彼女の休日3
◇
「由宇衣って貫田さんのことですよね?」
若が言った言葉に貫田さんがどう反応するかを窺う。
ロボットのような動きであたしに視線を寄越す。
その行動で半信半疑だったあたしも、それが真実だということを確信する。
しらばっくれればよかったのに、意外と貫田さんって馬鹿だなぁ。
「歯ブラシ2本あるのは良いけど、1本が使われた形跡なさすぎるしー」
「基礎化粧品とかメイク落としとか綿棒とかがないですよね」
「トイレにごみ箱ないしー」
「ブログの料理の量が毎日男性用ですよね」
「状況証拠しかなかったけど、貫田クンの反応でバレバレだしー」
「貫田さん・・・HNの由来、”ぬきだ”だから”ゆうい”なんですか?」
「すいませんでしたあああああああ!!」
って土下座!
「ごめん、料理とか裁縫の趣味を隠すために彼女の趣味ってことでごまかしてました!俺に実在の彼女はいません!!」
「あは、認めたー。まぁそうだろうとは思ってたけどー」
最初に気付いたのは殿だ。
まず敵を知ろうと言った殿は、まずブログを読み始めた。
毎日あげられる料理の量が多いのは、貫田さん用なら普通だ。
だけど半同棲だという割には1人分しか載せないし、料理の量が多すぎないか、と。
その全部の量が一定。
貫田さんの話で会ってない筈の日もあるので、おかしい、と。
あたしにはわからなかったけど、ブログの内容も違和感を感じるところがあったみたいだ。
若も貫田さんだと思って読むとしっくりくる記述が多かったという。
あたしも普段から貫田さんの日誌とか読んでればわかったのかな。
それでもしらを切り通せばそれまでだったんだけど。
「由宇衣さんは、いない?というか、貫田さんが由宇衣さん・・・?」
殿と若に言われて半信半疑だった。
「はい・・・」
ぎゅっと目を瞑り項垂れている。
正直複雑な気分だ。
騙されていたといえば騙されていたんだけど、悪意がないことはわかっている。
誰だって自分の趣味で知られたくないものは隠す。
あたしだってネットの話とか漫画の量とか公言しないし。
それと同じといえば同じだ。
それよりも重要なのは・・・あたし本人にファンとか嫁とか言いまくってることだよ!!
うわああああああ恥ずかしいいいいいだけど嫁にほしいのは事実だ嫁に来ry
それに彼女が実在しないなら、アレは浮気でも何でもないってことだ。
それはすごく助かる。良かった、安心した。
略奪愛でも何でもない。障害なんて何もないじゃないか。
大好きな由宇衣さんを傷つける結果にならなくて本当に良かった!
そこではっと気付く。
「え!?ってことは何で!ゆりなちゃんに靡かないなんておかしいし!!」
「え、そこに戻っちゃうんだ!?」
「そりゃそうでしょ!ゆりなちゃんですよ!?」
「意味わかんないし!」
「椿、俺も江藤さんは嫌だけど。絶対靡かない自信がある」
「くっ!2人ともさてはイ○ポだな!!」
「「ちがう!」」
「まぁとにかくー」
のんびりと殿が流れを止める。
「貫田クンのHNの付け方が馬鹿っぽいことはわかったー」
抜き”だ”、ゆう”だ”いね。