もそれ食ったろ」


「もう2週間前だって」


何、2週間前に日辻さんと刑部、メシ食いに行ったってことか?

・・・やっぱ刑部敵認定。








何はともあれ、日辻さんとメシである。

・・・俺、明日死んでるかも。








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