彼女の休日
◇
今日は金曜日!
仕事をさくっと終えて、サークル行って、汗を流したら皆でごはん食べて。
それが終わると待ちに待った休日前!!
あたしはいそいそとパソコンの前に座り、サイトを開いて、ログイン。
「ふ、ふふふふ・・・」
先週の日曜振り、更新されている小説がいっぱい!
あたしが好きなのは専らファンタジーと戦記。
今特にはまっているのはゲームの中に迷い込み的なもの。
特にロ○○○○○○○とリ○○○○○○○○○!!
あー、あたしも迷い込みしたい。
いくら夜更かししても平気な金曜日は、ほぼ毎週、こうやって過ごす。
両親も似たようなもんだから文句も言われないし。
「さーてーと、」
お気に入りユーザの由宇衣と記されたところを、クリック。
月曜からの活動報告に目を通し、コメントが付けられそうなところにはコメントを入力していく。
由宇衣さんというのは、恋愛小説専門の人。
短編が一つ、完結済が一つ、連載中が一つ。
普段恋愛小説は読まないんだけど、この人だけは別。
大抵ヒロインが好きになれない。
漫画とか読んでも、基本的にヒロイン嫌い。脇役を好きになるタイプなのだ。
由宇衣さんの小説は、何というか・・・ヒロインが脇役っぽいというか、女らしくないとでもいうのだろうか。
「良いなぁ・・・」
彼女は私の、理想の女性だ。
自己紹介のところに、ブログがリンクされている。
そこをクリックすると、すごーくかわいらしいページが。
デザインはスイーツ系。
内容は夕食だったり、お弁当の中身だったり、編んだものだったり。
どれも上手だし、美味しそう。
あぁ、お弁当作って貰いたい。
会社から帰ったら「お帰りなさい。ご飯出来てるよ」とか言われたい。嫁に来てほしい。
顔は勿論晒されていないけど、きっとかわいいに違いない。
なんて、夢見るお年頃、25歳。
「ん?」
スカイプでコンタクトが入る。
若だ。
【これおもしろいhttp://~・・・】
若は同じ会社で働いてる友達の一人。
数少ないオタク仲間である。
面白いネット小説を見つけてはURLを送りつけてくる。
「お、良いねぇ」
動物の出るファンタジーも好きである。
【さんきゅ。あ、今日サークル来なかったね】
【残業だった】
【何で?あとちょっとって言ってなかった?】
同じ課の内勤同士、帰りはほとんど一緒だ。
あたしが帰るとき、若はコレ提出したら終了、と言っていた筈。
【お前のマドンナに手伝わされた】
「はぁ!?」
【どういうこと?】
高速でキーボードを叩く。
【仕事残ってたみたいでさぁ。他の内勤、俺しか残ってなかったのよ】
「あー!あたしが残っておけば良かった・・・!」
そうしたら2人でラブラブ残業タイムだ。
帰りにちょっとごはんでも食べに行ったりしてさぁ!
【炎上しろ!】
【なんでだ!不可抗力!】
「くっそ!」
【今度何か奢れ】
【嫌だよ。そもそも江藤、性格悪いから嫌いなんだよ】
【そこが良いんだろ、かわいいから許される】
【俺の好みじゃねぇよ。このMが!】
【Mじゃないっつの。猫かぶりサイコウ】
【ド変態が】
余計なお世話だ。
というか。
【若にだけは言われたくない】
あたしの知る限り一番の変態はお前なんだよ!
◇
こうしてあたしの金曜日の夜は更ける。
恋愛とは無縁だけど、大満足。
基本的にあたし、インドアだし。1人好きだし。
とはいえ、友達はいる。
日曜は学生時代の友達と買い物に行く予定だし。
社内には男しかいない友達も、学生時代やサークル仲間までいくと女友達もいる。
あたしに恋愛は必要ない。
だって、面倒臭い。
あたしだって一応女だし、服とかアクセとか、メイクしたりとか、それは普通のことだけど。
一部の女子みたいにそれで男をつる、というのはナイ。
合コンに行ったこともなければ、紹介とかもない。
今までの彼氏は告られて、まぁ良いかなと思って付き合った2人のみ。
それも割とすぐ振られたけど。
思ったのと違う、だって失礼な。
勝手にイメージ押し付けなっつーの。
孫は兄貴に任せて、あたしは一人で自由に生きる。
老後は年金でネット生活するんだから。
なろうの他の方の作品タイトルって、出しても良いのだろうか。
一応伏せてみたが。