彼のピンチ
◇
志村さんの提案で飲み直しIN俺の家が決定。
スーパーに寄ってアルコールとメシの材料を買出し。
カラオケでは飲むことと歌うことに夢中で、メシを食ってないのだ。
簡単に焼きそばの材料を買う。あんまり凝ったものは面倒だし、何よりバレそうで怖い。
家に玉葱と人参はあるので、豚肉と麺、もやしとピーマンを籠にいれた。
つまみに乾きものも適当に選ぶ。
焼きそばなんて簡単だし、すぐに出来るので3人には飲んでてもらい、調理に取り掛かる。
4人分、6玉の麺で焼きそばを作り、隣のコンロで目玉焼きを4つ。
足りなければ冷凍のごはんを解凍すれば良い。
仕上げにかつおぶしをかけてテーブルに運ぶ。
「出来ましたよ」
「ありがとうございます」
「いただきまーす」
「いただきます」
焼きそばにはビールだろってことで、ビールだ。
「ピーマン・・・」
刑部が日辻さんの皿にピーマンを入れる。
刑部意外と嫌いなもの多いなぁ。
「おいしー!貫田クン料理上手だねー!」
「まぁ焼きそばくらい」
「一人暮らしだもんねー。他には何作るの?」
「簡単なものしか作りませんよ。野菜炒めとか生姜焼とか」
「それでも十分だよー。あ、でも彼女が作ってくれるんだっけー」
この手の話題はヒヤヒヤする。
それに今は日辻さんの前で彼女に関する話は出したくない。
「彼女の家って近いの?」
「はぁ、まぁ・・・」
「なんで同棲しないの?結婚はともかくさー」
「自分の時間も欲しいかなぁと」
「なるほど、たしかにねー」
腕を組み、うんうんと頷く。
相変わらずアクションが大きいなぁ。
「でも毎日お弁当とか夕飯とか作りに来てるんでしょ?すでに自分の時間なさそー」
「あーそうでもないですよ。弁当とかは作ったものを朝渡されることもあるし・・・そんなに会ってないですよ」
「そーなの?週に何回くらい会ってんの?」
「えーっと・・・朝を外せばまぁ、3,4回ってとこですかね」
いや3,4回って結構会ってるよなぁ。
実際会ってるわけじゃないけど。
半同棲設定だしな。
「へー!っていうかシャメみたい!」
「写真嫌いで、撮ってないんですよ」
「残念ー!せくしぃなの?きゅーとなの?」
「えー・・・どっちですかねぇ」
正直そこまでの設定は考えてない!
どう考えても探られてないかコレ。
ヤバい。
頼みの綱の刑部は日辻さんと地味に飲んでる。
2人とも我関せず状態だ。
「どんなコ?椿チャンみたいによく食べるー?w」
「えー・・・普通、ですかねぇ?」
正直日辻さん並に食べる女子は中々いないと思う。
「それもそーだよねー!椿チャンは食べ過ぎだよ」
「スポーツしてるから仕方ないんですー」
「それにしても男並みだもん。あ、彼女はどれくらい食べる?」
「いや、普通の女子と同じくらいですよ」
山下さんや江藤さんが食べる量が一般的だろう。
社食でいうと普通の定食を少し残すくらいか?
「やっぱりー?ほらー椿チャン」
「・・・・・・あたしはいいの」
不貞腐れる日辻さんを志村さんが弄る。
「あ!週3,4ってやっぱ泊まってくの?」
「はぁ、まぁ・・・」
日辻さんの前でこの話は本気でやめてほしい。
だけど止められないorz
「へー!その割にはこの部屋女の気配ないよねー!」
「え?」
能天気な志村さんの一言に、俺は凍りついた。
「実はとっくに振られてて、でもカッコワルイから隠してるとか?」
志村さんはどういうつもりだろう。
っていうかどこまでわかってて言ってんだ!?
女の気配って何?!
つい志村さんを凝視してしまう。
「本当は彼女いないんでしょー?」
面白がっているのがわかる。
ヤバイヤバイヤバイ。
冗談なのか、本気なのか、まったくわからない。
「何で隠すのー?本当のこと言っちゃいなよー」
やっべぇ!
何言えばいいのかわからん!!
「殿、いじめすぎ」
もくもくと飲んでいた刑部、ここにきてようやく助けてくれる気になったのか・・・。
「貫田さん、もうわかってるんで嘘はつかなくていいですよ」
と思ったら追撃か!!
「由宇衣って貫田さんのことですよね?」